バイデン氏、200兆円の財政出動 現金給付14万円追加

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細谷雄一さん他2名の投稿細谷雄一菅野幹雄梶原誠

【ワシントン=河浪武史】バイデン米次期大統領は14日、1.9兆ドル(約200兆円)規模の新たな新型コロナウイルス対策案を発表した。現金給付を1人当たりさらに1400ドル(約14万5000円)支給するほか、失業給付の特例加算も9月まで延長する。トランプ政権からの臨時の財政出動は合計で6兆ドル弱に近づき、巨額の経済対策で景気の早期回復を図る。

バイデン氏は米東部時間14日夜(日本時間15日午前)に地元デラウェア州で演説して「米国はパンデミック(大流行)と経済悪化の2つの危機にあり、時間を空費する余裕はない」と早期の経済対策の実現を訴えた。今回の1.9兆㌦の対策は「失業者などへの第1弾の経済救済案にすぎない」と述べ、2月に予定する両院合同議会での演説で「インフラ投資などの経済再建策を改めて表明する」と主張した。

バイデン氏は20日に第46代大統領に就任する。新型コロナの新規感染者数は1日あたり20万人を超え、ワクチンなどの対策が急務だ。雇用情勢も再び悪化しており、政権発足と同時に経済対策を打ち出して、景気回復期待をつなぎ留める必要があった。

バイデン陣営が公表した経済対策案によると、1.9兆ドルのうち1兆ドルは家計支援に振り分け、生活者1人あたりで最大1400ドルの現金を追加で給付する。現金給付は20年3月に1200ドル、同12月に600ドルの支給を決めており、今回で3回目だ。失業給付を積み増す特例措置も9月まで延長する。

ワクチン配布など直接的なコロナ対策に4000億ドルを充てる。財政難の州・地方政府にも3500億ドルを支援し、500億ドルは中小企業対策とする。連邦政府は関連法で時給7ドル25セントを最低賃金と定めているが、2倍の15ドルに引き上げる案も盛り込んだ。

米政権・議会は3月以降、すでに4回のコロナ対策を発動している。20年12月末には9000億ドルの追加財政出動を決めたばかりで、既に対策規模は4兆ドルと国内総生産(GDP)比で20%前後に達している。1.9兆ドルを積み増せば、GDP比で3割近い景気刺激策となり、過去例のない巨額の連続財政出動となる。

税財政の決定権は議会にあり、バイデン氏が提示した今回の経済対策の実現は上下両院の審議次第だ。下院は法案通過に必要な過半数を民主党だけで確保するが、上院は50対50で拮抗する。上院は議事妨害を避けるために通常は100議席中60の賛成が必要だが、予算関連法案に限った特例を使えば51票の単純過半数でも可決できる。特例を使うには長期予算の大枠を定めるなど複雑な手続きが必要で、審議に一定の時間がかかるため、現金給付など共和党の賛同を得やすい施策に絞って先行審議する可能性もある。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • 細谷雄一のアバター
    細谷雄一慶應義塾大学法学部 教授
    分析・考察

    共和党のように、支持基盤にいわゆる「小さな政府」派やリバタリアンなど、原理主義的に連邦政府の財政出動拡大を嫌悪するグループがいない分だけ、民主党はこのような大規模な経済対策が可能なのかもしれません。また、外交・安保政策で比較的、現実主義的な中道路線をとっており、むしろ国内経済対策やコロナ対策、気候変動対策などで、党内左派の不満を緩和することも可能かも知れません。コロナ対策については、欧州諸国と比較的類似した対応をこれから行うとすれば、G7を含めて自由民主主義諸国の連携が強まることが可能となり、そのことはコロナ対策と景気回復と双方においてプラスになることと思います。ここにささやかな希望を見ます。

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  • 菅野幹雄のアバター
    菅野幹雄日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
    ひとこと解説

    バイデン政権の正式発足に1週間近く先行して新型コロナ対策の全体像を公表したのは、20日の大統領就任直後から景気立て直しへダッシュする姿勢を印象づけるためでしょう。並行してペロシ下院議長らが主導したトランプ大統領の弾劾裁判も始まる可能性がありますが、バイデン氏としては、やはり目先の最優先課題に集中したいところでは。 記事の指摘通り、注目は議会での共和党の出方です。現金給付600ドルは財政赤字を抑えたい共和党主流派の主張で、決定後にトランプ大統領が「少なすぎる」と一時はねのけました。今回の1400ドル増額はトランプ・バイデン両氏が珍しくも一致した政策。どう収束するでしょうか。

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