発熱の4人に1人が新型コロナ陽性 嗅覚異常では3人に1人

PCR検査の感染・症状データに基づく、人々の意識・行動と検査体制への提言

郵送検査サービスPCR Now
粟飯原 俊介(半熟仮想・自治医大) 小田 啓太(自治医大・F-medical・東大)須藤 亜佑美(半熟仮想・Yale)
竹口 優三(F-medical・東京TMSクリニック・福島県立医科大)田中 奏多(東京TMSクリニック)成田 悠輔(半熟仮想・Yale)

 

  • 私たちは郵送検査サービスPCR Nowを提供している。私たちの郵送検査サービスは、保険診療の対象(濃厚接触者など)とならない層も含めた幅広い人々を対象としている点が特徴だ。検査対象者の多くは何らかの症状の自覚や接触の可能性がある人々である。
  • 私たちの郵送PCR検査のデータを解析した結果、12月より自覚症状がある対象者の陽性率が大きく高まっていることがわかった。現在、感染者との接触の申告がない場合でも、発熱がある場合2割強が新型コロナウイルス陽性となっている。嗅覚の異常を自覚している場合は4割前後が陽性である。何らかの体調不調があると答えた場合の陽性率が1割を超えている
  • これらの数値から、感染者との接触に気が付かずに感染しているケースが増えていることが示唆される。
  • 一方で、自覚症状も感染者との接触の申告もない場合の陽性率は0.2%と低い。自覚症状はないが感染者との接触の自覚はある人でも陽性率は2.3%に留まっている。
  • これは、症状や感染者との接触の自覚がある人が自主的に隔離することで、感染を制御できる可能性を示唆している。症状または接触の可能性がある人々が自発的に休める社会や就労環境が求められている。

データ提供元PCR Nowについて

データの提供は、F-medical equipmentと東京TMSクリニックが実施している新型コロナウィルス郵送PCR検査サービス(https://pcrnow.jp/)による。データの分析や解釈には二社に加え半熟仮想株式会社が参加した。

F-medicalは、新型コロナウィルスの流行初期に、医学部所属の医師・教員・医学生の有志が、米国パンデミックを機に米国日本人医師会を通して米国に医療物資を寄付する目的で設立、4月、日本でも医療物資不足が深刻となり、特定NPO法人ジャパンハートと組み500以上の大病院に総額1.5億円相当の医療用品の寄付を実施した。8その後、新型コロナウィルス対策における社会と政府の隙間を埋めてつなぐことを目指し、国や保健所の指定する濃厚接触者には該当しないが、感染者と接触した可能性がある人や、有症者向けの郵送PCR検査を実施している。東京TMSクリニックは、米国への医療物資寄付の活動時からF-medicalと協働しているクリニックで、今回はPCR検査用のラボをF-medicalの技術提供で立ち上げた。

郵送PCR検査サービスの稼働は2020年7月から開始、11月から感染の拡大と共に、検査依頼数が増加している。多くの類似郵送PCR検査が無症状者・接触歴がないものを対象に限る中、有症者や接触疑いの検体にも医療機関として対応し、現在の国や保健所がカバー出来ない領域を積極的に対応しているのは他郵送PCR検査にはない特徴である。

当PCR検査は不活化処理(ウィルスの感染力をなくす処理)を実施することで、有症者・接触疑いの人間の検体であっても郵送による安全な検査を可能にしている。郵送での唾液検査であるので、検査場所への移動や、待合、検査の際に飛沫感染をすることがないのが利点である。不活化にはグアニジンを使用し、新型コロナウイルスのタンパク質を変性させることによって感染性をなくす。しかしながら、同じくタンパク質である PCR の酵素が変性する。このため、核酸抽出過程を経て RNA を取り出すことが検査の精度を確保することに必須である。核酸抽出の試薬は世界的にも非常に品薄になっている。当PCR検査では磁気ビーズ法を用いている。当社では品薄になっている磁気ビーズを製薬工場との関係を独自に構築し、有症者も対象にした高精度のPCR郵送検査サービスの安定提供を実現している。 

