トランプの旗をまとって撃たれて死んだ元空軍女子のことも、安全なテントから見ていたんでしょうか…。
米大統領選の投票結果が上下両院で最終確認される運命の6日、ホワイトハウス前に集結した支持者を前にトランプ大統領が「国会議事堂に進め!」と檄を飛ばし、すっかりその気になった支持者らが3重、4重のバリケードを破って議事堂に雪崩れ込み、警官1名と支持者4名が死亡、警官50名以上が重軽傷を負う流血の惨事となりましたけど、大統領とイヴァンカ嬢たちはあの地獄絵図を安全な場所にテントを張って眺めていたようです。
トランプ・ジュニアが議事堂突入ビューイングパーティーの模様を支持者にライブ配信していたことがわかり、国民の間からは「副大統領が選挙結果の転覆を拒否して議事進行しているときに、大統領一族は高みの見物」「もう憲法修正第25条か弾劾で大統領辞めてもらうしかないわ」という怒りの声がわき起こっています。
「グロリア」を音源にビューイングパーティー
これがその映像です。ご覧のように大昔の『フラッシュダンス』の音源「グロリア」をかけてジュニアと側近は笑ったり踊ったり…。事の重大性がまったくわかっていない様子です。あんぐり開いた口が地面にめりこみますわ…。
「議事堂に進攻せよ」
鎮圧の派兵を命じたのは大統領ではなく副大統領。非常事態宣言を発出したのも大統領ではなくワシントンDCの市長。夜間外出命令も市長でした。
では大統領は何をしていたのかというと、正午にホワイトハウス前の支持者集会にちらっと姿を見せて「議事堂に進め。弱腰では国は取り戻せない。強いところを見せてこい!自分もついている!」とわけのわからないことをわめいて消え、こんな物陰で懐メロかけて信者の議事堂占拠を眺めていたというわけです。
にわかには信じられない話だけど、ホワイトハウス前の集会で行なった演説は映像で残っていますので、はっておきますね。前座を務めた弁護団長ジュリアーニ元NY市長も、裁判で連戦連敗だった自分のことは棚に上げて、「こうなりゃ武力裁判だ」とかもっとわけのわからないことをわめいていて目眩がしますよ。
捕まる支持者たち
大統領にOKもらったんだから、もう怖いものはありません。支持者たちはトランプの帽子や旗、南軍旗(赤地に青いXの旗。奴隷制支持、白人至上主義のシンボル。連邦国家への冒涜として軍は掲揚を禁じている)を意気揚々と掲げて議事堂を練り歩き、デッキによじ登り、窓ガラスを割り、所かまわず放尿し、ペロシ上院議長の執務机や議長席で記念写真を撮り、書類を床にぶちまけ、デジタルファイルを荒らし、盗み、演説台を動かし、戦利品を自慢し合って、やり放題。
もちろんどれも立派な犯罪行為なので、現行犯で捕まらないのが不思議なのだけど…。そんな批判を受けて当局は全員の画像をサイトに公開して情報提供を求めており、これまでに少なくとも80人が逮捕されました。
トランプの旗をまとって撃たれて死亡
「2020年1月6日内戦」と大書されたシャツを着ている支持者もいて、国会占拠は何週間も前から計画されていたことがわかります。議事堂から数ブロック離れた共和全国委員会本部からはパイプ爆弾も回収され、軍事クーデターさながらの緊張が走ったのですが、現場は携帯がつながりにくくなったこともあり、情報が回っていなかったのか、支持者たちはどんどん行動をエスカレートさせていきます。こうして悲劇が起こりました。
上の動画は女性の元空軍兵士のプール清掃業Ashli Babbittさん(35)が撃たれたシーンです。中には議事運営委員会ジェームズ・マクガバン委員長(マサチューセッツ州・民主)などの要人がいるのが見えます。全員避難して椅子の下に身を隠し、残された警備員が銃を抜いて内側からドアに照準をロックオン。そんなことはお構いなしにAshliさん(長髪の女性)は一番前で警備の2人に何やら怒鳴って、州兵と警備が交代してドアが手薄になったところで割れたガラスの隙間によじ登って撃たれてダウン。首の急所をかすめて病院に運ばれ、まもなく死亡しました。
トランプ一族のライブ配信のノリだと、暴徒は「愛国者」、不法占拠は「革命」「内戦」と呼ばれていて現実と完全に乖離していますからね…。あんな嘘八百の毒にやられて死んだのかと思うと不憫でなりません。もみあいで具合が悪くなって死んだ残りの支持者3名もみなネットで陰謀論を熱心にフォローしているトランプ信者でした。そんな彼らに囲まれて殉死したBrian D. Sicknick警官(42)はもっとかわいそう。ほんとうに怖いですね…。
「ファッ〇・フェイクニュース」と取材クルーを襲って機材を破壊するトランプ信者たち
SNSが続々とトランプをブロック
上院下院議員にはビニール袋つきのガスマスク(火災や催涙弾から身を守る「 escape hoods」)が配られ、地下などに避難誘導されました。午後6時には夜間禁止令発動で安全が確保されたため全員戻って審議を再開し、ジョー・バイデン次期大統領就任がやっと正式に決定。
怒り心頭のナンシー・ペロシ上院議長(上下両院の多数党になって無敵感が増した)は金曜、大統領に辞任を求め、辞任しなければ来週にも弾劾投票を行なうことを発表。執務執行能力を著しく欠くとの判断から、大統領には決して核ボタンを譲らぬよう、軍のマーク・ミルリー統合参謀本部議長に指示したとも伝えられます。
ここまで来たらもう転覆はありません。SNS各社もトランプ発言を規約違反でパージしはじめています。Facebook、Instagram、Twitchは続々とアカバンを発表。「今ごろバンしたって遅いわ…」と言われてますけどね。
Twitterは大統領が「We love you. You're special」と国会占拠の支持者にラブコールを送った問題発言を削除して半日アカウント停止にしました。でも半日過ぎて息を吹き返した途端、また問題発言をはじめたので、先ほど永久バンに切り替わってしまいました。ご~ん。
これでしばらくは静かになりそうですね。