大相撲の立行司の式守伊之助=本名・今岡英樹さん(61)=は今月上旬、所属する高田川部屋の力士の色紙を県大阪事務所に贈った。関西県人会の田崎公司副会長と親交が深いことや、今岡さんの両親がかつて会津坂下町に住んでいた縁から福島の復興を後押ししたいと寄せたという。
今岡さんは島根県出身で四十年以上、土俵に立ち続けている。五月中旬、高田川部屋では二十八歳の力士が新型コロナウイルスに感染し亡くなった。直後、今岡さんは脳梗塞で倒れ、一時歩行が困難な状態にまで陥ったという。かわいがっていた若手力士が亡くなった悲しみや入院で気をふさぐ日々だったが、諦めずにリハビリを重ね行司への復帰を果たした。
「自身が苦しみから立ち直った気持ちを復興に向けて頑張る人々に届けたい」。入院生活の中でこうした思いが生まれ、なじみ深い福島に色紙を贈ろうと決めた。一枚は高田川部屋の幕内力士の竜電関と輝関の手形が押されている。もう一枚は行司が書く番付表をイメージし、横綱の名前を記した。今岡さんは「諦めずに病気や悲しみから立ち直ることができた。前に進む福島の力になってほしい」と願っている。県大阪事務所の山口祥則所長と田崎副会長は「福島に寄り添う気持ちがうれしい」と話している。