――山中さんは、日本で新型コロナウイルスの感染者がまだほとんど報告されていないころから、積極的に警鐘を鳴らしてこられました。2020年3月には「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」というホームページも開設された。危機感をお持ちになったきっかけは何だったんですか?
最初から心配していたわけではありません。2月上旬、サンフランシスコで友人のウイルス学者の講演を聴く機会がありました。その講演の締めくくりで、彼がこう言ったんです。新型コロナに注意する必要があるが、もっと心配なのはインフルエンザウイルスである、と。
――たしかにアメリカでは毎年数万人がインフルエンザで亡くなっていますね。
2020年の2月には、前年10月以降の死者が1万人を超えていました。それに比べれば、当時は新型コロナの感染で亡くなった人はそれほど多くなかったのです。だから彼は新型コロナについて注意すべきだが、恐れる必要はないというメッセージを発したわけです。
――しかし、現時点でアメリカだけで、新型コロナでの死者が25万人を超える事態に及びました。