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「三つ子の魂百まで」は間違い? 人の性格は60年間で劇的に変わるという研究結果

1947年、14歳の男女を対象に行われた性格診断調査から60年が経ったいま、同じ調査対象に対して診断が行われた。その結果は、人がその一生においてまったくの別人になりうるという可能性を示唆するものだった。

現在の自分の性格に満足している人も、そうではない人も、どうか安心して欲しい。どうやら60年という人生の荒波は、人の性格を容易に変えてしまうほどの威力があるらしい。

人間の一生において、個人の性格がどう移り変わるのかを調査した、英エジンバラ大学とリバプール・ジョン・ムアーズ大学の共同研究では、14歳の思春期と77歳の老年期の性格を比較すると、個人は全くの別人になり得るという研究結果が発表されたのだ。これは従来の研究結果を覆すものだ。

時を遡ること1947年、かつて英国では、少年少女を対象とした大規模な性格診断調査が実施されたことがあった。その当時のコホート研究として集められたサブサンプルは、11歳の少年少女1,208人。そして1950年、14歳になった彼らに対する再調査において、彼らの教師から見た性格が6つのカテゴリ(自信、忍耐力、気分の安定性、慎重さ、独創性、成功欲)に分けて記録された。

それから60年以上経った2013年、エジンバラ大学の研究者らは、1,208人のうち635人とのコンタクトに成功。そのうちの174人(男性82人、女性92人)が再び同性格診断の実施を承諾した。平均年齢は77.6歳。彼らは6つのカテゴリに分けられた自身の性格を自己診断し、また、彼らの配偶者や子供、または近しい友人などから見た、被験者の性格診断を行ってもらった。

この2回に渡る縦断的性格診断において、ただひとつの違いとは、老年期にある被験者にメンタルヘルスの診断が加えられたことだ。認知症やうつ病、思考力を試すこれらの診断結果は、主に年老いた被験者における自己診断の信頼性を推し量るものとして使用された。

性格は変わる。細胞が入れ替わるように

結果は、当の研究者でさえ思いもよらないものとなった。これまで幾度となく行われてきた性格調査では、その調査期間において個人の性格にある一定の関連性が見られたものだったが、今回の、63年もの隔たりがある縦断的研究では、全くの別人を比較したような結果になったという。

14歳時に記録された6つの性格的特徴は、77歳時の性格的特徴とはほとんど相関性が見られなかった。ただし、ほとんど関連性のなかった6つの性格的特徴のなかでも、「気分の安定性」と「慎重さ」においては、低い相関が認められたという。

研究者らは、人生のほんの一部を切り取って比較したこれまでの性格調査結果(幼児期から中年期、中年期から老年期など)では、性格の移り変わりの全体像を見逃してしまうのではないかと推測している。

人の性格は、年々、ほんの少しずつ変化していく。性格とは、従来の研究からも、ある短い期間内では極めて安定しているようだが、長期間が経つと、ふたつの性格診断の比較には大きな変化が認められるのだろう。つまり人間の性格は、人の一生において、まったくの別人になりかわれるほど大きく変化するということだ。肉体における細胞の全てが数年周期で総入れ替えされるのと同じように、人間の性格もまた、60年という月日を反映させる変化を起こすのである。

「三つ子の魂百まで」とはよく言われるが、人間の性格的特徴とは、そこまで安定してものではないのかもしれない。この研究結果は、オンラインジャーナル誌『アメリカ心理学会』で発表された

死にゆく人の血液のなかで起きていること

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手書きかノートPCか? パフォーマンスの高い「メモの取り方」を調査した結果

内容を記憶にしっかり残したいのであれば、ノートPCでのメモは絶対NG。講義やミーティングで得た情報を有機的かつ効果的に吸収するには、古典的手法がベストだったという調査結果が出ている。

