動かなくても成立するのが真のアクションスター
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――竹中さんのセリフは全編を通して、ご自身でアフレコし直していました。
谷垣:竹中さんは初日から、現場で考えたセリフを即興で演じるというのをやってくれて本当に助かりました。
竹中:そういうの好きですよ。その場で何通りでも変えられるのがいいよね。
谷垣:ドニーがどんどん竹中さんにアドリブでぶつかっていくから、本当に2人でセッションしているようでした。しかも、アフレコで設定から何から変わってしまって(笑)。
竹中:ドニーが「DON’T TOUCH!」ってブルース風に言ったとき、怒られたのかと思ってものすごくびっくりした。
谷垣:あまりに変更が多すぎて、最初に「こういう設定です」と言っていた僕が嘘つきみたいになって(笑)。
「アクションの激しさとギャグのゆるさの緩急を見せたい」
――舞台は東京という設定ですよね?
谷垣:モデルにはなっていますが、仮想空間ですね。特殊メイクをした人が浮かないように、「漫画っぽく寄せたほうがいいんじゃないか」とか、「ここはアメリカのロマンチックコメディみたいに」とか、撮りながらもアイデアが足されて、一種闇鍋のようになっています(笑)。香港映画の一番強いジャンルはアクションコメディだから、アクションの激しさとギャグのゆるさの緩急を見せたい思いがありました。
――竹中さんはブルース・リー、谷垣監督はジャッキー・チェンがご自身のルーツだそうですが、お二人にとって真のアクションスターの条件とは?
竹中:僕の中ではやっぱり千葉真一さんとか、往年のアクションスターたちがすごく心に残っているんです。そういう意味では、ドニー・イェンも、僕にとって現代のブルース・リーみたいなところがあるかもしれない。
谷垣:僕たち作り手は、あの手この手で新しいアクションを設計するし、アクションができる俳優も増えています。でも、結局は「そこにいるだけで(画面を)成立させられる」存在感がある俳優にスター性を感じます。竹中さんはアクロバティックなことはしないけど、表現に往年のアクションスターのような味がありますよね。
竹中:本当に? いつかドニーと戦ってみたいな。CGで顔だけ僕に差し替えてもらって(笑)。
谷垣:ドニーがいつも「年を取って動けなくなったとしても、味があるアクション俳優は長持ちする」と言うけど、本当にそうだと思いますよ。
竹中:『イコライザー』(’14年)のデンゼル・ワシントンだって、実はぜんぜん動いてないけどカッコいいもんね。
谷垣:日本でも、「この人だから説得力がある」と思わせるアクション俳優が生まれたらいいですよね。
▼燃えよデブゴン/TOKYO MISSION
’20年/香港/1時間36分 監督/谷垣健治 出演/ドニー・イェン、テレサ・モウ、ウォン・ジン、ニキ・チョウ、竹中直人ほか 配給/ツイン 全国公開中