古き破壊者 ベルゲルミル

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※AMAZONから、スキルのGRADE UPによる数値の変化量が途中で変わるケースが出ています。


Illustrator:ケースワベ

名前巨神ベルゲルミル
年齢不明
職業メインフレーム製拠点殲滅用機動兵器プログラム


元々はメインフレームによって作られた機動兵器。現在は光の塔を守護する番人。
より与えられた使命を胸に聖剣使いと戦う。
スキル
RANKスキル
1破壊の旋律
5
10
15
25限界突破の証
50真・限界突破の証

  • 破壊の旋律 [CATASTROPHY]
    • ボーナスが入る間隔は短いが、コンボ数あたりのボーナスは女神の試練よりも低く、強制終了条件もあちらより厳しい。
      • その間隔の短さも活きる場面は極めて限定的(ノーツ数が100の倍数より僅かに少ない場合等)なため、使い勝手としてはほぼ下位互換に近い。
      • ただし入手過程においては、スキル所有者を筐体で入手可能、1キャラのみ育成で最大GRADEにできるといった利点もある。
    • チェイン効果はタナトスと同様で、事実上のソロ専用スキルである。くれぐれもマッチングで使用しないように注意。破壊するものは友情か
      • タナトスと同じマッチング禁止効果が付いているのは、担当楽曲のアーティストの片方である目黒将司氏がペルソナシリーズに深く関わっているためであると思われる。
    • 何気にCHUNITHM初となる、強制終了条件とマッチング専用効果を併せ持つスキルである。マッチングはマイナス効果だが
GRADE効果
共通JUSTICE以下20回で強制終了
20チェイン達成した場合
ゲーム終了時にゲージが0になる
初期値20コンボごとにボーナス +1200
+1〃 +1250
+2〃 +1300
+3〃 +1350
ゲージ10本必要条件:2240ノーツ
GRADE・ゲージ本数ごとの必要ノーツ数(発動回数)
GRADE5本6本7本8本9本10本
初期値340
(17)
700
(35)
1100
(55)
1540
(77)
2000
(100)
2500
(125)
+1320
(16)
680
(34)
1060
(53)
1480
(74)
1920
(96)
2400
(120)
+2320
(16)
660
(33)
1020
(51)
1420
(71)
1860
(93)
2320
(116)
+3300
(15)
640
(32)
980
(49)
1380
(69)
1780
(89)
2240
(112)
ランクテーブル
12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
2627282930
 
3132333435
 
3637383940
 
4142434445
 
4647484950
スキル
STORY
EPISODE1 取り残されたものたち「我は、地上再生を果たすゲートを護るもの。其方が選ばれし者か、審判を下してやろう」
 セーレ・ヘイズと、再生者ディアンの激突。
 その戦いの結果、膨大なエネルギーを失った電子の楽園は、領域を維持する事ができなくなってしまった。
 楽園を崩壊の危機から救う手立てはひとつ。
 この世界を構成する大きな力を分け与えられた最古<オリジン>と混沌の器たちが中枢ユニットへと還り、安定化を図る事であった。
 その後、両者は中枢ユニットの一部となり、長きに渡る歴史に終止符が打たれたのである。

 神々の消えた世界。
 彼らが管理していた数多ある世界は、ひとつの世界へ統合され、その中にある大地の一つ『超大陸エマーグ』として生まれ変わった。
 大陸がどれ程の大きさなのか、その全容を知るものはいない。
 この大陸に辿り着いた人々は、突然の状況に困惑しつつも、やがて受け入れ、過酷な環境の中を助け合いながら生きていく事となった。
 そんなエマーグに流れ着いていたのは、人間だけではない。
 そこには、人々以外のものも流れ着いていたのだ。
 それは――フォノゼニスでの最終決戦を戦い続けていたプログラムたち。

 それらは皆、従うべき主を失い、自分自身の存在意義すら見い出せずにいた。
 それでも彼らは、徐々に己の生きる意味と向き合い、残りの生で何ができるのか模索してゆく。

 巨神ベルゲルミルもまた、エマーグへと辿り着いたプログラムのひとつである。

 彼らがこの世界にとり残された意味とは。
 電子の楽園の行く末とは、何なのか。

 それは――楽園の神のみぞ知る。
EPISODE2 ネメシスが求むるモノ「フォノゼニスで展開される戦い、これより先へは、我を倒さねば進めぬぞ」
 メタヴァースの支配権を巡る争いは、エテメンアンキがネメシスに制圧された後、勢いをつけたネメシスがメインフレームの防備を突破し、
そのまま中枢都市フォノ・ゼニスでの決戦へと移行していった。
 都市を覆い尽くす程のネメシスの大群と、都市の防衛機構と全戦力を駆使して防戦に回るしかないメインフレーム。
 それは、文字通りの総力戦であった。

 戦いは熾烈を極めた。
 フォノ・ゼニスを制圧されれば後がないメインフレームは、禁忌としてきた兵器――領域崩壊を引き起こし、周囲を巻き込む自爆兵器や、制御が十分に行き届かない大量破壊兵器などを使わざるを得なくなってしまう。

