「解釈師」などど言う職業は世の中に存在しない。
だが、カトキ・ハジメ氏の様なガンダムの造形を、リ・デザインして人々を感動させる人種は、なんと呼べば良いのだろう?
スゴイ人だ。あの「ひらめき」と「造形美」と「機能性」を、基本ラインを崩さずに合体させてしまった数々の「カタチ」。
才能以外に考えようもないのだが、考えてしまう。
SDガンダムである。ガシャポン戦記のリニューアルである。 もちろん自分も小僧の頃「うはうは」と興奮したゲームである。
これを現用機で作るとしたら…

こだわる必要はないが、3Dで表現はしなければなるまい。
ただし、マップは見づらくなるので注意が必要だ。もちろんゲームキューブだから、対戦は必須だろうし、協力プレイも盛り込むべきだ。
シミュレーションの面白さを残しつつ、 出来るだけ難しさを排除して…補給線や多戦略マップなんて、 排除排除。
アクションも複雑な操作じゃないように…2Dのゲームと同じ操作感覚でやっちまおう。
3Dで遊ぶのは、なれない人には苦痛だし。それで怒られる事もトレバトと軌跡で経験済みじゃわい。
カメラの操作無し、固定固定と。

うむうむ、すっきりとしてきたぞよ…ただ、このままでは淡泊なゲームになっちまうなぁ。うむ、大体ユニット同士をぶつけて、そのマス目を奪うのは陣地の取り合いだから、いっそ陣取りの要素を入れよう。出来れば、テトリスの様なアクションパズルの要素を入れたいが…
とりあえず放置。アクションバトルはウチのメンツなら心配無し。コレにキャラクタ毎にユニットを割り振り、性格付けして…
よし、今回は「簡単、楽しい」だ!




と、ま~こんな事をプロジェクトのスタート時に考えていた後藤です。
こんにちわ。秋も深まって参りましたが、皆様如何お過ごしでしょう。
なんとスゴイ事に、今回は任天堂さんとの共同開発ですよ!
どんなことになるのか…想像するだけでご飯が3杯いけてしまいます。

てな感じで開発スタートした訳ですが…ゲームなんて完成したモノが全てで、途中の話なんて、お話しするものでは有りません。
書けない事も多いですしね。じゃあ、これで終わり

ってのも、あんまりですね…では、開発中の任天堂さんとの絡みで、自分がびっくりした逸話を幾つかご紹介いたします。
それは、出会って3日目の事でした…

ゲームマニアが作るゲームは面白くない」と言い渡される。

ぐわわ!がーん、ボーン、ドカーン、ひゅ~~…目の前は真っ暗になり、よだれはあごを伝い、
頭の中にはゼ○ライマーの世界消滅スイッチが点滅、荒涼とした冥府魔道がグルグルグルグルと…
その上オレ、アニメオタクじゃん!!嗚呼、世界最後の日
たしかに任天堂のゲームってマニア臭くないよなぁ…

もはや、死のう




いや、まてまて。痛い、確かに痛い所を…突かれた。
そうなんです、ゲームが大好きな人が作ったゲームは往々にして、その人が面白いと思うゲーム、
つまり、その人にとって歯ごたえの有るゲームが、完成してしまうのです。イコール普通の人が触れたときに、

…ナンデスカこのムツカシイのは?

と言う冷たい反応。
ほんのちょっとでも、めんどくささを感じてしまうと、コントローラーを投げてしまうこのご時世。もちろん、自分もそうです。
そうなんですよ!(ただし…「めんどくさい」ゲームが嫌いなのでは有りません。「めんどくささを感じる」ゲームが、嫌いなのです。皆さんも…)

俺たち何のためにゲーム作ってるんだっけ?
みんなに遊んで貰う為だよ、そうそう。よし、もっともっと分かり易く、めんどくさくない物を目指そう…と、
自分にとって好意的な解釈により、世界最後の日は回避されたのでした。
(それでも、自分は好きな人がゲームを作らなければイカンと思っています。)




出会って、3ヶ月目。「家で対戦なんてする人は、居ないですね」と言い渡される。

ぎゃーす!ちゅどん、ぼかん、ドドドドド…目の前は真っ白になり、ゲームキューブの、4つコントローラ端子からは、自分をあざ笑う目が
ちらちらとのぞき、メモリカードスロットからは、「ニュータイプのなり損ないが」と、榊原さんの私をすげさむ声が…
もはや意味がワカリマセンが、世界最後の日です。

もはや、死のう




いや、まてまて。確かに、自分もいい年こいたオッサンで、家で対戦なんぞやってないな。
学生さんに需要は有ると思うが、基本は一人で遊んでるか…いや、コノ話は「対戦」に固執し、一人用について思考が停止していた自分をいさめる為だった様で…

そうだな、対戦より一人用を充実させる方が先決か。一人用より、対戦が充実したゲームってのも訳解らんし。
よし、一人用の楽しさをもっと盛り込もう

と、自分にとって好意的な解釈により、再び世界最後の日は回避されたのでした。
(それでも、自分は対戦の楽しさを知っているので、 皆さんに伝えたいなぁと思っていますが。)




出会って6ヶ月目。「生産をなくしましょう」「え?じゃ別モードで…」
いや、全くなくします」と言い渡される。

しゃーーー!御大カトキ先生すいません!この力足らずの、アホウは基本ラインを死守出来ず、ついには別の物にー!
机の上に飾られた、 洗練の見本のようなνガンダムのフィンファンネルが次々と打ち出され、私の脳天を打ち抜く…
こうなると薬物の使用すら疑われる、 世界最後の日です。もはや、死のう…いや、まてまて。

生産アリのゲームは、とにかく時間がかかる。フェイズ中の時間と、ターンの回数を縛って、ようやく1ゲーム20分以内まで縮めたが…
他のチームの開発員でさえ、初プレイでは何を作れば良いかも判らず…
コストの概念は説明が難しく、よく考える時間も無く、とまどいを隠せない様子だ…
目指すべき「簡単、楽しい」から、遠のいている。か…

よし、ここは思い切って、無くしちまおう!と、自分にとって好意的な解釈により、再び世界最後の日は回避されたのでした。
(それでも、 少し未練は残りますな…うう、カトキ先生~)




てな感じで、毎週世界最後の日がやってきたものです…が、なんとかスタッフ一丸となって乗り切れました~。いや~辛かった。
だが…やはり任天堂はすごいと。

ユーザー第一、キー配置」「ウチとやるなら、新しい事」 「見やすさ優先」「バランスは、素人に合わせてなんぼのもん
等々…勝手に標語にしてますが、任天堂一流のゲーム制作のすごみを味合わせていただきました。
もちろん不満も皆無では有りませんが、 本当に得難い経験を、させて頂いたと思います。
この場を借りて、感謝を述べさせていただきたいと思います。
「有り難う御座いました!」

また、いっしょに戦ったスタッフ達と、良い仕上がりの物ものを、作ってくださった外注さん達。
「お疲れ様でした!あんたら最高だよ!」

さらに、今なお戦闘継続中の、バンダイの皆様
「お疲れ様です!すいませんが、もう少しの間、がんばってください~!」

と…願わくば、このゲームが沢山の人に楽しんで貰える事を祈りつつ、ゆっくり布団で眠れる日を、つかの間楽しみたいと思います。
それでは、また、皆様にお会い出来る日を夢見て。




好きなユニット 後藤氏セレクト

一年戦争・原理主義信奉者の自分としては、ファースト最終系列の「 νガンダム 」さまさま~です。
全身から派手にビームが出たりはしませんが、渋い強さに輝いてオリマス、はい。

(後藤 豪太)



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