ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)推進に向けた動きは、近年日本でも盛んですが、それでもなおジェンダー・ギャップは広がり続けています。世界が2020年国際女性デーを祝うこの時こそ、日本が遅れをとっている理由は何か、そして、この先10年、ジェンダー平等を目指しどう前進するべきかを考える良い機会です。
世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ(世界男女格差)レポート2020で、日本のジェンダー・パリティの指数は153か国中121位となっています。前年の110位から順位を11下げており、最初に調査が行われた2006年に80位であったのと比較すると、41ランク落ちたことになります。現時点での順位を元にすると、日本のジェンダー・ギャップは先進国最大です。
日本政府は近年、ジェンダー・パリティ推進の努力を進めています。安倍首相は2013年、社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%とするという「ウーマノミクス戦略」を提唱、「女性が輝く社会」を実現すると公約しました。
しかしながら、現実は公約通りに進展しておらず、政府は2015年に目標を修正。国家公務員における女性の割合を7%、地方公務員と民間企業については15%としました。
なぜ日本では、これほどジェンダー・ギャップが根強いのでしょうか。
格差改善における重要な領域が、政治参加度です。政治参画の指数で、日本は現在、世界最低の10か国のうちに入っています。日本では、女性が元首になったことはなく、女性議員の割合は10%と世界最低の水準で、先進国の平均を20%下回ります。さらに、内閣18人中女性閣僚はたった1人と、ここ数年のうちに低下しています。
日本はまた、経済的なジェンダー・ギャップについても、大幅な是正はできていません。女性役員・管理職は全体の15%に過ぎず、女性の所得は平均すると男性の約半分です。
こうした経済格差の理由のひとつとして、日本の女性が無報酬の家庭内労働に費やす時間が、男性の4倍以上であることが挙げられます。これにより、有給の仕事に従事する時間が減ったり、労働時間を増やすのが困難になったりするため、キャリア形成や昇進の機会が奪われていると考えられます。
加えて、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、性別による賃金格差が韓国に次いで2番目に大きくなっています。
また、ジャパンタイムズでも報道されましたが、女性が指導的地位に立つことへの否定的な見方が文化的に根付いているのも、経済面での向上が平等にならない理由のひとつとなっています。カンターとウーマン・ポリティカル・リーダーズ(WPL)の2018年の研究によると、大企業のトップが女性であることに好意的な人の割合は米国では63%であったのに対し、日本ではわずか24%でした。
伝統的なジェンダー役割に基づいた無意識の偏見や社会の期待によって、女性が行動をためらったり、ハラスメントなどの職場での問題が起きたりすることも多々あります。
では、日本はどうすればこうした障壁を乗り越え、ジェンダー・パリティを支援することができるのでしょうか。
それには、政治参画を向上させることが鍵となります。政治的な意思決定に携わる女性の数が増えれば、より多くの女性がそれをロールモデルとして、政治や指導的役割に参入する道を開くことになるでしょう。政権に女性が占める割合が高い国では、企業のリーダーシップに女性がいる率も高いということが分かっています。
クオータ制や賃金平等目標、男女双方を支援する新たな家族政策といった、経済全体のパリティを高めるための政策や補助金も役立つ方法で、こういった支援に対する理解が父親と母親に同じように広がることも重要です。
企業は柔軟かつ家庭にやさしい方針や、多様性の高い雇用と昇進を率先して行い、インクルーシブな職場を率先して作らなければなりません。賃金の平等に加えて、キャリア形成や昇進の機会が女性にも与えられるような取り組みの実施を約束するべきです。
これらは、長い間常識となっていながらも、実践されていなかったか、効果的とは言えない方法でしかなされてきませんでした。どのような戦略であれば、平等がもっと加速するのでしょうか。まず、女性が需要の高いスキルを身に着けられるような措置に、リーダーたちが目を向けることです。第四次産業革命による経済や職場環境の変革で、既存の仕事で必要とされているコアスキルの42%は、2022年には変化していると予想されています。政財界のリーダーは、より多くの女性にリスキリング(再訓練)、スキルアップ、そして教育の機会を与え、データ、AI 、エンジニアリング、クラウドコンピューティングなど、新しい経済において成長著しい分野での役割を果たせるようにしていくべきです。
企業において女性の地位向上を奨励することは、金銭的な利益にもつながります。調査によれば多様性に富んだ会社ほど長期的な業績が良く、ジェンダー・パリティを経済で実現すると日本のGDPは5500億ドル増加すると推定されています。
日本は今こそ、女性が力を持ち、新しい経済でいきいきと働ける、前向きでインクルーシブな目標や施策を取り入れる時です。格差を減らしてジェンダー平等の恩恵を実現していくには、それが不可欠なのです。
*本記事は、The Japan Timesの記事の和訳を転載したものです。