マスク着用、動機は他人 「感染防止」ほぼ関係なし
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、日本人がマスクを着ける動機は、感染が怖いからでも他の人を守るためでもなく「みんなが着けているから」。同志社大の中谷内一也教授(社会心理学)らのチームが11日までに、インターネットで行ったアンケートから、こんな結果をまとめた。
チームは感染者の増加が続いた3月下旬、年齢や居住地などの構成が日本の縮図となるよう千人を選び、マスク着用の理由や頻度を尋ねた。
「感染すると症状が深刻になる」「やれる対策はやっておく」などの理由が、それぞれマスクの着用頻度にどの程度影響するかを示す標準化偏回帰係数という指標(最高は1)を算出したところ、断トツは「人が着けているから」で0.44。次は「不安の緩和」で0.16、「自分の感染防止」や本来の効果とされる「他人の感染防止」は0近くでほぼ関係がないとされた。
マスクは既にエチケットとして浸透したが、帰宅時の洗顔や、人と会話する時に正対を避けるなど、政府が勧める「新しい生活様式」の中には認知度が低い対策もある。
中谷内教授は、人々に望ましい行動を促すには、マスクのように「みんなやっている」という同調心理をくすぐるのが有効とみる。ただ「やりすぎると窮屈な監視社会になる」とし、施策への応用は慎重にやるべきだと注意を促した。
研究結果はスイスの心理学専門誌フロンティアーズ・イン・サイコロジーに掲載された。〔共同〕