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日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人 作者:アサヒ

第三章: 家族

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55話: エピローグ 〜そろそろ気づく事を許そう〜

前回のあらすじ。


ヽ(゜∀゜)メ(゜∀゜)メ(゜∀゜)ノ

 休日。


 俺は久しぶりに、父さんの墓参りに来ていた。

 墓石に水をかけ、軽く汚れを落とす。

 12月の寒さが身に染みる中、軽く墓石を掃除して、花を差し替え、手を合わせる。


 今日は、一連の出来事の報告に来たのだ。


「全部終わったよ父さん。俺はもう、基地司令官の息子だ、凄いだろ? "あいつ"が俺を恨む理由も知った。父さん、意外とやんちゃしてたんだな。女見る目無さすぎだろ」


 思えば、父さんが離婚しなかった理由は"サキ"の引退に責任を感じたからなのだろう。

 何があったか知らないけど、恋愛禁止の女と子供作るなんて、なかなかのワルだ。


「まあ、俺は優しくて完璧な父さんしか知らないから責める気持ちは起きないし、父さんが何考えてたかも分かんないんだけどな。でも、俺はあいつと家族でいることには耐えられなかったよ。許してくれよな」


 俺は今幸せだ。

 きっと、今まで取りこぼして来た幸せも全部取り返せる。

 だからもう、心配しないでくれ。


 そう語りかけ、最後に、また来るよ……っと言い残して俺は立ち上がった。


『もういいの?』

『ああ、十分だ。帰ろう』


 後ろには、冬着のチーナ。

 黒のタイツの上にデニムのショートパンツ、上はコートといった出で立ちだ。


 墓参りに一緒に行きたいと言うので連れてきた。

 報告ついでに、父さんにチーナの顔を見せておこうと思ったのだ。


 サキなんて比べ物にならないくらいの美少女を父さんに見せびらかし、線香と数珠を入れたケースをバッグにしまうと、2人で帰路につく。

 基地まではそう遠くないので、散歩がてら今日は徒歩だ。

 2人並んで、綺麗に整備された堤防敷を川を眺めながら歩いていく。


『すっかり寒くなったな』

『こんなの、まだまだ全然だよ』

『モスクワと比べんな。うう、さむ』


 こんなに寒いなら、今年は奮発して電熱ウェア買っておくか。バイク乗ったら凍死しそうだ。


 そんな事を考えていると、不意に左手がキュッと何かに包まれた。

 チーナが俺の手を握ってきたのだ。


『どう? これであったかいでしょ?』


 いたずらっぽく微笑むチーナに軽く心不全を起こしつつ、俺も思わず微笑が零れる。


『別に、俺と同じくらいじゃねぇか』

『え〜。私の方があったかいよ』


 不満そうに俺の手をブンブンと揺するチーナ。

 そして手を繋いだまま、俺たちはまた歩き出した。


 冷たい風が頬を撫でる堤防敷。2つ並んだ猫柄のペアブレスレット。


 どうしてだろう。俺の心は今、不思議なほど穏やかだ。


『そう言えばチーナ』

『なに?』

『チーナはさ、アメリカに住んでみたいとか、思うか?』


 だから俺は、前々から気になっていた事をチーナに尋ねることにした。

 何故か、今がその時だと感じた。


『どうしてそんな事を聞くの?』

『いや、別に理由はないけど。何となく気になって』


 漠然と浮かんだ問。だが最近、この答えがどうも気になる。

 聞いたからといって、別に何がどうなるって訳でもないのに。


 そんな俺の様子に首を傾げつつも、チーナはすぐに答えを口にした。


『忘れてるかもだけど、こう見えて私アメリカ人だよ? むしろ日本に住んでる方が変じゃない?』

『そういやそうだな』


 穏やかな表情を浮かべつつ話すチーナに、何故か俺は凄くほっとする。


 チーナはアメリカに住んでもいいと言った。

 その返事を、俺は望んでいた気がする。

 なぜ? 理由はもう、分かっているような気がした。


『私たちってさ、不思議な似た者同士だよね』

『どうして?』

『もともと違う国に産まれたのに、親を亡くして結局アメリカ人になっちゃったこと。こんな経歴の人そうそういないのにね』

『言われてみれば、確かにな』


 ロシアに産まれ、アメリカ人に引き取られ日本に住むチーナ。

 日本に産まれ、日本にいながらアメリカ人の子になって日本に住み続ける俺。


 チーナの言う通り、こんな2人組は滅多にいないだろうな。


『でも、俺はこれが幸せだって思うよ。もう永遠に、家族の温もりなんて感じられないと思ってたから。だからチーナ……』


 そして俺は、チーナの目をしっかりと見つめる。


『ありがとな。あの時、オリバーさんに伝えてくれて。俺の為に、俺の意思を否定してくれて』

『うん。どういたしまして』


 チーナのおかげで、俺は家族を捨てることが出来た。

 チーナのおかげで、俺は新しい家族が出来た。

 そしてチーナのおかげで、俺は夢を叶えることが出来る。


 思えば彼女に出会ってから、俺の人生は大きく変わったな。

 訓練以外の時間も毎日楽しいし、友人も増えた。

 俺の今は、チーナが居なくては成り立たないだろう。


 そこまで考えて、俺はついに、自分の気持ちに気づいた。

 いや、"気づく事を許した"の方が正しいだろう。

 詩織や元母の事をどうにかするまで、その気持ちを認める訳にはいかなかったから。


 だが全ての障害が無くなった今、もう自分を誤魔化す必要は無い。




 俺は、チーナが好きだ。




 俺は繋いだ手を、そのまますっと自分のコートのポケットに入れる。


『よ、ヨリ!? 何してるのかな!!!?』

『何って、この方があったかいだろ?』


 突然の行動に赤面して驚くチーナに、いつものお返しだと精一杯いたずらっぽく笑いかけてみる。


 ばくばくばくばく!


 俺の心臓の音が伝わってないか心配だ。

 自分からこんな事するのって、されるのと同じくらい緊張するな……。

 でもいい。これからは、俺からガンガン攻めてやる!

 俺が告白するその日までに、絶対惚れさせてやる!


『覚悟しろよチーナ。俺、本気だすから』

『何の事か分からないけど……いいよ。受けてたつ』




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ついに3章完結です!ようやく一つ山を越えた感じがします。

思えば主人公の国籍が変わるって、なかなかにシュールですね笑


次章、


伊織くんは告りたい。脳筋たちの恋愛パワー(バトル)


また、次回更新は数日遅れます。ご了承ください。

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