新型コロナウイルスは全世界の死者が200万人を超え、累計感染者数は1億人に迫っている。世界が“救世主”と期待するワクチンは、各国が接種をスタートさせ、1月13日時点で3000万人以上が接種を終えた。
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新型コロナウイルスは全世界の死者が200万人を超え、累計感染者数は1億人に迫っている。世界が“救世主”と期待するワクチンは、各国が接種をスタートさせ、1月13日時点で3000万人以上が接種を終えた。こうした中、接種を進める運用面での課題が見えてきた。日本でのワクチン接種は2月末にも始まる見通しだが、変異したウイルスや医療現場の問題への対応も急務だ。先行して接種を始めた国が直面する課題から、そのカギを探る。
(「世界のワクチン接種、見えてきた課題 1」からつづく)
■ワクチン接種が進まない国も
第1波の際に多数の死亡者が出た介護施設でのワクチン接種も、各国で共通の課題となっている。真っ先に接種を進めなければならないが、施設から外出して投与を受けることが困難なお年寄りが多いため、ワクチンを個別に施設に持ち込む工夫が必要になっている。
教訓とすべき事例がある。フランスでは2020年末に接種を始めたものの、ほぼ同時に接種を始めたドイツなどに比べて接種が進んでいないとして、国内から批判が起きている。
AFP通信によるとワクチン接種を希望する国民は4割程度に留まり、こうした国民感情が接種が遅れる原因の一つになっているという。
アメリカでは病院にワクチンが届いたものの、コロナ患者の対応に追われ、接種に手が回らなかったという事例が報告されている。
感染拡大が続く中、どこの国でも病院は多忙を極めている。接種を行う医療従事者の人員をいかに確保するかも、課題となっている。
ワクチンを広く普及させる必要な量を確保することにも、各国は頭を悩ませている。接種率がトップのイスラエルは、早くからワクチンを高値で購入する契約を結び、接種に関わる詳細なデータを製薬会社に提供することでも合意していたとされる。
ワクチンを確保する競争はし烈となっている。接種の対象者と順番、施設、投与する医療従事者、ワクチンの運搬と保管、量の確保などを巡る各国の取り組みや課題を分析し、日本は効率的かつ迅速な普及を実現させなければならない。
■ワクチンは変異ウイルスに効くのか
イギリスで猛威をふるう変異ウイルス。世界へと広がっているほか、南アフリカなどでは別の変異ウイルスも確認されている。ウイルスが変異すること自体は珍しくないが、イギリスの変異ウイルスは従来のウイルスよりも感染が広がりやすい可能性があり、各国は警戒を強めている。
1月7日にファイザーとアメリカの大学は、ファイザー製のワクチンの接種を受けた人の血液を使ってイギリスの変異ウイルスに効果があるか検証したところ、従来のウイルスと同様の予防効果がみられたと発表した。これは初期の検証結果だが、ファイザーなどは「現時点での変異は、ワクチンへの耐性につながっていないことを示す結果」との見解を示している。
■ワクチンの副反応は?
アメリカのCDC(疾病対策センター)が初期の調査結果を発表している。2020年12月14日から23日の10日間にファイザーのワクチンを接種した約190万人のうち、21人がアレルギー反応のアナフィラキシーショックを起こしたという。
これは10万人に1.1人の割合だが、インフルエンザワクチンは10万回に0.13人なので、10倍近くになる。このうち17人は過去に薬や食べ物などでアレルギー反応が出たことがあったという。21人の7割は接種後、15分以内に反応が起き、追跡できた20人はすでに回復したとしている。CDCは「ワクチンは安全だとする判断を続け、接種を推奨する」と暫定的に結論を出している。
■ワクチン急ぐ背景 ~限界を迎えた病院~
欧米諸国が急ピッチでワクチンの接種を進める背景には、これ以上医療現場が持ちこたえられないという強い危機感がある。変異ウイルスの拡大により深刻な状況が続いているイギリスを例に取る。
イギリスでは1月13日に1日あたりの死者が初めて1500人を超えた。入院患者数も急増し、医療は危機的な状況に瀕している。
首都ロンドンの状況を見てみよう。医療分野を専門とするメディア「HSJ」によると、1月5日の時点で、すでにロンドン市内にある一般病床の4割、集中治療室の7割を新型コロナウイルスの患者が占め、この割合は増え続けているという。
さらに1月19日の時点では、入院需要が保有する病床を大きく超え、一般とICU合わせておよそ3500の病床が不足すると予測している。
イギリス政府は1人でも多くの人に1回目のワクチン接種を受けさせるため、本来3週間とされている1回目と2回目の接種の間隔を12週間に広げる苦肉の策を選択せざるを得なくなった。
日本でも医療現場がひっ迫する状況となっているが、新型ウイルスの患者を受け入れているのは公的な病院が多く、全体の8割を占める民間病院の患者受け入れが少ないことが指摘されている。
日本で一部の公的病院に負担が集中する構図となる一方、「HSJ」の予測ではロンドンほぼすべての病院が収容能力の限界を迎えていることを示している。
イギリスの医療政策トップは1月11日、「今後、数週間が最悪の時だ」と述べ、感染拡大防止に最大限の協力を呼びかけた。
欧米を中心にワクチンの接種が進む一方、そうでない国は多い。WHO(世界保健機関)は1月11日の会見で、発展途上国のワクチン確保が遅れていることを指摘し、「世界全体が今年中に、集団免疫を獲得することはできない」と明言した。
