新型ウイルス感染、公共交通機関はどれくらい危険?

レイチェル・シュレア保健担当記者

People on a station platform
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利用者の距離を開けるため、ロンドンの一部の駅ではベンチを封鎖している

イギリスでは新型コロナウイルス流行を受けたロックダウン(都市封鎖)が3月下旬に始まって以降、電車やバス、飛行機といった交通機関でサービスが縮小された。政府も、不要不急の移動を控えるよう市民に呼びかけた。

そして今、イングランドでこうした制限が緩和された中、多くの人が職場に戻るよう奨励されている。

政府は公共交通機関での移動を避け、徒歩や自転車、自動車での通勤を促している。

だがそれが難しい場合、バスや電車に乗るリスクはどれくらいなのだろうか?

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バスや電車での移動、安全性は?

電車やバスでの感染リスクの多くは、その混雑度に依存する。つまり、お互いにどれくらいの距離を取れるかによる。これは車両だけでなく駅にも当てはまるし、路線や地域によっても千差万別だろう。

換気も大事だ。新鮮な空気が循環することで新型ウイルスを含む飛まつが早く消えるため、窓を開けられる環境ほど好ましい。

人は、感染者がせきやくしゃみをしたときや、空気中に漂う飛まつを吸い込んだとき、新型ウイルスに感染する。

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この飛まつは目や鼻、口に直接入り込んだり、ウイルスに汚染されたものを触った手で触れることで体内に侵入する。

イギリス政府は一貫して、同居人以外の人とは2メートルの距離を開けるよう呼びかけている。

On a Tube train in London
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ロンドン地下鉄では、人々が距離を開けて座っている

パンデミック以前に発表された研究では、ロンドン地下鉄での通勤で呼吸器疾患に感染する可能性が示唆されている。

2018年に発表されたユニヴァーシティ・コレッジ・ロンドン、国際衛生研究所ののララ・ゴース博士の研究によると、定期的に地下鉄に乗る人ほど、インフルエンザのような症状を起こしやすいことが分かっている。

「特に路線の少ない、1回以上乗り換えないといけない地域の方が、路線が複数通っていて直通で目的地までいける地域よりも、インフルエンザのような病気にかかる確率が高いことが示された」とゴース博士は説明している。

一方、空いている電車やバスで移動した場合にはリスクも変わってくる。交通機関に乗っている時間も関わっている。他人と接触する時間が長く、より多くの人と接触するほどリスクが高まる。

ゴース博士は、「感染しているかもしれない人や、汚染されているかもしれないものとの濃厚接触を制限することが大事だ」と語る。

また、「移動に関して言えば、可能であればピークは避けるべき」で、できれば1種類の交通手段だけを使うルートを選ぶ方が良いという。

政府からのアドバイスは?

イギリス政府は、「公共交通機関を使う前に他の移動手段をすべて検討するよう」人々に求めている。また、徒歩が無理なら自転車や自動車を使うよう呼びかけている。

その他のアドバイスは以下の通り。

  • ピーク時を避ける
  • なるべく空いている路線を選び、乗り換えを最小限に抑える
  • 利用者が降りるのを待ってから乗車する
  • 「可能な場合」は他人と2メートル距離を取る
  • 移動後は少なくとも20秒間、手を洗う

政府は、混在時や交通機関の乗り降りの際には、利用者が2メートルの間隔を取れない場合もあると指摘。そうした場合は直接の接触を避け、互いに顔を背けるようアドバイスしている。

イングランドとスコットランド、北アイルランドの各政府は、交通機関を利用する時には顔を覆うよう推奨している。

一方ウェールズ自治政府は、顔を覆っても良いが、義務化するほどの「強い根拠はない」としている。

顔を覆うことで、場合によっては感染リスクを下げることができる。特に、自分が感染するのを防ぐというよりは、自分が他の人に新型ウイルスをうつすのを防ぐ効果ガあるとされる。

交通機関はどんな対策を?

イギリスの交通機関は、スタッフと利用者の安全性を高める施策を導入している。

バス運営会社アリヴァ・バスはコンタクトレス(非接触型)決済だけを受け入れ、現金払いの際には釣銭を出していない。

ロンドン交通局(TfL)はすべての地下鉄と地上鉄道の駅およびバス停に除菌ジェルを設置。清掃の頻度を増やした。

イングランドでロックダウンが緩和された13日、ナショナル・レイルでは乗客数が1週間前と比べて10%増えた。

ロンドン地下鉄ではこの日、午前10時までの利用者が7.3%増えて8万3293回の移動があった。しかし1年前には同じ時間帯に120万回の地下鉄移動があっただけに、通常の移動量に比べるとほんのわずかだ。

イングランドでは現在、通勤者は可能なら公共交通機関を使わないよう奨励されている。

ウェールズでも、公共交通機関の利用を避けるアドバイスが出ている。

スコットランドではどうしても出勤しなければ行けない人のために、交通機関がダイヤを絞って運行している。北アイルランドも似たような状況だ。