「ノートを取る」という行為について深く考察をした経験があるという人はあまり多くないかもしれない。ノートパッドを片手にメモを取る昔ながらのタイプから、ノートパソコンやタブレット端末に打ち込む現代流まで、人によって好みのスタイルはあるだろうが、実はメモを取る方法によって、得た情報の吸収と理解に優劣の差が出るという事実をご存知だろうか。そんな驚きの調査結果を『Fast Company』がレポートしている。

そして、冒頭から少々気が早い気もするが気になる結論からいってしまうと、もっとも“ダメな”ノート術はノートパソコンにタイピングする手法だという。話者のスピードに合わせてタイピングできるため大まかな内容をカヴァーできるし、手書きの文字が汚すぎて自分でも解読不能という“事故”もないため、非常に有用なメソッドに感じられる。がしかし、パソコンを使った記述法は、パッシヴ(受動的)な作業にカテゴライズされ、記憶を司る大脳に、入手した情報が深く刻まれないという事態に陥るのだという。つまり記憶に定着するという意味においてはノートパソコンでのメモ書きは“自己満足”でしかない、ということになるのだろう。

では翻って有効性のもっとも高いメモ術は何かといえば、もっともオーソドックスだが、ノートパッドにペンで手書きをする方法だという。実際、UCLAなどの研究によって、この事実は証明されている。

その一例は、学生たちを手書き組とノートパソコン組に分けて、TEDトークのメモを取るタスクを課したリサーチ。メモ書きを行ったトーク終了後に続く30分間で認識度を調査するテストを課し、その後またもや話題をTEDに戻して講義内容に関するクイズを行ったのだ。すると、手書き組の学生の方がノートパソコン組よりも、講義内容をより高度かつ詳細に理解していることが判明した。手書き組の方が、講義に対する集中力・注意力といったエンゲージメント度が高く、結果として情報の飲み込みと理解においても高いパフォーマンスを示す結果となった。さらに1週間のインターヴァルを置いて、同様のクイズを行ったが、やはり手書き組がノートパソコン組を押さえる結果となったという。

それならばと、手書きに対抗しうるノートパソコン派の逆襲として、記述のなかでももっとも重要な箇所にマーカーを使ってハイライトする方法も思いつくだろう。が、こちらもパッシヴな作業でしかないうえ、一部の情報をほかより際立たせることで、全体のコンテクストが不明瞭になり、理解力の向上には繋がらないという。

つまるところ御託を並べる時間があるのならば、素直にいますぐノートとペンを買いに行くのが一番賢明のようだ。

いま、ペンは高度な「テクノロジーデヴァイス」として復活する

トランプの「メキシコ国境との壁」は本当に効果があるか、ちゃんと考えてみた

トランプ大統領が主張するメキシコ国境との「壁」は、米国税関・国境警備局(CBP)が推進しようとしてきたハイテクな総合的手法に対して相反するものになりかねない。

米国大統領選挙中、ドナルド・トランプ候補(当時)は、米国とメキシコの国境沿いに「巨大な壁」をつくるという構想を熱心に説いていた。トランプ政権が始動した現在、まもなく壁を建設することについて、大統領は一歩も譲っていない。だが、国境を守るためのトランプ大統領の計画について人々がどのような意見をもっていようとも、専門家たちは少なくともひとつの点で同意している。大統領の構想は間違っているということだ。

壁はある程度は役に立つだろう。だが、その効果はせいぜい限定的なもので、最悪の場合は、実用的でないだけでなくひどくコストがかかるものになる。物理的な壁に偏狭に注力することは選挙運動では得策だったかもしれないが、実際に米国税関・国境警備局(CBP)のためにこれまで役立ってきた革新的な技術や人的な手段に対しては矛盾するものとなっている。

そもそも「壁」は有効なのか?

