店名公表覚悟の飲食店 大阪知事は「厳格に判断」

産経ニュース / 2021年1月18日 21時27分

午後7時過ぎの大阪・ミナミの繁華街は、人通りは少なくなっていた=18日、大阪市中央区(沢野貴信撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府の緊急事態宣言の対象となっている11都府県は飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請している。応じない場合は感染拡大防止のため、法律に基づくより強い要請や店名公表などの措置を取ることができるとはいえ、経営難にあえぐ飲食店にとっては受け入れがたい話であり、各知事は難しい判断を迫られそうだ。

 飲食店への時短要請は、新型インフルエンザ等対策特別措置法や政府の基本的対処方針に基づく。

 緊急事態宣言下では特措法45条に基づき、感染の蔓延(まんえん)を防ぐとともに国民の生命や健康を守る上で必要と認めるときに、より強い要請や指示を出すことが可能だ。その場合は応じない店の名前を公表しなければならない。

 幅広い事業者に休業を要請した昨春の緊急事態宣言で、大阪府は、応じないパチンコ店に対するより強い要請と店名公表に踏み切ったが、飲食店は生活維持に必要な施設として、時短への協力を要請。45条の要請も店名公表もしなかった。

 45条の趣旨について、吉村洋文知事は今月14日、記者団に「処罰ではない。感染が広がる可能性が高いと判断すれば個別に要請し、(店名を)公表する」と説明。「要請に応じなければ即公表することまでは現時点で考えていない」と慎重な姿勢を示した。

 要請に応じた飲食店には1日6万円の協力金が払われる。府は保健所などから寄せられる情報をもとに、店の営業形態や感染症対策の実施状況を確認し、要請への理解と協力を粘り強く求める方針だ。

 一方、飲食店側にも事情はある。大阪市北区の居酒屋はこれまで要請に応じてきたが、宣言発令後は時短せず、午前1時半まで営業すると決めた。男性店主(42)は「店を開けないと食べていけない。時短に協力している店もたくさんあるので、公表は覚悟している。背に腹はかえられない」と訴えた。

 首都圏を中心に飲食店43店を展開する「グローバルダイニング」(東京)は一部の店舗を除き、通常営業を続ける。長谷川耕造社長は同社ホームページで「午後8時までの営業では事業や雇用の維持は無理。今の行政からの協力金やサポートでは時短要請に応えられない」とコメントした。

 吉村氏は「経営がしんどいからやります、というのは正当な理由になるのか。楽なところはどこもない」と主張。「感染を抑止することを前提に、厳格に判断されるべきだ」としている。

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