「「ロックダウン後の武漢で約1000...」、@ykfrs1217 さんからのスレッド
「ロックダウン後の武漢で約1000万人を調べたら、300人の無症状陽性者がいて、その接触者の陽性者は0人だった」論文。いろんな議論が出てきましたが、ちょっと詳しい人(自分)によるコメントです 1/(長くなるよ)
まず、本論文はすばらしい仕事で、著者のかたには賛辞を贈りたいと思います。ですが、この結果から「無症状者に感染性はない(から隔離はいらない)」とするのはちょっと待ってててて 2/
そもそも、本論文以前に、さまざまな先行研究が「無症状者からの感染」を科学的に報告しています(系統レビュー )。本論文によって、これらの知見が“チャラ”にはなりません 3/
Occurrence and transmission potential of asymptomatic and presymptomatic SARS-CoV-2 infections: A...
Diana Buitrago-Garcia and co-workers present a systematic review and meta-analysis on asymptomatic SARS-CoV-2 infections.
journals.plos.org大きな違いとして、いくつかの先行研究では感染が起こったことを「後日の抗体検査」で調べていています。本研究ではPCRです。前者の方がより正確に感染の有無を評価できます 4/
関連して、本研究では「無症状者から陽性検体が採取された2日前以降に接触のあった人」を接触者としていますが、その接触者たちの検体をいつ採取したのかが記載されていません。ひょっとしたら、「実は接触者が感染していたけど時間が経過したのでPCRが陰性化していた」可能性もあります(仮説①) 5/
また、本研究はロックダウン直後に行われており、悲劇を経験した武漢の人々が、自発的にかなり“注意した”生活を送っていたために感染が起こらなかった可能性もありそう(仮説②) 6/
そもそも無症状者が感染性をまったく示さないのなら、この300人は誰から感染したのでしょうか? 7/
この点を考えると、彼らは「ずっと前に感染していて無症状だった、あるいは発症後に回復したが、いまだにPCR陽性になっている」というのもありえるかも(仮説③)。回復後も数週から1か月以上にわたってPCR陽性になり続ける例は世界中で報告されています 8/
先ほど紹介した先行研究から、「無症状者は有症状者より感染性が低い(けどゼロではない)」はかなりエビデンスが蓄積されてきています。それでも、かなりの数の無症状者が動き回ればどこかで感染は起こってしまい、社会に与えるインパクトはとても大きくなりえます 9/
ちなみに、本論文は8月に投稿されていますので、中国当局はそれ以前にこの結果を把握していたでしょう。それでも中国のガイドラインでは、いまも(英語で確認できる範囲で)「無症状陽性者は14日間の隔離」となっています 10/
本研究の価値は「無症状者に感染性がないことを示した」のではなく、「ロックダウンによってほぼ完全に流行を制御したという、世界でもまれな状況でのPCR陽性率を示した」点だと思います 11/period
スレ7番に補足:本論文()によると、調査期間に有症状の陽性者はゼロ人だったそうです
Post-lockdown SARS-CoV-2 nucleic acid screening in nearly ten million residents of Wuhan, China
Large-scale population screening can provide insights to levels of ongoing SARS-CoV-2 transmission. Here, the authors report a citywide screening of ~10,000,000 residents of Wuhan and show that...
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