神奈川の感染爆発は「人災」/ 「菅首相の傀儡」林横浜市長/動くに動けぬ黒岩知事

号外速報(1月7日 18:15)

2021年1月号 POLITICS [号外速報]

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菅首相に付き従う林文子横浜市長(12月16日-市長定例記者会見より)

緊急事態宣言の再発令にもかかわらず、横浜の林文子市長(74)はタガが外れている。市内の病床が逼迫し、次々に感染者が市外の病院に搬送されているのに「横浜の医療体制はまだ余裕がある」と言って憚らない。

12月の市議会でも林氏は「感染が蔓延している状況にない」などと強弁。市職員が切迫した現状を林氏に説明しても「私が知っている情報と違う」と突っぱねたという。「市長は誰から情報を仕入れているのか」と、周囲が呆れるほどだ。

全国最下位の病床受け入れ体制

2千人を超えた東京の感染爆発が槍玉に上がるが、「人災」という意味では横浜市を含む神奈川県のほうが、よほど深刻である。県内の感染者の過半を占める横浜市は「感染防止より経済」の菅義偉首相(72)の影響下にあり、その「傀儡」同然の林氏のコロナ対策は「首相の顔色を窺う後手後手の人災だ」と市議会関係者は酷評する。

確かに昨年末までの県内感染者数は2万1千人程度で、人口10万人当たりの感染者数も東京や大阪より少なかった。しかし、都道府県が発表する感染者数は「受け付けた保健所の累計」というカラクリがある。つまり、神奈川県の住民が勤務先の都内で検査を受け、陽性が判明すると東京都の感染者数に加算される仕組みだ。患者はなるべく自宅に近い病院に搬送されるから、東京でカウントされた患者の入院先は神奈川県内になるわけだ。県が発表する感染者は表向きの数字と言わざるを得ない。

神奈川県内の病院の受け入れ体制はさらに深刻だ。人口10万人当たりの病床数は全国平均1212床に対し神奈川は804床。感染症病床に限ると全国平均1.5床に対し半分の0.8床しかなく、いずれも全国最下位。神奈川の病床受け入れ体制は全国で最も脆弱と言わざるを得ない。

黒岩知事を邪魔する林市長

小池百合子都知事に背中を押された神奈川県の黒岩祐治知事(1月2日の共同会見)

横浜市を含む神奈川県内のコロナ対策を決めるのは、黒岩祐治知事(66)だが、林市長との軋轢が目立つ。フジテレビキャスター時代に医療の現場をよく歩いた黒岩は、早い段階で感染状況を東京と同じ「ステージ3」へ引き上げ、県民の行動抑制を促そうと考えていた。そこへ横槍を入れたのが、林市長だったという。

複数の関係者によると、12月中旬、黒岩がステージ3の宣言を出そうとすると、直前に林氏から電話がかかり、口論になったという。林氏は飲食店の時短営業にも反対し、これは黒岩氏が押し切ったが、強いメッセージを出すのを諦めたという。

結果、12月30日に神奈川県内の感染者数が500人を超え、即応病床の8割が埋まる事態に追い込まれた。黒岩知事は「元旦動画」で感染防止を県民に訴えたものの、翌2日に政府に緊急事態宣言発令を要請したのは、東京都の小池百合子知事に背中を押されたから。「菅首相や林市長の動きを気にするあまり、自ら積極的に動こうとはしなかった」(市議会関係者)

「正常性バイアス」のお年寄りコンビ

ここ数カ月、今夏の市長選「4選出馬」に向け、首相の歓心を買いたい林市長は楽観的なハナシを伝え続けたとされる。林氏がもたらす地元のハナシを信ずる首相は、危機感を煽る黒岩知事に不快感を示し、一時「官邸から出入り禁止になった」という噂まで流れた。

菅氏に近い人物は「菅さんは経済重視というよりコロナに興味がないだけ」と声を潜める。菅氏も付き従う林氏も「コロナは60歳未満の元気な人にとってはただのカゼ」とタカをくくっているようだが、自分が感染したら「即入院」となる70歳以上である。現実を直視せず、自らは大丈夫と信じ込む「正常性バイアス」のお年寄りコンビと言わざるを得ない。

   

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