新型コロナの重症化を防いだ「漢方薬」とは? 専門学会が注意喚起も
新型コロナウイルスの治療薬の開発が世界中で期待されているが、中国では武漢での流行初期から、感染患者に漢方薬を用いて重症化を抑えたという。果たしてどんな漢方薬なのか? 日本での処方は可能なのか? 専門医に取材した。
中国・武漢での発生に端を発する、新型コロナウイルス感染症。日本で現在使える薬剤は、重症例に対するレムデシビルとデキサメタゾンのみ。そのほかは、まだ臨床試験で有効性・安全性を確認できていないため、承認されていない。
一方、中国では、西洋医薬に加え、漢方薬を用いることで、早期に新型コロナウイルス感染症を鎮圧したとされている。
3月23日、武漢での記者会見で、国家中医薬局・余艶紅氏は、同薬はコロナ感染患者の91.5%に当たる7万4187人に用いられ90%以上の患者に有効だったと報告した。軽症もしくは中等症の患者に有効で、重症化するのを防ぎ、死亡者を少なくしたということだ。
東海大学医学部付属東京病院で漢方外来を持ち、国際東洋医学会理事の永井良樹医師はこう説明する。
「中国で新型コロナウイルス感染症に対して用いられたのは『清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)』という漢方薬です。中国では有史以来、数限りない流行性感染症に見舞われてきましたが、その病気を『傷寒』と呼び、古人の教訓や薬方を集めて、約2千年前に『傷寒卒病論』が作られました。清肺排毒湯はそこに根拠を置く薬で、新型コロナウイルス感染症も『傷寒』と考えたわけです」
清肺排毒湯は、大青竜湯(だいせいりゅうとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、五苓散(ごれいさん)、射干麻黄湯(やかんまおうとう)、橘皮枳実生姜湯(きっぴきじつしょうきょうとう)の五つの漢方方剤を合わせ、それに幾つかの生薬を去加したもの。日本でも保険で使える生薬の組み合わせでほぼできる。
「清肺排毒湯を処方することで湖北省の複数の仮設病院のなかには、入院患者564人のうち一人も重症化しなかった院もあり、他院も重症化率は2~5%だったというのです」(永井医師)