  • 当郵送PCR検査は有症状・接触の疑いのあるものも対象としているが、その他にも週に一回のサブスクリプションPCR検査を提供している。集団のクラスター化を抑えるにはこの週1回の頻度の検査が必要と示された研究があり、当検査開始初期より無症状者への定期的な検査を安価に行い、社会的なクラスター予防の啓発も同時に行っている。最近、この考え方に Google も追従し、世界中の社員9万人に対して同様のサービスをすることになった。
  • また、新型コロナウイルスの既感染者が、勤務先などにウイルスが検出されなくなったことを証明するために、自宅療養、隔離後に当PCR検査を希望されることがある。治療や隔離期間が終わった後の確認の検査であっても、ウイルスが検出されることもしばしばある。保健所からの指導に基づき、隔離期間が終わっていれば感染性がないと医学的に考え、医師による問診から新規感染でないと判断された場合、ウイルスが検出されたとしても感染者と扱っていない。
  • 今回のデータでは、サブスクリプションと既感染者の確認検査はデータから除外した。大きく数値に影響するわけではないが、データの使用目的として、症状や接触があったときの感染率を推定することを想定しているためである。

データの公開

  • 有症者も対象にした医療機関による郵送PCR検査のため、接触に関する情報や自覚症状などについてのウェブアンケートを実施している。都市だけでなく、特に検査が受けづらい地域からも検体があつまり、症状や条件毎の検査陽性率についてのデータを日本中から広く集められている。今回はその統計情報を公益のために一般公開する。9

データに含まれている人たちは自らPCR検査を希望した点でバイアスは掛かっており、さらなる調査が求められる。しかしながら、想像以上に自覚症状ある対象の陽性率が高いため感染制御に通ずる注意を社会へ喚起する必要があると考えた。

接触・症状の定義

  • 周囲に新型コロナウイルス感染症と診断された人がいるかの情報を問うことで、保健所の検査対象である濃厚接触者として認められる基準に満たない陽性者との接触者などを広く接触者として定義。 
  • 症状についてはウェブによる自己申告でのアンケートを実施している。臨床で新型コロナウイルス患者に多く認められる以下の疾患について設問を準備した 。
    • 発熱、咳、頭痛、痰、息苦しさ、悪寒、倦怠感、筋肉痛、結膜炎、咽頭痛、吐き気、下痢、味覚の変化、嗅覚の変化 
  • 上のどの症状もあるとは設問を選択しなかったが、「現在体調は不調である」という申告についても今回のデータに含めた。

