イギリス、全ての入国者に陰性証明義務付け 変異株の流入防ぐため

People arriving at Heathrow airport

イギリスは18日から、全ての国からの渡航者に対し、新型コロナウイルス対策として入国後の自主隔離を義務付けると発表した。違反には罰金が伴う。ボリス・ジョンソン英首相は15日の記者会見で、「特定されていない変異株のリスクを防ぐ」ためと説明した。

イギリスは昨年夏以降、特定の国からの入国者には自主隔離を免除していたが、18日午前4時以降は入国する全ての渡航者に、新型コロナウイルス検査の陰性証明の提示を義務付ける。

また、ブラジルで新たな変異株が発見されたことを受け、15日から南米諸国とポルトガルからの入国を禁止している。

ジョンソン首相によると、新しい措置は少なくとも2月15日まで継続される。

イギリスではこの日、検査で陽性が判明してから28日以内に亡くなった人が1280人報告された。死者の累計は8万7291人に上った。

また、政府の最新発表では新たに5万5761人の感染が報告された。前日の4万8682人から増加している。

一方、これまでにイギリスでワクチンを接種した人は323万4946人となり、300万人を突破した。

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、日本時間16日朝までに全世界での新型ウイルスによる死者が200万人を超えた。

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首相官邸での記者会見でジョンソン首相は、「国民を守るために日々進歩している中」、追加の施策を取ることが「重要だ」と述べた。

イギリスへの渡航者は今後、最長10日間の自主隔離が必要となる。ただし、隔離5日後に検査で陰性となれば、隔離期間を短縮できる。

ジョンソン首相はまた、スコットランドとウェールズ、北アイルランドの各自治政府とも協議し、新たな施策はイギリス全土に適用されると説明した。

イギリス政府は昨年夏、感染者の少ない国からの渡航者に自主隔離を免除する「旅行回廊」制度を導入した。

航空業界団体エアラインズUKのティム・アルダースレイド最高責任者は、この「旅行回廊」が昨年夏の時点では「業界の生命線」だったものの、「状況は変化し、今は深刻な医療の緊急事態にあることは疑いようがない」と語り、新たな施策を支持した。

その上で、「必要になればすぐにでも」制限が解除されると「推測している」と述べた。

最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首も制限を支持したものの、政府の決定は「また遅きに失した」と指摘した。

入院患者数が過去最多に

Graph showing hospital admissions in the UK
画像説明,

新型コロナウイルスによる入院患者数。折れ線グラフは7日間平均。入院患者の数は、昨年春の流行第1波よりも増えている

ジョンソン首相は、国民保健サービスが「かつてない重圧」にさらされていると警告。今週初めには、1日当たりの入院件数がパンデミックが始まって以来で最多となったと述べた。

イギリスでは12日、新たに4134人が新型ウイルスの症状で入院した。現在、全国で3万7000人以上が病院で治療を受けている。

一方でジョンソン氏は、2月半ばまでに最も感染リスクの高いグループがワクチン接種を終えれば、「制限解除に向けた手順を検討する」と語った。

イングランドは現在、全土でロックダウンを行っている。住民は食糧の買出しや運動、在宅勤務できない場合の通勤を覗いて、自宅にとどまらなければならない。

スコットランドやウェールズ、北アイルランドでも同様の措置が取られている。

Graph showing cases may be falling in the UK
画像説明,

イギリスの1日当たりの新型コロナウイルス感染数の推移。折れ線は7日間平均。点線を境に検査規模が拡大されている。この図では、感染者数がピークを迎えた可能性が示唆されている

記者会見に同席したイングランド首席医務官クリス・ウィッティー教授は、来週から10日後にかけて入院患者数はピークを迎えると指摘。一方で、イングランド南東部や東部、ロンドンでは「すでに」感染のピークに差し掛かっている「と期待している」と話した。

「死者数のピークはこれからだと懸念している。イングランドの一部は現在、入院患者数のピークに達しつつあるかもしれない」

新たな変異株への懸念、ワクチン改良は「容易」と

ブラジルでさらに感染力の高い新型ウイルスの変異株が発見されたことを受け、イギリスは15日から南米諸国とポルトガル、アフリカのカーボヴェルデからの入国を禁止した。

サー・パトリック・ヴァランス首席科学顧問は記者会見で、いつくかの変異株は既存のワクチンを「迂回(うかい)する」かもしれないが、こうした変異にワクチンを対応させるのは「とても簡単だ」と述べた。

変異株はすでにイギリスや南アフリカでも発見・特定されており、多くの国が両国からの渡航制限に踏み切っている。

イングランド公衆衛生庁によると、南アフリカで遺伝学的に特定された35種類と、推測されている12種類の変異株が、1月14日までにイギリスで確認された。

また、ブラジルで確認されている2種類のうち1種類もイギリスで見つかっているが、リスクの高いものではなかったという。

サー・パトリックは、「イギリスの変異株については既存のワクチンによって予防できる可能性が高く、他の変異株についてもそうだと推測できる。問題はどの程度守ってくれるのかということだ」と述べた。

その上で、ワクチンは感染自体も防いでくれると期待しているが、それでもリスクは残るため、「舞い上がってはいけない」と忠告した。

「ワクチンを受けたからといって、新型ウイルスを保持して他の人にうつさなくなるわけではない。あなた自身が重症とならないという意味だ」