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日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人 作者:アサヒ

第四章

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67話: エピローグ~忘れられない事と忘れて欲しいこと~

え、私ですか?今ですか?

もちろん恋人(実験装置)とイチャイチャしてますよ?


『チーナ、好きだ』

『え……』


 俺の言葉を聞いて、完全に固まってしまうチーナ。

 エメラルドグリーンの目を見開いて、必死に言葉を探しているのが分かる。


『ヨリ……今なん……』

『好きだって言ったんだよ。別に今さら驚くことでもないだろ』


 勘のいいチーナは、俺の気持ちなんてとっくに気付いているはずだ。

 何なら、俺より早く気付いててもおかしくないくらいだ。


 だがチーナの驚きは、俺が思っていたものとは違っていたらしい。


『そうじゃなくて、今なんだなぁ……って』

『それは……うんまぁ、俺もイルミネーションの前でって思ってたけどさ』


 キョトンと小首を傾げるチーナに、俺は居心地悪そうに答える。


 そして一瞬の間があった後、


『ふふっ』


 急にチーナがクスクスと笑いだした。

 その瞳からはもう、涙の影は微塵も見られない。


『なにがおかしいんだよ。俺は真剣なんだぞ?』

『ごめんごめん。その……泣いてる女の子に告白なんて、ヨリも卑怯な事するんだなって』

『え……はっ!! いや違うんだ!! そんな事考えてないから!!』


 やばい!言われてみれば確かにそうだ!


 チーナにそう言われ慌てて否定するも、客観的に見れば、確かになかなかゲスい事をやってのけた気がする。

 恋愛経験のNASAは宇宙にまで達してしまったらしい。


 ああああぁしまった! 予定に無いことするからああぁ!


 しかしそんな俺を見たチーナは、ついにあははっと笑いだした。


『ごめんね、慌ててるヨリがおかしくて……。でも大丈夫、わかってるよ。ヨリがそんな高度な技使えるわけないもんね。励まそうと思って言ってくれたんでしょ?』

『いやまぁ、それはそうなんだけど……』


 呼吸を整えつつ、誤解していない事を伝えてくれる。


 だがいざ口に出されると、それも少し違う気がしてきた。

 そこまで綺麗な理由ではない気がする。

 なぜこのタイミングだと、思ったのだろうか。




 ああ、そうか。そういうことか。




『どうしたのヨリ? 違うの?』


 チーナはすっかりいつものいたずらっぽさを取り戻した様で、手を自分の後ろに回し、俺の顔を覗き込むように尋ねてきた。


『言っても怒らないか?』

『いろいろとフラグな気はするけど、大丈夫だから言ってみてよ』


 まあこうなったチーナから逃げられるものでもない……か。

 ええいままよ!


 俺は明後日の方角を見ながら、ごにょごにょと答えた。


『ここが、亡くなったお父さんを思い出す辛い場所にされるのが許せなくて、塗り替えてやろうと思いました次第です』


 ……のだと思う。


 対するチーナの反応は、


『そっかそっか。せっかくのデートをお父さん(別の男)に台無しにされて怒ってたんだね。ごめんねヨリ』

『いや確かに男ではあるけども……』


 逆に慰められるような口調。

 俺がめんどくさい奴みたいじゃねぇか。

 こっちは覚悟決めて告白してるってのに、ままならないな……。


『ったく。もう元気になったんなら、いい加減返事をくれよ。泳がせるな』

『そうだね。それでは……』


 コホン、っとチーナはわざとらしく咳払いして、姿勢を正し俺の目を見て口を開く。




 「私も大好きだよ、ヨリ」




 その言葉は、とても流暢な日本語で紡がれた。

 心の底からの言葉だと、そう確信できるほど、真っ直ぐな。


『え、ヨリ……?』


 だがすぐに、チーナの言葉は驚きと共にロシア語に戻った。

 俺が、思わずチーナを抱きしめてしまったからだ。


 ずっとこうしたかった。


 彼女の華奢な背中に腕を回し、細く綺麗な髪に頬を埋める。

 コートを超えて、温もりが伝わってくる。


 喜び、安堵、幸福、様々な感情が一気に湧き上がり、そのまま動けなくなってしまう。

 そんな俺の背中に、チーナも手を回してきた。



 やっと、チーナと恋人になれた。

 これから2人で、幸せになる。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 12月18日(日)

俺 『よう』既読16:08

宮本『どしたの?』16:38

俺 『クリスマスイブさ、結局コックスの奴誘ったのか?』既読16:39

宮本『誘ったけど……断られた』17:09

俺 『お、おぅ……ドンマイ』既読17:18

宮本『お詫びに、みんなで初詣行こうって』17:48

俺 『あ、それ俺も誘われたわ。なら24日暇なんだろ?俺とどっか遊び

   行かねえか?』既読18:40

宮本『え、なんで?』18:42

俺 『いいじゃん。イルミネーションでも見に行こうぜ』既読18:42

俺 『17時に駅前のベンチで待ってるから、気が向いたら来いよ』既読18:42

宮本『多分、行かない』18:45

俺 『気が向いたらでいいからさ』既読18:46

宮本『分かった』18:50



 「はぁ。結局来なかったなぁ……」





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次回から初詣からの三学期編スタート。

ちょっぴりざまぁ要素入れていく予定なのでよろしくです。

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