2度目の緊急事態宣言 生活が苦しくなったら公的支援や窓口の活用を!
大西連
1月7日、菅総理が「緊急事態宣言」を発出しました。
「緊急事態宣言」は昨年4月以来ですが、今回は、飲食店等の20時以降の営業自粛の要請などが中心です。小中高校等の一斉休校や、劇場や映画館、はたまたインターネットカフェなどの営業自粛要請もおこなわれた前回と比べると、人々の行動への制限については、そこまで強いものではないように思います。
しかし、「緊急事態宣言」が長引けば長引くほど、経済への影響は甚大でしょう。感染拡大の抑制は至上命題と言えますが、景気の悪化により、失業したり、収入が減少してしまう人は今後さらに多くなる恐れがあります。
■「緊急事態宣言」で何が起こるのか
実際に、「緊急事態宣言」が出されていた昨年4月には、全国で生活保護の新規申請件数が前年同月と比較して1.24倍、東京23区では約1.4倍と増加しました。(厚労省「被保護者調査」)
生活困窮者への支援現場でも、派遣、契約、パート、アルバイトなどの非正規で働いている人や、日雇い労働者や「ネットカフェ難民」と呼ばれるような不安定な働き方をしている人からの相談が多く寄せられました。
私の所属する〈もやい〉でも、2019年と比べて相談件数が1.5倍~2倍ほどに急増しています。
相談に訪れる方の業種も営業自粛要請を受ける飲食業だけではなく、販売業、宿泊業などのサービス産業や、建築業や製造業など、多岐にわたっています。
あらゆる産業、業種に、不況の波が広く押し寄せていること、そして、非正規などの不安定な働き方をしている人、脆弱な生活基盤しか持ちえなかった方により大きなダメージを与えていることが見えてきています。
今回の「緊急事態宣言」による影響は、正直、測りかねません。それこそ、この1年ほど所得が低い状況でもなんとか貯金を崩して耐えてきた、というような人に、さらなる追い打ちをかけるような事態になる可能性もあります。
■「緊急事態宣言」に対応した「補償」は?
昨年、4月に出された「緊急事態宣言」の際には、例えば、1人につき10万円の「定額給付金」の支給や、現在も継続しておこなわれている雇用調整助成金の拡大や持続化給付金、個人向けだと生活福祉資金(緊急小口資金等)の特例貸付など、経済への負の影響を鑑みて必ずしも十分とはいえないものの、補償としての支援を拡充していました。
しかし、今回は、あらたに整備される支援施策は特に現時点で発表されておらず、「コロナ特例」として継続されている各支援施策の利用を促すのみとなっているのが現状でしょう。(自粛要請に応じた飲食店への補償金は用意されていますが……)
すでにこういった支援を利用して何とかやりくりしてきた、という方もいます。また、昨年よりの厳しい情勢のなかで、貯金などの備えが失われてしまっている状況の方もいることでしょう。
今回の「緊急事態宣言」は、感染の抑制にとって必要なものであることは間違いがないですが、一方で、きちんと支援を整えていかないと、多くの方の生活を破壊する可能性があるものでもあるのです。
■生活が苦しくなった時にどうしたらいいか
コロナ禍は前代未聞の事態です。多くの方が働き方、生活様式等を変えざるを得ない状況に追い込まれています。
経済活動は停滞し、失業する方、収入が減少してしまった方はリーマンショック時と比較にならないほど多くうまれているともいわれています。
すでに、「自助努力」の範疇をこえた社会的な危機である、ということを大前提に考えることはとても重要なことだと思います。
そのうえで、利用できる公的な支援を適切に活用していくこと、それが何よりも生活防衛のための近道になると考えます。
以下に、公的支援の各制度について紹介しますが、その利用を決して、ためらわないでほしいと思います。困ったときのために「公助」があり、セーフティネットがあります。そのことを忘れないでください。
■1か月分の生活費が足りない…遠慮なく生活保護を申請しましょう
生活保護制度は、働いている人でも健康な人でも、収入と資産が生活保護基準を下回れば利用できる制度です。
生活保護基準は年齢や世帯人数、住んでいる地域などによっても異なりますが、生活費分と住宅費分を合わせて、都内だと単身で約12万円強の金額になります。
