ラグビー天理大、コロナ下の活動休止越え関西5連覇
今季のラグビー関西大学リーグは天理大が5年連続12度目の優勝を果たした。8月に新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生し、活動が大幅に制限される困難を乗り越えての優勝とあって、選手らの喜びはひとしおだった。
コロナ禍で開幕が11月にずれ込んだ上に開催期間が短縮され、8チームが総当たりではなく4チームずつの2グループに分かれて戦った今季の関西大学リーグ。各グループで1位になった天理大と同志社大が11月29日、京都・宝が池球技場での優勝決定戦に臨んだ。
天理大は前半10分、ラインアウトからFWでゴールラインに迫り、WTBマナセ・ハビリが先制のトライを奪う。以後もFWで相手に圧力をかけ、前半で26-0と大きくリードした。
リーグ屈指のバックスを擁する同志社大を封じるのに意識したのが「自分たちからしっかり体を当てて、FWで圧倒すること」(フランカーの松岡大和主将)。同志社大がボールを持つ中でできたラックにFWが激しく絡んで相手の球出しを阻み、反則を誘発。走力と突破力に優れる同志社大の山口楓斗、和田悠一郎の両WTBらにたびたび防御ラインを破られながらも、捕捉後の「ジャッカル」でピンチの芽を摘む好守が光った。
ラインアウトとスクラムも制圧し、54-21で勝利。セットプレーに自信を持つチームが今季欲してきたモールでのトライも挙げ、まさにFW戦での圧倒ぶりから遂げた5連覇だった。
もっとも夏の時点で、秋に歓喜の時を迎えられると想像した選手がどれだけいただろうか。8月にラグビー部員のコロナ感染が判明、9月上旬までに62人が陽性判定された。168人の部員全員が寮に住んでいたことから、奈良県は寮生活や練習で感染が広がったとの見方を表した。
当初10月に予定されていた開幕に向け、練習の強度を上げているさなかのクラスター発生で活動は休止。9月に全体練習が再開しても、多くの部員が「今年は練習だけで終わるのでは」とリーグ戦の中止を覚悟した。SNS(交流サイト)などに載った非難のコメントにも胸を痛める中で支えになったのが、心ない声をかき消すほど寄せられた激励の数々。「いろんな人に助けられているのを再認識できた」とSO松永拓朗は話す。
関西勢ではリーグ戦の上位3チームに与えられる全国大学選手権の切符を手にした天理大は、12月19日の準々決勝(花園)から登場する。これまで支えてくれた人々への恩返しは「感謝の気持ちだけでは足りない。日本一になって恩返ししたい」と松岡主将。明日をも知れぬ日々を乗り越えた強さが、悲願の初優勝に向かう原動力になるだろう。
(合六謙二)