データからわかったこと

  • 陽性になる大きなファクターは2つある。有症状者(体調は不調と答えた人)、接触の疑いがあるもの。
    • 陽性者全体に対して、有症状は63%、接触の疑いありは36%。両方あてはまるのが13%、どちらでもないのは14%
  • 接触や症状の有無によるオッズ比10
    • 症状がない前提での接触のオッズ比は9.35、接触がない前提での症状のオッズ比は28.0。
  • 陽性率の上昇:
    • 11月以前と比べ、12月以降有症状者の検体の陽性率が高まってきている。5.5% -> 11.4%。無接触に限定した場合も5.0%->10.1%。接触かつ症状ありの場合は12.0% -> 20.0%(症状と接触が両方あるサンプルは少ないので参考値)
  • 各症状別の陽性率・オッズ比:
    • 発熱者の陽性率はサービス提供からの全期間で20.0%となっている。何らかの陽性者との接触記録がない場合でも19.0%となっており、接触も発熱症状もない検体と比べて発熱者のオッズ比は41.8、12月に入ってからはオッズ比は70.6となっている。 
    • 嗅覚の変化があると答えた人については、全期間で陽性率は41.7%。接触がない場合は45.5%。検体数自体が少ないため陽性率については参考値ではあるが、嗅覚の変化について自覚症状がある場合は陽性リスクが非常に高いと考えられる。 
    • 吐き気や下痢などの症状は臨床の現場では新型コロナ感染者の症状としては多いと報告されているが、このデータ上は陽性者の記録はない。報告者自体が少なく、一般に吐き気や下痢が新型コロナの症状として認識されていない可能性がある。
  • 陽性発覚後、電話で確認をするとウェブアンケートでは接触なし、症状なしなどと申告していたが、本当は心当たりがあるということが発覚する事例もあったが、接触なし、症状なしとして、統計を取っている。そのため、実際はもう少し無症状者や無接触の検体の陽性率は低く、オッズ比は大きいはずである。
全期間の陽性率 1.31%
12月の陽性率 1.34%
11月以前の陽性率 1.29%
  全期間   12月  
問診 はい・陽性率 オッズ比 はい・陽性率 オッズ比
発熱 20.0% 27.30 26.1% 53.20
6.0% 5.27 8.9% 8.48
頭痛 13.2% 13.51 13.5% 14.41
13.9% 13.25 25.0% 31.06
息苦しさ 13.3% 11.99 11.1% 9.57
悪寒 20.0% 20.99 26.7% 32.17
倦怠感 13.4% 13.74 17.1% 20.24
筋肉痛 16.7% 16.16 21.4% 22.92
結膜炎 20.0% 19.85 20.0% 20.05
咽頭痛 8.8% 8.12 9.8% 9.94
吐き気 0.0% 0.00 0.0% 0.00
下痢 0.0% 0.00 0.0% 0.00
味覚の変化 14.3% 12.77 0.0% 0.00
嗅覚の変化 41.7% 59.02 37.5% 50.61
接触 3.2% 3.37 2.5% 2.31
体調不良 7.4% 14.32 11.4% 33.48
接触なし
  全期間   12月  
問診 はい・陽性率 オッズ比 はい・陽性率 オッズ比
発熱 19.0% 41.82 24.4% 86.71
7.3% 9.33 10.5% 14.34
頭痛 13.3% 19.62 12.9% 18.15
10.3% 12.58 20.0% 28.40
息苦しさ 7.7% 8.60 0.0% 0.00
悪寒 14.8% 19.57 16.7% 21.00
倦怠感 15.5% 24.31 20.0% 37.53
筋肉痛 15.0% 19.28 16.7% 21.00
結膜炎 16.7% 21.25 12.5% 13.96
咽頭痛 5.7% 6.74 4.4% 4.77
吐き気 0.0% 0.00 0.0% 0.00
下痢 0.0% 0.00 0.0% 0.00
味覚の変化 16.7% 20.67 0.0% 0.00
嗅覚の変化 45.5% 97.23 42.9% 85.69
体調不良 6.5% 28.04 10.1% 70.55
体調不良でない
  全期間   12月  
問診 はい・陽性率 オッズ比 はい・陽性率 オッズ比
接触 2.3% 9.35 1.3% 8.37
体調不良である
  全期間   12月  
問診 はい・陽性率 オッズ比 はい・陽性率 オッズ比
接触 15.6% 2.64 20.0% 2.23

データの解釈

  • あくまでも「本人の自覚症状や接触の自己申告」という簡便な判定方法にも関わらず、陽性の可能性が高い人をはっきりと分けられている、というところに特徴がある。
  • 米国疾病予防管理センターなどによる既存の研究は、ベッドサイドで見ているものになるので、重症例が中心だが、このような調査だと、データが「本人の自覚症状」「軽症例」「早期」に偏る可能性がある。
  • 既存研究に対して、咳は陽性率が全期間で6.0%と比較的低い。咳は主観的な側面があるので、心配になった人が症状ありとつけやすいので、検査集団の特性の可能性がある。(参考: https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6928a2.htm https://academic.oup.com/ofid/article/7/7/ofaa271/5865297?login=true)
  • 嘔吐と下痢の報告がない。これの解釈は難しい。「嘔吐と下痢が、新型コロナウイルスの症状であることがあまり知られていないため、それをトリガーにサービスを利用しない可能性」「軽症例は嘔吐や下痢が少ない可能性」「日本の人種要因」などの可能性が考えられる。
  • 陽性者と接触の自覚はないが自覚症状がある検体の検査陽性率が高い。これは、感染経路に気が付かないことを示している。明確な接触歴がなくても症状があれば検査の対象にした方が良い。
  • また、症状がなかったとしても濃厚接触者よりもゆるい接触定義でオッズ比が9.35であり、濃厚接触よりも検査対象をさらに拡張しなければならない事が示唆されている。

