「三浦春馬」さんの恩師が明かす最期の姿 「安らかな顔ながらも口をグッと結んだような表情で…」

エンタメ 週刊新潮 2020年12月31日・2021年1月7日号掲載

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「命を絶つことを思い止まってくれた人もいた」

 2020年は鬼籍に入った著名人が多くいた。けれど、7月18日に30歳の若さで亡くなった三浦春馬さんの名は、新しい年でも人々の頭の中に刻まれ続けるだろう。生前の三浦さんをよく知る人々は今何を思うのか。

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 かつて一人の俳優の死が、四十九日が終わり百日忌を過ぎてもなお、ここまでファンの涙を誘い続けることがあっただろうか。

「春馬のあとを追いたいっていう人から、いきなり連絡が来て驚いた。若い人もいたけど、育児が手につかないと嘆く主婦層のファンも多かったね……」

 そう語るのは、三浦さんが中学時代に役作りのため始めたサーフィンの師匠で、亡くなる直前まで親交を重ねた「茨城元気計画」代表の卯都木睦(うつぎあつし)氏(53)だ。

「私がマスコミに出た影響から、春馬の思い出を聞かせて欲しいと電話があって、何時間もつき合うこともありました。街に出ても、スーパーでいきなり妙齢のファンに泣きつかれてしまったこともあった。正直こちらの仕事に支障が出て困ってしまいましたが、話をして命を絶つことを思い止まってくれた人もいたから、よかったと思っています」

テトラポッドの上で波を眺めていた三浦さん

 そんな卯都木氏を慕(した)い、三浦さんは多忙なスケジュールの合間を縫って、毎月のように生まれ故郷の茨城で波乗りを楽しんでいた。

「海沿いのテトラポッドの上に乗っかって、ジーっと波を眺めていたり、日向ぼっこしたりする時間が多かったね。春馬は本当に地元愛が強くて、海にいるときが唯一のリフレッシュになっていたと思う。それがコロナのせいで亡くなる半年ほど前から足を運べなくなっていたんだ。今でも海岸に行くと花を手向けるファンによく出会う。この前もわざわざ神戸から来たという人がいたね」(同)

 突然の悲劇から半年近くが経ってもなお、三浦さんの存在感は増すばかりである。12月11日には最後の主演作となった映画「天外者(てんがらもん)」が全国公開され、21日には彼の所属事務所であったアミューズが「三浦春馬支援」と題した基金設立を発表した。生前、彼が熱心に取り組んだラオスの小児病院をはじめ、あらゆる困難に立ち向かう人々への寄付・支援に充てる計画という。

「久々に会えると楽しみにしていたのに…」

 芸能界の“育ての親”である、つくばアクターズスタジオ元会長の加藤麻由美氏は、

「高校入学と共に上京してからも、春馬は地元に帰ってきては顔を出してくれました。その時に話した印象だと、明るい役を演じるよりも、シリアスな役柄に強く惹かれている様子でした。元々、彼は引っ込み思案でハニカミ屋さん。根が真面目で上手いことを言ったりするのが苦手な子。春馬自身、ナイーブな内面を表現することが向いていると自覚していて、日本軍の特攻隊員のような役を“絶対に一度やりたい”と熱望していました。亡くなる直前に出演したNHKのドラマ『太陽の子』で、それが叶った矢先だったのですが」

 8月に放映されたそのドラマの感想を、恩師は直々に彼へ伝えることができたかもしれなかったのだ。

「アクターズスタジオ出身の男子から、夏に同窓会をやるので春馬も茨城に帰ってくると聞かされ、久々に会えると楽しみにしていたのに……。それがこんなことになって。ほんとに馬鹿野郎って。アミューズと契約が決まって私が送り出した気持ちとか、オトナの話ができるなと楽しみにしていた。関係者だけを集めた密葬に呼ばれ、最期の顔を見ることはできました。安らかな顔ながらも口をグッと結んだような表情で……。本当に彼の成長が見られないと思うと、もう……」

 そう口にした後、只々涙に暮れる加藤氏。

留学中に緊急帰国を命じられ

 実際のところ、三浦さんは次々に舞い込むテレビドラマの仕事で男女の恋愛模様やコミカルな二枚目を演じるよりも、舞台役者として大成しようともがいていた。そのステップのため、17年にはイギリスへ短期留学に出かけているが、わずか3カ月ほどで帰国の途についてしまう。

 キー局のディレクター曰く、

「春馬さんは半年ほど、ロンドンの語学学校や演劇のワークショップで学ぶ予定でした。ところが当時アミューズに所属していた俳優の小出恵介が未成年女性との淫行で謹慎処分となってしまった。事務所は、出演ドラマの代役を用意しなければならず、春馬さんに白羽の矢をたて、緊急帰国を命じた。泣く泣く彼は従い、表向きには嫌な顔せず仕事をこなしていましたけどね。鬱積したものを抱えるきっかけとなった出来事だと思います」

 所属事務所に聞くと、

「代役で出演した事実は一切ございません」

 と答えたが、彼の胸の内ではどのような思いが渦巻いていたのだろうか。

特集「遺骨・相続トラブル…『三浦春馬』が泣いている」より