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日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人 作者:アサヒ

第四章

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64話: シャー

最近更新ペース悪くてすみません。

卒論という名の戦争が本格的に始まってしまいました。

なるべく早く投稿して行きたいとは思っておりますので、ご了承くださいm(_ _)m

 入場ゲートにて、クジをしっかりと外した俺たちは、そのまま館内へ。


 外の光が段々と届かなくなり、水族館特有の薄暗さに変わっていく。


 昔はこの暗くなっていく感覚が苦手で、毎回尻込みしてたっけな。懐かしい。


 順路に沿って、暫く水槽の無い廊下を歩く。

 その壁にも、客のワクワク感を高めるためか魚の絵などが描かれていた。


 いくら入館制限がかかっているとはいえ、周りには沢山のカップルが連れ立って歩いている。


 なるほど。これがクリスマスデートってやつなんだな。


 そしてそんな中でも、チーナの容姿は一際目立つようだ。

 逢い引き中の男達が、チラチラと嫉妬や羨望の眼差しを向けてくるのが分かる。


『まったく……よその女見てんじゃねぇよ。チーナ、ナンパには気をつけろよ』

『え、今日はカップルしかいないから大丈夫なんじゃないの?』

『彼女ですら実地で探す、現地調達のプロがいるかもしれないだろ?』

『どこのスネークよそれ』


 半分冗談を混じえつつ注意しておき、ふふっと笑い合いながら通路を進んで行くと、ようやく開けた部屋にでた。


 その部屋の中心には、上から見下ろせる腰くらいの高さの広い水槽があり、さらに壁に沿って沢山の水槽がならんでいる。


 "サンゴ礁エリア"、とマップに書いてあった通り、どの水槽にもサンゴ礁とそれに因んだ生き物が飼育されているようだ。

 どうやらこの水族館では、エリア毎にテーマが決まっているらしい。


『わぁ! きれい!』

『おま……きれいだな』


 小さく歓声を上げるチーナに、お前の方が綺麗だよと言いかけて……やめる。


 うん。まだここで言わなくてもいいか。

 本番はイルミネーションだしな。


 壁沿いに設置された小さな水槽は、暖色の明かりでほのかに照らされ、幻想的な水の風景が閉じ込めてあるようだ。

 そして同じく、神秘的なまでに美しいチーナが、その風景に顔を寄せ暖かな表情を見せる。


 美しい水槽とチーナをセットで見ると、まるで美術品だ。


 そのまま暫くサンゴ礁エリアを見て回った後、俺は一旦今後の予定を話し合おうと思いチーナに声をかける。


『ところで、さっき言ってたアシカショー、14時かららしいけど、どうする?』

『それは外せないでしょ』

『そうか。じゃあその後のイルカショーとかも見るか?』

『うーん……それはその時考えよう?』


 アシカは外せないのに、イルカは保留なのか。


 チーナの受け答えに妙な違和感を覚えたが、まあいい。今はせっかくのデートを楽しもう。


『ん、そうだな。じゃあ昼飯まで見て回りますか……っとその前に』


 言いつつ、俺はすっと手を伸ばして、チーナの右手を握った。


 えっと一瞬驚くチーナ。


 まあ、俺の方からこんな事するのも珍しいから当然か。

 でも今日は特別な日。


 俺は周りを見渡しながら、チーナに不敵な笑みを浮かべる。


『ここじゃ、こうしてない方が不自然だからな』

『そっか……そうだよね。今日はそういう日だもんね』

『お、おう』


 そういう日……恋人の日。


 俺たちも周りから見たら、カップルに見えているのだろうか。

 見えているといいな。


 そのまま別のエリアを順に回っていく。

 普段見ることの無い海中世界に感動し、生き物を愛でる。


『見てヨリ! クマノミだ』

『ほんとだな。おーい、ちゃんと隠れて無いと撃たれるぞちびっ子』

『サメ……シロワニだ! シャー』

『はははっ。にらめっこは完敗だな』


 うんうん。普通に楽しんでくれてるようで何よりだ。

 サメとガラス越しに威嚇対決をするチーナが可愛い。


 可愛い……




『チーナお前、水族館初めてじゃないな?』

『…………なんのことかな?』




 ふむ、そっかそっか。なら良かった……


『って騙されるか。どう見ても初めて来た感じじゃないし、普通に詳しいじゃねえか』

『やめれ、ほっぺはなしれ』


 白々しく嘘をつくチーナの頬を、むんずと両手で挟んでこちらを向かせる。もちろん痛く無い程度にだ。

 さっきからリアクションが初見のそれじゃないし、魚にも妙に詳しい。

 さすがにこれを、人生初水族館だと言われて納得はできないだろう。


『まったく、その程度の嘘が見破れ無いとでも思ったのか?なんで初めての振りしてたんだ?』

『だって、せっかくヨリが考えて連れて来てくれたから……』


 申し訳無さと恥ずかしさで少し顔を赤らめるチーナ。

 まあ俺を思ってくれての嘘だし、責めるつもりはないけどな。


『そんな気遣いしなくっても、普通に楽しんでくれたら俺は満足だから、変な隠し事すんなよ』

『うん……わかった。ちゃんと楽しいから、大丈夫だよ』


 やれやれと苦笑いしつつ、チーナの頭にぽんと手を置き、軽く撫でる。


 水槽のサメが、惚気か? シャー! っと威嚇してくるなか、チーナも口端を上げて微笑んだ。


『そろそろ、昼飯にするか』

『そうだね』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 時刻は12時半。

 館内のレストランの、ペンギンエリアが一望できる窓際の席。

 そこで今俺たちは……試されていた。


 テーブルの真ん中に置かれたオレンジジュース、そこから二股に伸びる不自然なストローに。


『うーむ……うーむ』

『何をそんなに悩むのタマネギ戦士さん』

『いやこれさ、普通に店側の意図通りに使ったら負けな気がして』

『だからって無理に大喜利しなくても……』


 そう、カップルイベントの魔の手はレストランにも伸びていた。


 こちらサービスになります〜っというスタッフさんのニヤニヤ顔が、リリーのそれとダブって少し腹立たしい。


『まあせっかくなんだし、ほら、飲もう?』

『日和ってねぇよ』


 そう、照れてなんてしない。


 たかがカップル用ストローなど、毎日頬を擦り寄せてる俺たちにとって、なんてことはな……ちっかぁ!顔ちっかぁ!

 いかんこれ、チークキスと違って顔が正面に見える分めちゃくちゃ近く感じる!


 チーナに急かされるまま、勢いでストローに口を付けると、同じくストローをくわえるチーナの唇がゼロ距離で視界に映った。

 その妙な色っぽさから、1口飲んだだけで俺は直ぐに顔を離して横を向いてしまった。


 結局なんのジュースだったんだ?

 リンゴジュース?  あ、オレンジ色だわ。


『これ……結構恥ずかしいね……』


 見ると、チーナも顔を上げて赤面していた。



 沈黙。



 まずい、このままじゃ変な空気になる!

 スタッフさんがニヤニヤ見てる気がする!

 ここは俺の大喜利で、場を和ませよう。


『ええっと、このストローって、NORゲートに似てるよな』

『入出力違うけどね』




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なんとなく、チーナがサメとシャーってやってる様子が思い浮かんだ

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