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日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人 作者:アサヒ

第四章

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60話: 頑張れ初恋

 文化祭も終わって、12月も残り半分を切った。


 高校での今年の行事は特に残っておらず、後はもう冬休みを楽しむだけ。

 そしてこの時期、高校生のホットトピックと言えばもちろんこれである。


「なあ、クリスマスどうする?」

「デートに決まってるだろ!」

「まず彼女作らねぇとな」


 そう。カップルの祭典、クリスマスだ。


 長期休暇を目前にして、耳にするのはこのような会話ばかり。

 実際にうちのクラスでも、これを機に付き合い始めた奴らが何人かいるらしい。

 こう考えると、夏と冬にカップルが増えると言うのは事実なのだろう。


 そして今は掃除時間。

 俺の担当は理科実験室で、細井と藤田の計3人で取り組んでいる。

 ちなみに藤田とは、林間学校で同じ班だった黒髪メガネの女子だ。


 それぞれの役割を全うしつつ、いつものように細井主導で雑談を交わされる。


「藤田はやっぱり、クリスマスは彼氏とデートすんの?」

「そうね。せっかくの特別な日だし、特に用事もないしね」

「いいよなぁ。藤田ってクールに見えてしっかり青春してるよなぁ」


 ゴシップ大好きな細井が持ち出す話題は、もちろんクリスマスについて。

 そしてその矛先は、俺にも向けられた。


「そんで、かがコックスは?」

「流暢に言い直せるくらいならいい加減覚えろよ」


 藤田の返答が予想通りでつまらなかったのか、妙に期待に満ちた目を向けてくる細井。

 全く、人の恋路をなんだと思ってるんだこいつは。


「なんで教えなきゃならん」

「いいじゃねえか今更だろ。チーナちゃんと過ごすのか?もしかして、文化祭の時一緒だった銀髪美少女?」

「だからあれは妹だって……たく。クリスマスは義父(オリバー)さんの家でパーティするから、それに参加するつもりだ」

「さすがアメリカン。ホームパーティってマジでやるんだな。で、イブは?」


「24日は……チーナを誘おうと思ってる」

「「え、まだ誘ってなかったの!?」」

「藤田まで!?」


 うそだろ。クリスマスまで1週間以上あるのに、世間の方々はもう約束取り付けてるってのか?

 はっや!


 俺の驚愕の表情を見た藤田がはぁっとため息をつきつつ、忠告でもするような様子で話を進めてきた。


「ぼさっとしてると、クリスティーナちゃん他の人と約束しちゃうかもしれないわよ。この間だって、後輩の男の子に誘われてるとこ見ちゃったし」

「まじ……か」

「まあ断ったみたいだけどね」


 一瞬頭が真っ白になるが、チーナが断ったと聞いてひとまず安心する。

 そうか、そんなにも事態は切迫していたんだな。


「そうだぞかコックス。2年の奴らはお前が怖くて手出さないけど、先輩や後輩は時々チーナちゃんに声掛けてるからな。部活の勧誘にかこつけたり、ストレートに告白したやつもいるらしいぞ」

「告白だと!俺そんなとこ見てねぇぞ!」

「あなたがいない時を狙ってるからよ」


 まじかよ……っと俺は自分の情弱さを悲観する。

 確かに、いつもチーナのそばにいるから大丈夫だと俺は油断していたのかもしれない。



 よし決めた。今日中にチーナを誘おう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 そしてバイトが終わって、夜。

 いつものようにチーナと二人で、俺の部屋で夕食を食べる。


 今日は俺の作ったハンバーグ。

 別に話し合った訳ではないが、なんとなくバイトが早く終わった方が夕食を作るシステムになっている。


『今日のバイトはどうだった?』

『んー、別に重要な会議って訳でもなかったし、気楽だったな。チーナは?』

『聞いて驚け! ちょっとだけ事務の受付を任されました!』

『へぇ。やるじゃねえか』


 食事をしながら交わす、たわいのない世間話。

 俺の口真似をしつつ、嬉しそうにVサインを掲げるチーナが今日も可愛い。


 さあ、クリスマスの話を出すなら、イレギュラーの入らない今がベストだ。

 やべえ、緊張してきた……。


 正直なところ、割と自信はあったりする。

 今までの事を考えると、チーナが俺に好意を持ってくれている可能性は、あると思う。

 だがそんな勘違いから告白して撃沈……なんて話もよくあるらしい。


 そう、実際にあるらしい。大事な事だから2回言ったぞ。


 そしてそんな高度な判断が、恋愛初心者の俺に出来るはずもない。

 だからこそ1度遊びに誘うことで、色々見えてくるはずだ。

 自然にだ、自然に行くぞ〜。


 俺は雑談の流れを崩さないように、チーナに予定を取り付けるべく話を切り出した。


『あの……さ、チーナ』

『どうしたの、改まって?』

『…………』


 俺の言葉を聞いて小首を傾げるチーナ。


 うん、どもった。極めて不自然になった。

 まあいい、こう言った事に慣れていないのはもはや仕方ない。

 ドンマイ俺!


 俺は自分を慰めつつ心中で深呼吸すると、気を取り直して次の言葉を紡いだ。


 気後れしてしまわないよう、一息に言い切ろう!


『24日どこか2人で遊びに行かないか!』

『いいよ。どこに行く?』

『もちろん忙しいなら……ん?今なんて?』


 予想外の即答に、うっかり聞き逃してしまう俺。


 仕方ないじゃないか……明確なデートに誘うなんて初めてなんだ。

 心の余裕がねえんだよ!


『もぅ……いいよって言ったの。クリスマス、2人で遊びに行こ?』

『え……いいのか!?』

『そっちが誘ったのに何言ってるの』

『いや、そうだな。すまん』


 緊張した……ホッとした……嬉しい……よっしゃああ!


 返事を聞くまでめちゃくちゃ不安だった事もあり、すんなりOKをもらって有頂天になった俺は、心中でガッツポーズを掲げる。




 そのせいで、滅多に見れないチーナのにやけ顔を見損ねてしまった。





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最近リアルが忙しくて更新頻度悪くなってます。ごめんなさいm(_ _)m

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