結局のところ、南西部の国境、あるいはあらゆる国境の警備に対する解決法は存在しないようにみえる。米国とメキシコの間を横断する約3,200kmの国境では、地理的な制約によって、全長にわたって直立する物理的な構造物をつくるのが難しいからだ。トランプ大統領自身も、壁は全長距離の半分程度になると認めている。

さらにコストの問題もある。米国は近年、すでに約1,126kmにわたる国境沿いの塀[PDFファイル]に対して70億ドルを費やしている。AllianceBernsteinのアナリストたちが2016年夏に発表した見積もり[PDFファイル]によると、既存の壁をもっと頑丈な壁に交換したり改変したりするには250億ドルの費用がかかるという。

「実際に重要な点は、壁であれ塀であれ、あらゆる物理的な境界は、ほかの手段と併用して初めて功を奏するということです」と語るのは、スミソニアン学術協会の下に設置されているシンクタンク、ウィルソンセンターのメキシコ研究所所属で、国境と移民の問題を専門とするクリストファー・ウィルソン副所長だ。「物理的な壁は人目をひくキャッチフレーズであり、複雑な国境の問題に対する魔法のような解決策としてアピールされていますが、言われているようには機能しません。実際のところ、壁の反対側に誰もいなければ、人々はそれを乗り越えたり、打ち破ったり、突破するために必要なあらゆることをするでしょう」。数千kmの壁をつくるには高価な費用がかかると思うなら、24時間の包括的なパトロールの人員にどれだけのコストが必要になるのかを考えてみるといい。

実際、国境警備隊が反対側を見通せる塀を不透明なコンクリートの壁に置き換えるのは、極めて重要な監視そのものを難しくすることはあっても、容易にすることはない。ケイトー研究所(Cato Institute)の移民政策アナリスト、デヴィッド・ビールは、2016年11月に次のように指摘している。「根本的なレヴェルにおいて、壁や塀が不法移民を防ぐことはありません。壁や塀が人を認識するわけではないからです」

この点は、とりわけ、テロリストが米国に侵入してくることを防いだり、特に麻薬や違法な武器などの密輸を低減するなど、より幅広い国境警備の問題に関して重要だ。壁を築くことにより、一部の人間が米国に潜入しようとすることは防げるかもしれない。だが、合法的に国境を出入りする通行に紛れたかたちで行われる、組織的で大規模な侵入を解消することはないだろう。さらに、不法移民の人口統計は変化している。米国に入ろうとするメキシコ人は大幅に減少しており、貧困と暴力の問題を抱える南米の地域からの流入者が増えているのだ。このような人々の多くは国境警備を回避する方法は選ばず、あえて入国ポイントを通過して難民収容所などによる保護を求める。

したがって、壁だけでは不法入国を阻止することはない。だが、不法入国を防ぐ方法はほかにも多数存在する。

国境を守るためのもっと冴えたやり方

米国税関・国境警備局(CBP)は、国境と通関港のセキュリティを「コラボレーション、イノヴェイション、インテグレイションを通じて」強化する目的で、2003年に設立された。CBPでは、ヘリコプター、有人航空機、ドローン、さらにはレーダーを搭載した係留ケーブル付き気球などの偵察ツールと併せて、国境沿いにより強化されたセンサー(レーダー、カメラ、接地センサーなど)を配備している。

CBPはまた、国境沿いに設置する新しい技術によるプロジェクトも準備中だ。同局は2016年、赤外線カメラやレーダーなどを備えた「Integrated Fixed Towers(固定式統合タワー)」プロジェクトについて、前進させる準備が整ったと議会に報告している。これらのタワーが、必要とされるテストで同局の「作戦上の要件」を満たしていることが確認されたというのだ。

Integrated Fixed Towersには、レーダー、電気光学式カメラ、赤外線式カメラなどが搭載されており、システム全体は太陽光発電を動力とする。タワーや建物、その他の構造物に搭載されたカメラを使用した遠隔動画監視システム、空中モニタリング・イニシアティヴ(数千フィートの上空や非常に遠方から国境付近を詳細に監視することが可能なパワフルなカメラとセンサーを使用)、接地センサーネットワークなど、CBPのより幅広いほかの監視プログラムと通信し、強化するよう設計されたプログラムだ。

