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新型コロナ「大規模PCR検査」に賛否の声 市民、専門家は…

1/20(水)  22:03 掲載

新型コロナウイルスの感染を防ぐために湯崎知事が推し進めようとしている大規模PCR検査を巡って、賛否の声が上がっています。

【広島市民】
「無症状だったときにお客さんに迷惑がかかるので受ける機会があるなら」「いまの時代、陰性といった保証があったほうが安心できるし」「受けようと思っている。他人に移す可能性があるからある程度、確率100%じゃないにしてもそういう安心感は必要かなと」「子供がぜんそくなので、移して重症化したら困るので受けようかなと」

広島市民が高い関心を寄せる大規模PCR検査…。湯崎知事は、無症状感染者の洗い出しを目的に広島市内4つの区に関わる80万人を対象にした無料のPCR検査を実施する方針を打ち出していますが、取材を進めると、専門家からは様々な問題点が指摘されています。

条件付きで賛成の立場を示している県医師会の松村会長は…。

【県医師会・松村誠会長】(吹き替え)
「全国的にもやっていないし感染拡大を食い止める一つの方法、新しい試みとして評価できる。ただどういう風にやるかなどの方法がクリアできれば賛成」

一方、これまでの取材から、県の専門家会議では参加した委員全員が反対したにもかかわらず県側が押し切る形で決めたことも明らかになっています。

来月上旬からの実施が検討されている大規模PCR検査。果たしてその行方は…。

【スタジオ】
県民の皆さんの生の声を聞くと「受けたい」という声が多い。いろいろな家庭の状況や仕事の状況があり、無料で受けられるのなら、と関心の高さが伺える。

この大規模PCR検査について加藤キャスターが解説する。

【加藤キャスター解説】
この1年、「PCR検査」という言葉が広まったが、あらためてどういう検査なのか確認する。PCR検査とはそもそも「陽性と疑わしい人を確定」させるために行うのが望ましい検査。言い換えると症状がある人や濃厚接触者に行うのが望ましい検査とされている

なぜかというと、ある程度の割合で誤った結果がでることがあるから。つまり、すべての結果を信じることができる「万能の検査」ではないのが実情だという。

広島大学の坂口教授の話を元に、「仮定」の話をする。

たとえば、10万人の検査を行った場合。実際に1000人の陽性者がいたとすると10万人のうち5%程度の人、約5000人が実際には陽性ではないのに「偽陽性」という判定を受ける可能性がある。従って表面的には合わせて6000人の陽性者がいるという判定になる可能性がある。

また、実際に100人の陽性者がいたとすると、5000人の擬陽性の人と合わせて、表面的には5100人の陽性者がいるという判定になる可能性があり、実態とはかなりかけ離れた結果となってしまう。

さらに10万人のうち5%にあたる5000人は、実際には陽性なのに陰性の判定が出る「偽陰性」の判定が出る可能性があり、まったく実態とはかけ離れた結果が出る可能性もあるのだという。

坂口教授は今回の大規模PCR検査の問題点についてこう指摘している。

【広島大学・坂口剛正教授】
「得られる利益、アドバンテージとやることによる不利益を考えたときに、不利益のほうが大きいと考えられるので、(医療関係者は)みんな積極的に賛成とは言わないのだと思う。
陽性者数がたくさん出た時に、それを受け入れる体制が整っていないのではないかということもあるし、偽陽性、偽陰性の問題もある。
本当にこういう試験をやればやるほど問題がたくさん出てくる、その割に得られるものが少ないのではないかと」

【スタジオ】
湯崎知事は、こういうことも踏まえても、検査をするメリットの方が大きいと言っているが、そのあたりが実際にはどうなのか疑問が浮かぶ。

【加藤アナ】
そしてもう一つ問題点として挙げられているのが、PCR検査の費用。坂口教授によると
1回あたり約1万円なので、仮に80万人全員が検査を受けるとすると、80万回の総額は80億円になり、費用面もかなり心配になる。

坂口教授は、費用についても別の使い方があるのではと述べている。

【広島大学・坂口剛正教授】
「広島では重症者の収容施設、病院が足りないのではないかと言われている。今、幸い下火になっているが、少し前多かった時にはいっぱい、いっぱいの状況だった。もう少し受け入れの病院を増やすとか、場合によってはプレハブの専用病院を作るとかを考えてもいいかもしれない」

【スタジオ】
県は予算については調整中としているが、県の一般財源を使っては県民の理解は得られづらいということで、国の交付金を充てることも想定しているようだ。

【TSSプライムニュース・福田康浩】
大規模検査は無症状の患者をあぶりだすことが目的なので、できるだけ短期間に現状を知る必要がある。県は検査期間を1か月から2か月と見込んでいるが、専門家は3か月はかかると言っている。

最大80万人の検査を効果的にするために、検査を短期間で行うための手法、そして費用を圧縮するための方法について検証し、県は具体的に説明する必要があると思う。そこが十分に説明されていないので、懐疑的な声が上がるのではないか。

ただ、湯崎知事は「感染状況が低くなった場合は(検査を)やる意味がなくなる」とも述べている。ということは、大規模PCR検査をやるかどうかは我々が感染拡大を止めることができるかどうかにかかっているといえる。感染拡大に歯止めがかかればやらなくていい状況になるかもしれない。そこへもっていく努力が必要になる。

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