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日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人 作者:アサヒ

第四章

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58話: 第5の○○○○

 俺たちの様子を見て、カップルが勤務中にイチャイチャしてるとでも思ったのか、ちびっこ供は気を遣って順路の先へ。


 しまった油断した! 


 一般の小学生がミスコンなんて楽しめる訳が無い。

 そんな中ガラガラのお化け屋敷なんて見つけたら、遊びたくもなるだろう。


 見ると、チーナも赤面してプルプルしていた。

 うん、恥ずかしかったね。だからって俺の袖掴んでたら同じ事だぞ?


 とは言え、よくよく考えたら見られて困るという訳でも無いのだが、なんとなく過剰に焦ってしまった。

 むしろ俺は、その事の方が恥ずかしい。


 それを紛らわすように、俺たちはぎこちない会話を捻出する。


『ええっと……次の客、こないかな〜』

『そ、そうだね……』

『『アハハhaha……』


「「「ぎゃああああ!!」」」


 しかして、次の客は意外にも早くやって来た。順路の先から。


「助けて、助けて足りない兄ちゃん!!」

「さっきのちびっこたち。どうした、逆走したら危ないぞ」


 そう。不気味に装飾された順路の先から逆走して来たのは、さっきのちびっこ三人衆。

 薄暗くても分かるほど顔を真っ青にして、慌てて逃げ帰っている。


「この先の担当は、落武者役の総司か……なあちびっこ。次のとこにいた悪魔が何かしたのか?」


「目が……やばかった」

「やべえ、あの落武者本物だったって」

「うえええん。怖かったよおお」


 ああ、うん。あいつ人相悪いからなあ……。

 てか俺のことも怖がれよ。なんだよ足りない兄ちゃんて……。


「えっと、大丈夫? こけたり、してない?」


 そこへ落ち着いたチーナが近づいて来て、子供たちに優しく声をかけた。


「こ、こけてねぇよ……大丈夫だって」

「べ、別にちょっとびっくりしただけだし……」

「そっか。よかった」


 チーナの美貌は、少年すらもタジタジにさせた。


「にしても、暗いんだから走っちゃダメだろう? 逆走したら危ないぞ」

「「「ごめんなさい……」」」


 他に客がいなかったからいいようなものの、この暗闇で突飛な動きはとても危ない。

 その事を軽く注意するが、とても礼儀正しい子達のようなので、この位でいいだろう。

 多分に、子供嫌いな総司が本気出したのも悪い。


「よし、次の落武者は大笑いして通り抜ければ大丈夫だからな。気をつけて行けよ」

「兄ちゃんも、人目を気にした方がいいぜ!」

「……おう」


 そうして送り出そうとした時、3人の内唯一の女児が、おもむろにチーナに声をかけてきた。


「あ、待ってください。綺麗なおねえさん、最後にいいですか?」

「え、わたし? どう……したの?」


 お化け屋敷だというのに、こんなに和気あいあいとしていいのかと思わないでもないが、まあいいか。


「お姉さん、どこの国の人ですか? すっごく綺麗ですね! さっきも綺麗な髪の外国人さんを見たんだけど、お姉さんの妹ですか?」


 実に子供らしく、キラキラした視線をチーナに送る少女。

 見た感じ、外国人風の美に憧れているのだろうか。


「えっと、ありがとう。私はロシア出身、だよ。」


 チーナは日本文化に合わせた謙虚な振る舞いを習得した。


「Mm……。ところで、私に妹はいないん、だけど、綺麗な髪の人って?」


 照れたチーナが分かりやすく話題を変えにかかる。


 確かにチーナは一人っ子だし、綺麗な髪と言うだけで妹かと聞くのはなかなかな飛躍だ。

 この辺りは在日米軍の家族も多く外国人など珍しくも無い。

 しかしチーナと比肩出来るほどの美少女となるとそうはいないだろう。


 そう考えると、少し気になる話ではあった。

 チーナにライバルなんていてはならぬ。


「え、妹さんじゃないんですか? すっごく綺麗な人だったのに……あ、そうあの人!」


 そこでなんと、少女が俺たちの後ろを指さしてきた。


 いやいやオリバーさんじゃあるまいし、噂をすればなんて事そうそう起きるわけ無いだろう。


 そう思いつつも気になったので振り返り、その人物を確認する。

 するとそこには、確かに目を見張るような綺麗な銀髪をした少女がいた。

 そして彼女は、俺のよく知る人物だった。


「ごめんお嬢ちゃん。やっぱり妹だったわ」

「ですよね!? 私の目はごまかせ……」



「……俺の」



「お兄さんの妹!?」


 彼女の名はリリー・コックス。

 ドイツ出身のエマの実の妹であり、オリバーさんの養子。


 そして数日前に、俺の義理の妹となった銀髪碧眼の少女である。

 白いロングワンピースに黒のジャケットと言う服装が、白人の中でも特に色素の薄い彼女の美しさを神秘的に際立たせている。


「遊びにきたよ、伊織兄さん!」


 と言っても彼女は、ドイツより日本にいた時間の方がよっぽど長いのだが。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「2人とも、何か食べたい物あるか?」

「じゃあ、私たこ焼きで」

『私は、うどんがいいな』

「見た目の割に日本に生きてるよな、お前ら」


 俺はリリーとチーナという、外人美少女2人を連れて出店を回っていく。


 あの後すぐに宮本や細井と交代し、俺とチーナは休憩時間をもらった。

 そこで遅めの昼食を、リリーを混じえて3人で摂る事にしたところだ。


『改めてチーナ、彼女はリリー。俺の妹だ』


 人気の無い場所を見つけてテーブルに腰をかけつつ、リリーをチーナに紹介する。

 なんだかんだ2人は初対面。

 リリーも自己紹介する流れだと感じ取ったのか、自らチーナに挨拶をした。


「初めましてクリスティーナさん。私はリリー・コックス。ドイツ出身です。兄さんから聞いてた通り、すっごく可愛いですね!」

「クリスティーナ・クルニコワ……だよ。えっと、リリーちゃんこそ、凄く綺麗だね」


 お互い名刺交換のように褒め合う2人。

 ただ2人とも、規格外の美少女なのは間違いない。

 せっかく人気が無いところを見つけたのに、それでも凄い視線だ。


 遠くからでも目立つリリーの銀髪。それによって目に留まる美少女2人。


 凄まじい嫉妬のオーラを感じる。

 まあ傍から見れば両手に花な訳だし、仕方ないだろう。


「ところでリリー、こんなとこで遊んでていいのか? 高校受験もうすぐだろ?」

「1日くらいだいじょーぶ。それに、受験会場の下見は大事でしょ〜?」

「そういや、うちの高校受けるんだっけか」

「うん! 制服も可愛いしね〜」


 ニコニコと上機嫌に話すリリー。

 クール寄りなチーナと違い、リリーはかなり明るい性格だ。

 エマとセットの時は結構騒がしかったりする。


 今も彼女はとても楽しそうに、チーナに話を振った。


「ところでチーナ先輩?」

「せんぱぃ……あ、先輩か。どうしたの?」


 聞きなれない単語の意味をなんとか思い出すチーナ。偉いぞ。


 しかし続くリリーの言葉を聞いて、俺は心臓が止まった。


「兄さんとは、今どうなんですか?」


 にっこにこで尋ねるリリー。

 その様子は、完全に日本人中学生のそれだった。



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第5のコックス。

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