“救世主”ワクチンの接種は始まった。しかし、欧米を中心とした先進国でもワクチンの普及は多くの課題に直面している。発展途上国を含めた世界全体にワクチンが普及し、新型コロナウイルスが世界的に収束する日は見通せていないのが現実だ。
(「世界のワクチン接種、見えてきた課題 1」からつづく)
■ワクチン接種が進まない国も
第1波の際に多数の死亡者が出た介護施設でのワクチン接種も、各国で共通の課題となっている。真っ先に接種を進めなければならないが、施設から外出して投与を受けることが困難なお年寄りが多いため、ワクチンを個別に施設に持ち込む工夫が必要になっている。
教訓とすべき事例がある。フランスでは2020年末に接種を始めたものの、ほぼ同時に接種を始めたドイツなどに比べて接種が進んでいないとして、国内から批判が起きている。
AFP通信によるとワクチン接種を希望する国民は4割程度に留まり、こうした国民感情が接種が遅れる原因の一つになっているという。
アメリカでは病院にワクチンが届いたものの、コロナ患者の対応に追われ、接種に手が回らなかったという事例が報告されている。
感染拡大が続く中、どこの国でも病院は多忙を極めている。接種を行う医療従事者の人員をいかに確保するかも、課題となっている。
ワクチンを広く普及させる必要な量を確保することにも、各国は頭を悩ませている。接種率がトップのイスラエルは、早くからワクチンを高値で購入する契約を結び、接種に関わる詳細なデータを製薬会社に提供することでも合意していたとされる。
ワクチンを確保する競争はし烈となっている。接種の対象者と順番、施設、投与する医療従事者、ワクチンの運搬と保管、量の確保などを巡る各国の取り組みや課題を分析し、日本は効率的かつ迅速な普及を実現させなければならない。
■ワクチンは変異ウイルスに効くのか
イギリスで猛威をふるう変異ウイルス。世界へと広がっているほか、南アフリカなどでは別の変異ウイルスも確認されている。ウイルスが変異すること自体は珍しくないが、イギリスの変異ウイルスは従来のウイルスよりも感染が広がりやすい可能性があり、各国は警戒を強めている。
1月7日にファイザーとアメリカの大学は、ファイザー製のワクチンの接種を受けた人の血液を使ってイギリスの変異ウイルスに効果があるか検証したところ、従来のウイルスと同様の予防効果がみられたと発表した。これは初期の検証結果だが、ファイザーなどは「現時点での変異は、ワクチンへの耐性につながっていないことを示す結果」との見解を示している。
■ワクチンの副反応は?
アメリカのCDC(疾病対策センター)が初期の調査結果を発表している。2020年12月14日から23日の10日間にファイザーのワクチンを接種した約190万人のうち、21人がアレルギー反応のアナフィラキシーショックを起こしたという。
これは10万人に1.1人の割合だが、インフルエンザワクチンは10万回に0.13人なので、10倍近くになる。このうち17人は過去に薬や食べ物などでアレルギー反応が出たことがあったという。21人の7割は接種後、15分以内に反応が起き、追跡できた20人はすでに回復したとしている。CDCは「ワクチンは安全だとする判断を続け、接種を推奨する」と暫定的に結論を出している。
■ワクチン急ぐ背景 ~限界を迎えた病院~
欧米諸国が急ピッチでワクチンの接種を進める背景には、これ以上医療現場が持ちこたえられないという強い危機感がある。変異ウイルスの拡大により深刻な状況が続いているイギリスを例に取る。
イギリスでは1月13日に1日あたりの死者が初めて1500人を超えた。入院患者数も急増し、医療は危機的な状況に瀕している。
首都ロンドンの状況を見てみよう。医療分野を専門とするメディア「HSJ」によると、1月5日の時点で、すでにロンドン市内にある一般病床の4割、集中治療室の7割を新型コロナウイルスの患者が占め、この割合は増え続けているという。
さらに1月19日の時点では、入院需要が保有する病床を大きく超え、一般とICU合わせておよそ3500の病床が不足すると予測している。
イギリス政府は1人でも多くの人に1回目のワクチン接種を受けさせるため、本来3週間とされている1回目と2回目の接種の間隔を12週間に広げる苦肉の策を選択せざるを得なくなった。
日本でも医療現場がひっ迫する状況となっているが、新型ウイルスの患者を受け入れているのは公的な病院が多く、全体の8割を占める民間病院の患者受け入れが少ないことが指摘されている。
日本で一部の公的病院に負担が集中する構図となる一方、「HSJ」の予測ではロンドンほぼすべての病院が収容能力の限界を迎えていることを示している。
イギリスの医療政策トップは1月11日、「今後、数週間が最悪の時だ」と述べ、感染拡大防止に最大限の協力を呼びかけた。
欧米を中心にワクチンの接種が進む一方、そうでない国は多い。WHO(世界保健機関)は1月11日の会見で、発展途上国のワクチン確保が遅れていることを指摘し、「世界全体が今年中に、集団免疫を獲得することはできない」と明言した。
“救世主”ワクチンの接種は始まった。しかし、欧米を中心とした先進国でもワクチンの普及は多くの課題に直面している。発展途上国を含めた世界全体にワクチンが普及し、新型コロナウイルスが世界的に収束する日は見通せていないのが現実だ。
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