収入と資産が、この基準額に満たない場合に、足りない分の支給を受けることができる制度です。
生活保護制度の詳細についてはこちらをご参照ください。
上記、厚労省HPを見ていただければわかりますが、厚労省も「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにでもあるものですので、ためらわずにご相談ください」と呼びかけています。
それこそ、今月中に生活が立ちゆかなくなる、などの状況でしたら、生活保護制度の申請をご検討ください。
申請はお近くの自治体の窓口(福祉事務所)でおこなうことができます。
また、収入減などで一時的に生活保護を利用し、その後、収入が増加し生活保護基準を超えて支援を必要としなくなったら利用をやめる、などのこともできます。失業した方などの場合は、生活保護を利用しながら再就職へのサポートを受けることも可能です。
遠慮せずに、まず一度、公的機関へのご相談、そして申請を検討してください。
■今月は何とかなりそうだけど貯えが少なく不安だ、一時的な生活資金がほしい…生活福祉資金貸付(緊急小口資金等の特例貸付)もあります
実は、この生活福祉資金の特例貸付は、4月以降、非常に利用されている制度です。生活福祉資金の特例貸付には「緊急小口資金」と「総合支援資金貸付」とがあります。
緊急小口資金貸付は、「緊急かつ一時的な生計の維持」のための20万円を上限とした無利子・無担保の貸付制度。
もう一つの総合支援資金貸付は「生活再建までの間に必要な生活費用」のための月額15~20万円を上限とする原則3ヶ月(状況により3か月の延長あり)の無利子・無担保の貸付制度です。
いずれも、コロナへの対応ということで、これまでの要件を緩和して利用しやすくしています。
厚労省によれば、この両特例貸付の新規申請件数は、2020年の3/25~12/19までで、全国での累計支給件数は1,406,499件にのぼります。(2011年度は約7万件でした)
すでに、累計支給決定額は5,434.1億円にもなり、いずれも、これまでの支給実績を大きく更新しています。前代未聞の規模で「貸付」を利用している人が存在しています。
「貸付」はあくまで「お金を借りる」ことでもあります。生活再建が進まなかった場合など、返還の免除や猶予の規定はありますが、「借金」であることは事実です。
なかなか仕事が見つからず生活再建のメドが立ちにくい、などの状況ですと、「貸付」ではなく生活保護などの給付型の支援を利用したほうが良い場合もあります。
「生活保護は嫌だから」という理由で「貸付」を利用することはおすすめしません。どの制度が自分の状況にとって生活再建につながりやすいか、という視点で制度利用を検討してもらえたらと思います。
■生活に困ったら公的支援を利用しましょう
これ以外にも、原則3か月(最長12か月)家賃の補助を給付で受けることができる「住居確保給付金」という制度もあります。
事業主が協力してくれなくても申請できる「休業支援金」の仕組みもあります。
いわゆる「失業給付」や「求職者支援制度」については、ハローワークが窓口になっています。
どの制度をいまの自分が利用できるか、適しているかなど、悩まれる方も多いと思います。
各自治体の「生活困窮者自立支援窓口」は、生活が苦しくなった際の「ワンストップ」の相談先を目指して作られた制度です。
また、ここまで紹介したのは公的な窓口ですが、民間の支援団体も各地で活動しています。僕が所属する〈もやい〉をはじめ、遠慮なく相談していただければと思います。
■コロナ禍を、ともに生きぬくためにも
「緊急事態宣言」で、どの程度の経済への負の影響があるかは不透明です。しかし、残念ながら、仕事を失ったり、収入が減少してしまう人は多くうまれてしまうと思います。
生活が苦しくなったときには、自分の生活を守ることを最優先に、遠慮なく公的支援の利用を検討してください。
コロナ禍を、ともに生きぬくためにも、制度を利用することは「権利です」と強くお伝えします。
※この記事は1月9日0時時点で公表されている情報をもとに作成しました。支援制度等の情報は今後随時アップデートされる可能性がありますのでご注意ください。
【この記事はYahoo!ニュースとの共同連携企画記事です。】