感染防止と経済の両立議論 未来投資会議
政府は30日、首相官邸で成長戦略を議論する未来投資会議(議長・安倍晋三首相)を開いた。政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長ら感染症の専門家や労使の代表を新たなメンバーに加えた。新型コロナの感染拡大防止と経済活動の再開を両立させる社会像を議論する。
検討項目のたたき台を示し、テレワークなどを定着させると明記した。働く場所の制約をなくし、東京一極集中を是正する方策を話し合う。
デジタル技術で社会の変革を促すデジタルトランスフォーメーション(DX)や経済安全保障もテーマになる。年内に中間報告をまとめ2021年夏に最終報告する。
首相は同日の会議で「感染拡大をできるだけ抑えながら、経済社会活動をしっかりと両立する」と述べた。「新たな日常に向けて成長戦略も検討を進める必要がある。未来に向けた社会変革の契機とする」と語った。
新たなメンバーは尾身氏のほかに国立感染症研究所長の脇田隆字氏、連合の神津里季生(りきお)会長らが出席した。
感染症と異なる医療分野の専門家として東京慈恵会医科大の大木隆生教授も参加した。首相は6月に首相官邸で大木氏と会い、医療提供体制などを巡り意見交換した。感染防止を重視する専門家以外からも幅広く意見を聞く狙いがある。
大木氏は会議で「新型コロナの封じ込めから転換し、共生を目指すべきだ」との見解を示した。
未来投資会議は安倍政権が成長戦略を議論する場として16年に設置した。首相は6月の記者会見で、会議を拡充して「コロナの時代、その先の未来を見据えながら新たな国家像を大胆に構想する」と表明した。
首相は感染拡大の防止を重視し、4月に緊急事態宣言を発令した。5月に宣言を解除してからは徐々に経済活動の水準を引き上げる方針にかじを切った。
足元では7月29日に1日当たりの新規感染者数が初めて1000人を超した。大都市に限らず全国で感染が再拡大している。首相は一気に経済活動の制限を緩和できないジレンマを抱える。尾身氏は会議後、記者団に「個人の自由と公共の利益はしばしば衝突を起こす。国民的なコンセンサスを作る必要がある」と話した。