現状分析と提言

  • 様々なバイアスがあることは承知の上で、「周りで新型コロナウイルス感染症と診断された人がいる」と答える(以下、接触と呼ぶ。)と2.3%の陽性率、「なんらかの体調の不調がある」と答える(以下、体調不良と呼ぶ。)で7.4%の陽性率である。ひとまずは、接触と体調不良は新型コロナウイルスに感染をしている可能性がある前提で対処するべきである。
  • 行政検査は、濃厚接触または重い症状に加えて、医師の判断で受けられるようになったが、当郵送PCR検査を希望した対象者の多くは、濃厚接触者にならない接触の疑いがあるもの、軽微な症状であり対象者自体も医療機関へ受診するか迷われると考えられるものが多かった。
  • 実臨床の現場としては、PCR検査の対応として発熱外来への迅速な連絡や、PPEを装着しながらPCR検査を行う必要がある。通常の臨床で行うには医療機関や医療者への負担も大きく、軽い症状や発熱がすぐに収まったもの、保健所から濃厚接触者と認められなかったものについて積極的にPCR検査を実施するほどの余裕がない。
  • 一方で、多くの自費検査は技術的難易度と経済的合理性から無症状者に限っている。この結果、軽い接触と軽い体調不良は、二つの隙間にこぼれ落ちてしまう現実がある。当郵送PCR検査はその隙間を埋めるため、広く用いられていると考える。
  • そして、副次的に、無症状のスーパースプレッダーと思われる人物も発見できていることは事実である。
  • また、極めて興味深いことに、医師の判断ではなく自己申告の有症状を基準にしているにも関わらず、特に発熱は5人に1人、嗅覚の変化は5人に2人が陽性と高い陽性率が示されている。そのため、行政や医師の判断だけではなく、社会の感染制御のため自覚症状がある人達にもPCR検査が必要と考えれらえる。また、接触がなくても体調不良ならば、高い陽性率を示すことも興味深い。感染が拡大し、感染経路に自覚のない感染が増えていることが示唆され、体調不良の場合は、接触した記憶に関わらずPCR検査を考慮、外出等を控えるなどの対応が求められる。
  • 体調不良の中でも「嗅覚の変化、発熱、悪寒、結膜炎(目の痛み・痒み・赤み)、筋肉痛」は新型コロナウイルスについて特に注意をするべき症状で「倦怠感、頭痛、痰、味覚の変化、息苦しさ、咽頭痛、咳」も注意をするべき症状である。
  • 「嘔気」と「下痢」は、今回の調査ではなかったが、米国疾病予防管理センターの報告だと嘔気と下痢は有症状感染者の中で10-20%くらいみられる。多くの人が見落としている可能性も考えられる。

提言

すべての個人

  • 体調不良であると思った場合は、新型コロナウイルス感染症である可能性がある前提で感染を広げないように休みを取り、新型コロナウイルス感染症と関係する症状があるかどうかを確認の上、医療機関の受診や行政への相談をして欲しい。医療機関や保健所等が不必要であると判断をすることもあるが、その際には自己判断での自費検査も考えるべきであろう。
  • 診療所での医療機関のPCR検査は外部検査機関へPCR検査を委託することが多く、おおよそ2-3日検査から時間がかかることがある。事前に郵送PCR検査キットをそなえておき、有事にキットを使用することで、おおよそ1-3日で検査結果が家で受け取ることができ、医療資源を節約し、社会における感染拡大の予防が可能になる。感染が拡大し、いつでも身近に感染可能性があると考えられる。会社や自宅などに郵送PCR検査キットを備えておくことも検討にいれてもよいかもしれない。
  • 感染や濃厚接触者になる機会が増えており、身の回りでも可能性のある人になる人がでてくるであろう。身の回りで接触者になったことを伝えて来てくれた人には、正直に話してくれたことに感謝をして、自分も人との接触を減らしたほうがよいだろう。現在の状況では、感染経路は分からないことのほうが多く、気が付かないうちに蔓延している状況で、感染者を責めるとその状況を促進することになる。
  • 感染した可能性のある個人が休むためには、どうしても周りのサポートが必要である。周囲の人も休む人をサポートし、一緒に新型コロナウイルスと戦うことへの理解が広がってほしい。

