メディアパフォーマンスモデリング
オフラインメディア、オンライン/ソーシャルメディアの広告効果を包括的に測定・比較
TVや雑誌等のオフライン広告と、オウンドメディアやソーシャルメディア等のオンライン広告の、購買行動に対する広告効果(影響力)を比較可能な指標として算出する。
アウトプットと解釈
まず、広告媒体の直接効果を算出します。話を簡単にする為に、最初は以下の前提で話を進めます。
コミュニケーションのゴール:リピート購買を増やす事
使用媒体:OOH広告、ソーシャルメディア
OOHとソーシャルメディアの2媒体を使って、製品のリピート購買を増やそうとしている状況です。どちらの媒体がリピートを促進する効果が強いのでしょうか?媒体との接触状況(どちらの媒体とどれ位接触しているか)と、購買行動データ(リピート購買の有無、頻度、購入量)が分かるシングルソースデータを収集し、解析すると各媒体のリピート購買に対する直接効果量を算出する事ができます。
さてここで、「消費者は自分が何にどれ位影響を受けて、行動したのか」正確に評価して回答する事はできない。」という問題がありました。これは、データ中に「何にどれ位影響を受けたのか」ある程度正確に答えられている回答と、正確でなない回答(覚えていない、判断できないなど)が混ざっている状態です。誤差制御専用の解析アルゴリズムを用いると、後者を誤差として補正してくれます。

OOHの直接効果はAのベクトル、ソーシャルメディアの直接効果はBのベクトルで表されています。この直接効果の大きさだけを比べると、リピート購買にはOOHの方が効いているように見えます。しかし前述した様に、メディアの効果は直接効果だけで測る事はできません。下の図を見てください。

OOHからソーシャルメディアを経由してリピート購買へ向かうプロセスが示されています。これは「OOH広告からソーシャルメディアに流入して、その結果リピート購買する」という行動を表したパスです。OOHにはソーシャルメディア経由で購買に貢献する、という効果(=間接効果)もあるわけです。解析を進めると、この様な間接的な効果を持つ経路が「どの媒体間に、どういう方向で存在し、どの程度の効果量を持っているのか」を出力させる事ができます。
ここまでで「リピート購買」に対する、2媒体の直接効果と間接効果を算出する事ができました。これで十分でしょうか?リピート購買はいきなり起こる訳ではなく、そこに至るまでのプロセスがあるはずです。今のままだと「リピート購買に至るまでのプロセスに対して、各媒体がどう影響したのか?」という部分がケアされていません。例えばリピートの前には必ずトライアル購買があるはずです。ブランドへの好意形成や信頼形成、といったステージもあるでしょう。従って、まず「消費者サイドでは、どういう過程でリピート購買に至るのか」という行動プロセス(ファネル)の把握が必要です。その上で、その行動プロセスに対してOOHとソーシャルメディアがどれ位効いているのか、という効果測定が必要になります。
更に、ここでは話を簡単にする為に媒体をOOH広告とソーシャルメディアの2つにクローズアップして話をしていますが、実際にはTVCM、雑誌、新聞、オウンドメディア、リスティング広告やタイアップ記事、メールマガジン、店舗や販売員製品などのコンタクトポイントまで含め、非常に膨大な数の顧客接点が間接効果を発揮し合う事で「ブランド体験」を形成し、それが消費者の購買行動プロセスを促進しています。この様な場合の推定は、確率過程を用いたシミュレーションやベイズ統計などを使うと、良いモデリングが行えます。

さて、ここまでの話の中で間接効果は一方向の矢印で表してきましたが、実際には双方向の間接効果も存在します。例えば下の図4を見てください。ここまで「ソーシャルメディア」と一括りにしてきましたが、その中の具体的なビークル間の繋がりを見てみましょう。

Webキャンペーンを実施し、ソーシャルメディア上での情報拡散を発生させる例から考えます。ある消費者が、Webニュースサイトから、YouTubeの商品紹介動画の存在を知ってアクセスし、内容について自分のFacebookのタイムラインに投稿。さらにFacebookへの投稿が自動的に自分のTwitter上にもツイートされ、それを見たフォロワーがFacebook上でアクセスする・・・など、Web上での情報拡散の過程には、複数のソーシャルメディアが相互に関係し合います。従って、双方向に影響しあう間接効果や、リンクをたどり媒体を回遊するループ状の間接効果による、購買行動への影響を算出する必要もあります。この様な過程をモデル化するには、通常の多変量解析では対応できません。ブラウン運動や確率微分方程式など数学的な話になるのでここでは割愛しますが、確率過程を用いたシミュレーションアルゴリズムで対応するのが有効な手立ての1つとなります。
使用媒体のリピート購買に対する”総合的な効果”を算出するには、最初に紹介した直接効果に加え、上記の様に複雑な間接効果を推定した上で掛け算を行い、リピート購買に至るまでの「プロセス」に対する効果も算出し、全てを足し上げる事が必要となります。普通の加減乗除ではなく確率分布同士の掛け算足し算を含みますが、専用のアルゴリズムを用いると以下の様なアウトプットができます。

OOHとソーシャルメディアのリピート購買に対する効果は、直接効果(A・B)で比較した場合は「OOH」の方が高いという結果でした。しかし、様々な間接効果の和(A2・B2)を加え、総合効果で比較した場合、「ソーシャルメディア※」の方が効果が高いことが明らかとなりました(仮想の分析例です)。この様に、従来型の広告媒体からWebやソーシャルメディアに至るまで、様々な媒体が複雑な広告効果を発揮している場合でも、ベイズ統計や確率過程のシミュレーションを用いると、誤差を切り分けそれぞれの媒体の真の効果を正しく推定・評価する事が可能となります。
※「ソーシャルメディア」の総合効果は、「Facebookの総合効果」+「Twitterの総合効果」+「YouTubeの総合効果」です。解析時には、それぞれのソーシャルメディア毎に総合効果を算出します。