1月13日、政府は緊急事態宣言の対象地域に大阪・福岡など7府県を追加した。重症者数の増加は止まらず医療現場の逼迫も叫ばれる中、感染拡大防止にどの程度の効果が見込めるのか。そして政府が2月下旬からの接種開始を目指すワクチンの準備は、今どのような状況にあるのか。新規感染者数が激増する若い世代の行動変容はどのように促せばよいのか。
今回の放送には、田村厚生相が緊急出演。新型コロナ患者の診察も行う国際医療福祉大学の松本哲哉教授をまじえ、緊急事態宣言下のコロナをめぐるさまざまな問題について伺った。
今までとフェーズが変わった
この記事の画像(12枚)長野美郷キャスター:
田村さん、特に深刻な東京の感染状況はどのようにご覧になりますか。
田村憲久 厚生労働相:
この急激な感染拡大の背景。年末年始の休みで、今まで検査に行けなかった比較的若い方々・症状の軽い方々が行った結果という意見もあるが、そう楽観的な話ではないかもしれない。これは来週ごろの数字を見ればわかってくる。
反町理キャスター:
かつてこの番組では、陽性率が7%を超えたら大変だと言っていた。その倍以上になっているこの現状をどう見るべきでしょう。
松本哲哉 国際医療福祉大学医学部 主任教授:
私たちの病院では外来で検査をしていますが、来られる患者数が増え、そして実際に陽性になる方が増えている。必ず1割から2割の方は陽性となっている。今までとはフェーズが変わっており、本当に市中に広がって感染が浸透してきていると実感します。
長野美郷キャスター:
変異種が入ってきていることが理由となっている可能性は?
田村憲久 厚生労働相:
日本は実はもうゲノムの解析を行っている。ないとは言い切れないが、専門家の方々はそれで急激に増えたとは今のところ考えていない。
PCR検査は費用対効果がよくない
長野美郷キャスター:
視聴者からの質問メール。「政府はなぜPCR検査を積極的に実施して感染者を隔離しようとしないのですか」。
田村憲久 厚生労働相:
検査はやればやるほどいいと私も思います。ただ税金で行う以上費用対効果の問題がある。国家体制が違うから、中国のように強制して一斉に行うことはできない。すると費用対効果はあまりよくない。アメリカは2億回ほど検査を行っているはずだが、あのような状況。そのため今は、可能性の高いエリアに関してはどんどん行う。それから介護施設や医療施設。これを予算でサポートする。
感染症法改正「厳しい措置にご理解を」
長野美郷キャスター:
医療体制の現状について。重症者を受け入れる病床の余力が少なくなり、入院先が決まらない方が非常に多くなっています。田村さん、この医療現場の逼迫の程度は。
田村憲久 厚生労働相:
非常に厳しい状況。一都三県の知事も、病床が非常に逼迫しているという話をされた。また感染者の差配をする保健所への負担もある。東京都にも今病床を増やしていただいており、厚生労働省の中にもチームを作って、いろんな医療機関にコロナの病床確保のお願いをしている。
田村憲久 厚生労働相:
重症病床に対しては最大1950万円、中等症では900万円というメニューを用意した。使命感を持っていただいた病院が倒れたり、医師や看護師の給料が下がってはいけない。その上で医師会会長、看護協会会長や病院団体の方々に集まっていただき話をした。完全に状況が変わった、我々も覚悟と使命感をもって対応しなければという話だった。
反町理キャスター:
感染症法改正について、加藤官房長官の発言。医療関係者や民間等の検査機関への協力勧告に関する規定を整備し、応じない場合には名前を公表することも検討していると。田村さん、厚労大臣としてこの法改正については。
田村憲久 厚生労働相:
これはちょっと仰々しいのですが、基本的には協力いただくことが前提。大災害に近いような感染症が爆発的に広がってにっちもさっちもいかないときのことを想定しているんだと思います。
反町理キャスター:
前厚労相でもあり、非常に慎重な物言いをする加藤官房長官がここまで言うということは、このような法整備を事実上検討しているということでは。田村さんは厚労相としてはやってはならない、またはまだ早いという認識ですか。
田村憲久 厚生労働相:
というより、法律改正ですから関係者の方々に、公表などの非常に厳しい措置についてご理解をいただかなければならないと思います。
反町理キャスター:
特措法の改正は、病床確保というよりも医師・看護師という人材確保が狙いだと思います。新型インフルエンザ等対策特措法の31条の部分には、都道府県知事から医師・看護師や医療関係者への要請や指示について記述がある。この要請は頻発しているようなものですか?