医療者へ、今すぐ覚えておいてほしいこと

  • 本データにおいてではあるが、発熱している人の場合5人に1人が新型コロナウイルス陽性となり、体調不良でも10人に1人が陽性となる。
  • 当PCR検査では、1日で解熱するなど軽微な症状のみの対象者でも新型コロナウイルス陽性となるケースが認められている。受診時に体調が悪くなく、元気な様子であれば、発熱外来でのPCR検査の紹介や自院でのPCR検査を考慮する必要性が低いと考えるかもしれない。しかしながら、軽微な症状でも新型コロナウイルスの感染可能性があるということを意識してほしい。
  • 11月末にも、強い倦怠感と39度台の発熱、咳と喉の痛みを自覚し、発熱患者等受診相談センターや医療機関にPCR検査の要望をしたものの、検査ができず数日後に自宅で死亡しているのが発見されたという事件があった。
  • PCR が必要かの判断は医師にとっても難しいことは承知だが、迷ったらPCR検査を指示してほしい。また、すでに快方に向かっていて行政検査の必要性がないと考えられる場合でも、本人が心配していたり、周囲や医療者として感染の可能性が少しでもある場合は個人の判断での郵送PCR検査の選択肢があることを伝えて欲しい。
  • 新型コロナウイルス陽性者と診断された、疑いがあると考えられる人に対する診療時だけでなく、体調の悪い人、発熱の患者さんへの普段の診療から感染予防をしっかりと行い医療者として自身を守ってほしい。

更にコロナを押さえ込むために

  • 自己申告の軽い症状や軽い接触など既存の基準で追えない部分にも、高い陽性率を示すことが分かった。現在の行政検査の対象だけでなく、自覚的な症状や感染の疑いがある人に対してのPCR 検査も新型コロナウイルス感染拡大を予防することへ繋がると考えられる。
  • 有症状、感染疑いがある対象を対応できる郵送PCR検査の需要は日に日に高くなっており、毎週毎週検体数が増えている。大学発の強みを生かしたプロトコルを用意し、不活化して、安全性に加え、高い精度を維持する技術開発をした。この技術は今後、外部組織への提供を含め考慮しており、当ラボだけでなく、日本の各地点に郵送PCR検査のラボを増やすことでより国民全体に早く、適切な検査がいきわたると考える。検査の実施をする医療者や医療機関、行政の負担の低減になり、社会として医療資源の枯渇への対応につながると考える。
  • 第一波が落ち着いたと思えば、第二波が来て、第二波が落ち着いたと思えば、第三波が来て、感染制御と経済の間で、私達はなにかがあるかのように同じところをぐるぐると回り続けている。しかしながら、自覚症状も感染者との接触の申告もない場合は、陽性率は0.2%であり、全陽性者に占める割合は、14%である。さまざまなバイアスがあり、さらなる調査を要することは確かだが、接触の申告がない人の症状の申告の有無のオッズ比が28.0で、症状の申告のない人の接触の申告の有無のオッズ比が9.4である。実効再生産率を鑑みると、接触のある人や症状のある人、その周囲の人が、自発的にしばし隔離をするだけで、感染の拡大は抑えられるかもしれない。これは、感染制御と経済を両立したまま、次の波を永遠に無くすことができる可能性を示唆している。
謝辞

東京大学医学部附属病院感染症内科の十菱大介助教には、データの分析と解釈の当初より、新型コロナウイルス感染症患者を見ている立場から貴重なアドバイスを頂いた。

<お問い合わせ先>
小田 啓太
E-mail:keita-tky@umin.ac.jp


  1. 実務では製品クオリティチェックと輸入と配布先選定を主に担当
  2. データは分析の行われた2020年12月21日時点までのものである。
  3. オッズとは、ある事象の起こる確率をpとして、pをその事象が起こらない確率で割るp/(1-p)の値をいう。オッズ比とは、オッズ同士の比。ここでは、接触の自覚がある場合について、ない場合と比べて陽性へのなりやすさを表す。