アリゾナ州ノガレスの国境沿いに設置された7棟のタワーは米国国土安全保障省(DHS)が運営しており、今後、プロジェクトの一環として全部で52棟のタワーが設置される予定だ。現在までに、Integrated Fixed Towersプログラムのタワーは設置に2,300万ドルが費やされており、総費用は1億4,500万ドルになると見積もられている。

CBPはこのほか、法執行当局によるボディカメラの使用も担当しており、入国ポイントにおけるバイオメトリック・スクリーニングにも取り組んでいる。

これらがすべて一体となった技術システムにより、数千kmに広がる起伏の多い地形を一度に見渡せる「視覚」が巡視員にもたらされる。国境を越えようとしている人間、通行できる場所を見つけようと徘徊している人々、または国境を突破する手段を形成するためのより大規模で協調的な動きなど、あらゆる種類の活動をより簡単に見つけることが可能となる。これは予防的であるだけでなく、実用的なのだ。

国境沿いにおけるすべての技術的な取り組みが成功し、高い費用対効果を示したわけではない。たとえばDHSは、SBInetという「仮想フェンス」プロジェクトに5年と10億ドルを費やしたが、同プロジェクトは最終的に2011年に中止された。SBINetでは、Integrated Fixed Towersプログラムと同じように、センサーを配備して情報の照合と分析を行い、国境周辺を見通せるようにするものだったが、リモートセンサーで厳しい地形を横断してデータを中継することに苦労した。

いまもなお、これらの技術的な取り組みには問題がある。一例を挙げると、有人飛行機と比べて、低空飛行するドローンを使用することの有用性に疑問を呈する複数の調査がある。また、特に個人の特定を目的としたものなど、アルゴリズムを用いた監視技術には複雑なプライヴァシー関連の問題が伴う可能性がある。だが、これまでのところCBPは、技術による手段を長年にわたり採用して配備し、それらに依存するようになっている。

「テクノロジーは国境警備のオペレーションにとって不可欠です」と、ふたりのCBP最高幹部たちは2016年に議会で証言し、これらのシステムについて、「暗闇を見通すことに役立ち、当局による応答の精度と速度を向上させます」と説明している。

単なる「壁」を超えた方策

トランプ政権がDHS長官に選んだジョン・ケリー元海兵隊大将は、指名承認公聴会で壁について問われたとき、壁を中心としない多方面の戦略を採用することに明確に賛同した。「物理的な防壁は、それ自体では効果的ではありません。多層防御である必要があります」と、ケリー長官は語った。「南西部の国境の防衛は、実際のところ約2,400km南から始まるものなので、他の諸国家と連携することを伴います」

このように考えているのはケリー長官だけではない。下院国土安全保障委員会の委員長を務めるマイケル・マッコール下院議員(テキサス州選出、共和党)は、国境沿いの塀について調査を行ったうえで、声明のなかで次のように述べている。「外部のグループ、専門家、利害関係者と検討した結果、塀を完成させることは税金の非効率的な使い方になりうることを認識しました。(中略)私たちは確実な国境をつくるために、税金をほかの技術を採用することに費やしています」

国境警備のテクノロジーが進化するにつれ、南西部の国境を警備する方法における、物理的な防壁の重要性は低くなっている。塀はいまもなお顕著な役割を担っているが、より柔軟性があり、コスト効率が高いほかの手段によって強化・サポートされているのだ。

ただし問題は、トランプ大統領および彼に投票した人たちが聞く耳をもっているかどうかということだ。

「国境警備の問題を解決する手段として『壁』というアイデアは、国境とは何かということについて、古臭い考え方に深く基づいています」と、ウィルソンセンターのウィルソン副所長は述べる。「壁は2国を隔てる大きなシンボルです。これまで以上に国境警備に関してメキシコと連携する必要があるときに、危険なものとなるでしょう」

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トランプがつくる「国境の壁」は、なんの解決にもならない