田村憲久 厚生労働相:
一般的な要請はしているだろうが、法律に則った要請はしていないと思う。まさかの場合を含めてこのように書いている。
反町理キャスター:
では、ここの部分を改正して医師や看護師に対する要請・命令・指示、はっきり言えば私権制限となるような強制力を持たせるべきだという議論については。
田村憲久 厚生労働相:
今の法律でも指示できる。これはかなり厳しい権限になっています。
ワクチンは2月下旬から接種開始へ
長野美郷キャスター:
感染終息への決め手と期待されるワクチンについて。現在までに日本国内で接種が予定されているワクチンは3種類あり、合計2億9000万回分、1億4500万人分が確保されている。これは予定通りに進んでいるのでしょうか。
田村憲久 厚生労働相:
基本合意契約等々を3社と結んでいる。まず薬事承認に向けて審査を始めるという状況。ワクチン接種の優先順位は、医療従事者、高齢者・基礎疾患をお持ちの方、介護施設従事者、と決まっている。海外では先行して接種が始まっており、それに基づく情報などについては分かった時点でしっかりとお伝えをしていく。
反町理キャスター:
ワクチンは3種類あるが、どれを打つかは選べるのか。
田村憲久 厚生労働相:
そもそも承認されて接種する時期が違ってくる。また、ファイザーのワクチンなどは保管温度を保つ必要から、かなり集団的な接種体制になると思う。こうした制限があり、そもそも選べないかもしれない。
反町理キャスター:
3種類の特性、副反応などの情報をメディアが流す。それによる社会的な混乱の懸念は。
田村憲久 厚生労働相:
ワクチンの副反応は、腫れなどの軽い症状ならば一般的にはあること。重篤なものもごくまれにはあるが、一般のインフルエンザワクチンでもある。その情報はきちんと出していきたい。
松本哲哉 国際医療福祉大学医学部 主任教授:
いい意味での安全性に関するデータは、アメリカなどから多く出てきている。そういう情報も含めて考えれば、それほど副反応を注視する必要はなくなってきていおり、かなり期待できるようになってきているのでは。
長野美郷キャスター:
一般の国民がワクチンを打つ機会を得るまでのスケジュール感は。
田村憲久 厚生労働相:
大臣が「いつです」とはなかなか言いにくい。しかし常識的に考えて、2月下旬から医療関係者への接種が始まり、それが終われば高齢者の方に来るだろう、ということになる。
”ビジネストラック”止めてよかった
長野美郷キャスター:
水際対策である入国者検疫では、変異種の発見から改めてその重要性が浮き彫りに。特例的に認められていたビジネス関係者らの往来も2月7日まで一時停止となりました。
松本哲哉 国際医療大学医学部 主任教授:
一番有効な手段で、その判断は妥当。ちょっと遅かったかもしれません。
田村憲久 厚生労働相:
国によって検査やゲノム解析の内容も異なる。そういう意味で、今回ビジネストラック・レジデンストラックを止めたというのは良かった。
ただ、2週間の待機を破るケースが先日もあった。これに関しては厳しくする。まず誓約書を書いていただき、一つは守らなければ検疫法に則ってホテル等々への隔離。もう一つは悪質な場合は名前を公表するようにする。このように変異種への水際対応も強化する。
若い世代へ「鬼滅の刃」「LINE」などの活用も模索
反町理キャスター:
東京の感染者数について、年代別の話。ここにきて20〜30代の新規感染者が増えている。どう止めればいいのか。
田村憲久 厚生労働相:
このウイルスの怖いところは、あまりそういう話をすると社会の中で分断を作ってしまう点。やはり理解・納得・共感のもとに行動いただくことが重要。そのためにはまず情報を伝えなければならない。
若い方々にはSNSなどで情報を流していく。「鬼滅の刃」のキャラクターなど人気のある強いコンテンツを使ってSNSで情報を流すなど、いろんな方法はあると思う。実は今も、初音ミクとコラボをしてコロナの情報を流している。
反町理キャスター:
私は神奈川県民ですが、2020年4月の緊急事態宣言のとき、黒岩知事から県民全員宛てに注意喚起のメールが来た。さっき黒岩知事に電話して伺ったら、それは災害対応のメールシステムを使ったのだと。若い人向けにLINEも活用していた。このようなことは、国としても全国民に対してできるのか。
田村憲久 厚生労働相:
都道府県は防災のメールシステムを使える。LINEなどについても、可能かどうか検討はしてみたい。世代ごとに適切なメッセージが違うから難しいが、いずれにしてもいい話を聞きました。これから参考にさせていただく。
BSフジLIVE「プライムニュース」1月14日放送