阪神梅田本店トップページ

駅弁催事大好き山琴さんによる駅弁催事必勝法!

―まずは、今回の出店駅弁リストをご覧になっての率直な感想を聞かせてください。
山琴:個人的に「殿堂入り」と呼んでいるいくつかの定番駅弁の名前が並んでいるのを見て、またこの季節がやって来た実感が湧いています。
                        コロナ禍が叫ばれ出してから、駅弁催事の開催については「規模を縮小してでも……」「オンライン開催もやむなし」「なんとか中止だけは……」と弱気になっていたのですが、リストを拝見するに例年と比べても見劣りしない規模のラインナップ、かつ新商品の投入も活発で、その開催の実現はとてもうれしく、また勇気づけられました。
―ほんとにそうですね。300近くある駅弁のなかで、特に気になる駅弁をいくつか挙げていただけますか。
山琴:「山口ふくふくむすび弁当」(山口県)が気になりますね。同じ広島駅弁当がつくる「ふく福飯」はその具材だけでなく、出汁で炊いたご飯がとても美味しい駅弁なのですが、そのご飯でにぎったおむすびだとしたら……と考えると、思わず生唾を飲み込んでしまいます。オーブンで軽く炙ってから茶碗に入れ熱々のお茶をかけても、ちょっといい感じのお茶漬けとして楽しめるんじゃないかな、と期待も膨らみます。
―「山口ふくふくむすび弁当」は、今回の駅弁催事の特集企画「駅弁誕生135周年記念おにぎり弁当」のひとつです。
山琴:おにぎりといえば2016年の京王駅弁大会で話題をさらった「滊車辨當」が記憶に新しいですが、個人的におにぎりと駅弁は相性がいいと思っています。中心価格帯がざっくり1,200円~1,500円という駅弁ラインナップの中で、1,000円を切る価格帯にも趣向を凝らした選択肢がいくつも揃うことは、胃袋だけでなく懐にも嬉しいですね。
―山琴さんの気になる駅弁、もうひとつ挙げるとすれば何でしょう。
山琴:「有田焼きカレー」(佐賀県)は、その本格的なカレーの味わいはもちろん、食べ終わった後も勝手の良い陶器皿として使い続けられる容器が魅力です。その年の干支がデザインされているためコレクション性も高く、遅まきながら私も何年か前から集めはじめたので、今年も買い逃がせません。
                        余談となりますが、11月に発売され話題を呼んでいる「牛肉どまん中ピザ」や、シルエットがティザー公開されている「改良版蓋付きひっぱりだこ飯」など、現出店リストにはない隠し玉のサプライズ投入にも期待したいところです。
―「牛肉どまん中ピザ」は米沢の人気駅弁から発した新名物ですね。そのあたりは、駅弁催事ファンの声として担当者に伝えておきます。ちなみに、これまでの阪神百貨店の駅弁催事での最もイイ思い出って何でしょう。
山琴:駅弁催事の中で新作駅弁の投票企画が行われていましたよね。一度その抽選に当選して5,000円分の商品券をいただきました。楽しい場所でうまいものを食べて、その上、金券までもらえるなんて! と感激し、思わず駅弁の神様に感謝したツイートが残っています。商品券は翌年の駅弁催事でありがたく使わせていただきました。
https://twitter.com/yamacot/status/1094806286921752576
―さすが! 足繁く通われてるだけあって、もってますね。
                        個々の駅弁については好みの部分も多いと思います。駅弁催事そのものをどう楽しめばいいか、山琴さんのスタイルをお話いただけますか。
山琴:私は、いわゆる“鉄ちゃん”でもなければ特に旅行好きというわけでもないので、そもそもは駅弁というもの自体にそこまで思い入れはありませんでした。ところが15年ほど前に、なんとなく駅弁催事をのぞいたことから駅弁の魅力を意識しはじめました。
                        はじめての駅弁催事は、手近な駅弁を選んで早々と退散した記憶もありますが、駅弁催事を積極的に楽しめるようになってきたのは、漫画『酒のほそ道』の作者であるラズウェル細木さんやライターの安田理央さんをはじめとする新宿京王百貨店の「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」愛好家の方々の存在です。
―はい。東の駅弁ファンの熱い盛り上がりは、こちらにも伝わってきています。ただ駅弁を食べるだけじゃない、いろんな試みをされてますよね。
山琴:そうなんです。会期前から催事のチラシを持って居酒屋に集まり、大会の傾向やラインナップについての意見交換を肴に酒を飲む「チラシ飲み」と称する飲み会。催事で調達した駅弁を携えて、箱根までの車中で弁当と酒を楽しむこと“のみ”を目的として小田急ロマンスカーに乗り込む「ロマ弁」なるツアー。催事のチラシのレイアウトをビンゴ用紙に見立て、購入した駅弁でマスを埋め、列を揃える「駅弁大会ビンゴ」。
                        敬愛する酒の先輩方が、酔狂ともいえる勢いで全身全霊をささげて駅弁大会を楽しんでいらっしゃる様子はどこか不思議で、しかし、とてもうらやましく思え、それに感化されたささやかな真似事を「阪神の有名駅弁とうまいもんまつり」で始めるにいたり、気がつけばどっぷりハマってしまっていました。
―駅弁催事ファンの先輩方の楽しみ方を継承しつつ、山琴さんならではの楽しみ方もありますか。
山琴:とにかく期間中は駅弁催事最優先で臨む……というのは言うまでもないのですが、その会期を最大限楽しむために、対比をきかせた2つのテーマを設定してみたりします。
                        たとえば、「事前に出店リストを読み込んで熟考を重ねた駅弁」と「その日のその場の気分で選んだ駅弁」、「食事を楽しめそうな駅弁」と「お酒を楽しめそうな駅弁」など。駅弁催事をひとつの視点だけから見ると、当初の私のように気後れしてしまうかもしれませんが、複数の角度から楽しむことで、駅弁催事の懐の奥深さを感じられるかもしれません。
―今回は感染症予防対策として、会場でのイートインはなく、混雑時は入場制限が行われることになりました。
山琴:やむを得ない判断だと思います。なので、持ち帰った駅弁を楽しむシチュエーションがメインとなりますが、たとえば、昨今話題となっているチェアリングのお供として駅弁を楽しむのも面白いかもしれません。チェアリングは、ライターのスズキナオさんとパリッコさんが提唱する、アウトドア用の折りたたみ椅子を持って水辺や公園などに出向き、好きな場所に椅子に置いて酒を飲む気軽なアクティビティです。
―駅弁×チェアリング、いいですね。スズキナオさん、パリッコさんといえば、おふたりが監修を務めた書籍『のみタイム』に山琴さんも寄稿されてましたね。
山琴:そうなんです。チェアリングは、屋外の開けた場所では密のコントロールも任意ですし、寒さ厳しい時期ではありますが、駅弁の中にはヒモを引くだけで火を使わずに加熱ができる容器に入ったスグレモノもあり、“外弁”の強い味方になってくれると思います。
―ありがとうございます。最後に、今回の駅弁催事にかける意気込みをどうぞ。
山琴:本当によくぞ開催にこぎつけてくれたという思いで一杯です。
                        その年の駅弁催事で最初に購入する駅弁、いわゆる“ファースト弁”は特集モノから選びたいのが心情というものですから、おそらくは、もうひとつの特集企画「プチ贅沢弁当」からグっとくる一弁をチョイスすることになると思います。
山琴ヤマコ正月三が日よりも、駅弁催事に新年の訪れを感じる、
                        しがない飲酒家。