 混沌の器率いるネメシスの大軍勢に反撃を行っているベルゲルミルもまた、メインフレームによって造られた拠点殲滅用機動兵器のひとつである。
 高度な自我を与えられたベルゲルミルは、リヒトツヴァイや防衛プログラムを率いて、防衛戦を繰り広げていた。

 強力な兵器でネメシスを殲滅していく彼らだったが、倒せど倒せど、ネメシスは際限なく出現してくる。
 そのため、他の戦線に加勢に行く事もままならない。
 「これ程の数を有するとは……。奴らは前もってこの決戦への準備を済ませていたか」

 メインフレームとて、決戦に備えていなかった訳ではない。ただ、広がり続ける領域の管理に注力しなければならず、ネメシスの行動に対して後手に回ってしまっていたのだ。

 「今更、泣言など無意味だが。この数の前には……趨勢を決するのも時間の問題か……」

 ベルゲルミルたちの視界の彼方では、混沌の器と激戦を繰り広げているセラフィータとジェフティがいる。
 セラフィータは混沌の器であるアレウスと、目にも止まらぬ神速の戦いをし、ジェフティとヴェルゼビュートは互いに牽制し合いながら、セラフィータたちの戦いを援護していた。

 「我々も負けてはいられぬな。皆の者、ネメシス共を掃討するぞ」

 ネメシスの軍勢と衝突したベルゲルミルは、その驚異的な膂力をもって、金色の雷槌を振り回す。
 高周波の振動を放つ雷槌に触れたネメシスは、即座に光の塵へと変わっていく。

 「……ギギ、ヤツヲ、コロセ……ッ!」

 雷槌の威力を目の当たりにしたネメシスは、標的をベルゲルミル1機へと絞り、覆い尽くさんと殺到する。

 「数で圧倒した所で、『審判の雷槌』は止まらんぞ」

 次々と軍勢を消滅させるベルゲルミルの下へ、新たな軍勢が出現した。
 幾度倒しても際限なく現れるネメシスと戦う中、ベルゲルミルは彼らネメシスの目的について思案する。

 (ここまで奴らを駆りたてるのは、何だ……何故、そうまでして……)

 そこへ、ベルゲルミルの思考を阻むように、戦線へネメシスの代理構成体が姿を現す。放たれた攻撃を黄金の体躯で受け止め、

 「その程度で、我は沈まぬ!」

 取りつくネメシスを雷撃で薙ぎ払い、ベルゲルミルはネメシスの軍勢に、屹然と立ちはだかるのだった。
EPISODE3 滅びゆく世界「我々には、争い合う以外にも、道があったのではないか……」
 ネメシスの猛攻は熾烈を極めていた。
 どれだけ塵へと帰しても、直ぐさま新たなネメシスが現れる。間断なく降り注ぐ攻撃により、ベルゲルミルの随伴機や防衛プログラムたちは次第にその数を減らしてゆく。
 随伴機たちは破壊される寸前に自爆する事で、より多くのネメシスを巻き込もうとするが、その程度では数的優位は覆らない。

 「……このままでは、いずれ……」

 いざとなれば、フォノ・ゼニスの外殻に影響を与える威力を持つ戦略級殲滅兵器を使うべきか。
 そんな考えがベルゲルミルの脳裏を過り始めたその時――フォノゼニスの中枢で異変が起きた。

 何かを察知したセラフィータたち。
 彼女らは戦闘を止め、混沌の器と共に中枢へ向かっていったのだ。
 ベルゲルミルはその光景を見上げ、

 (ネメシスの真意――それはメインフレームと同じ、人類を地上へと返す事であろう。過程は違えど、その本質は変わらぬ。相容れない存在であるばかりに、戦うしかない……)

 自身の手を見つめて思案する。

 (頑なにぶつかり合う事が、本当に正しい事なのだろうか? 我々には、違う道があったのでは……)

 そこまで思考した所で、ここで考えても今更変わりはしない、とベルゲルミルは戦闘に専念した。

 「どれだけ群がろうが、我が雷槌の前には無駄な事」

 ――雷槌を振り上げたその時。
 中枢を発端として、大きな衝撃がフォノ・ゼニスに奔った。そして、ベルゲルミルが疑問を差し挟む間もなく、中枢が崩壊を始めたのである。
 ベルゲルミルのいる領域も、今まさに巻き込まれようとしていた。

 「中枢で一体何が……」

 この崩壊は、中枢を特異点として、世界のすべてを呑み込み、収束しようとしている。
 敵味方関係なく、光の渦の中へと消えていく光景。
 ベルゲルミルは、ただ眺める事しかできなかった。
EPISODE4 流れ着いた世界で「神々の喪われた世界。我がすべき事、それは――」
 ベルゲルミルは、領域の崩壊に巻き込まれる中で、世界を創造した神の姿を見た気がした。
 穏やかで、それでいて温かな声。

 「…………」

 神はベルゲルミルに何かを告げると、徐々に光の一部となり姿を消した。

 「今の声……我に何を語り掛けていたのだ……」

 光の海を彷徨うベルゲルミル。
 流れ着いた先で彼を待っていたのは、数多もの世界がひとつに統一された、超大陸エマーグだった。

 目覚めた当初、他のプログラムと連絡も取れない状況だったが、ベルゲルミルは大気の情報を読み取り、この大陸がかつての電子の楽園である事を理解する。

 「そうか、あの戦いはもう――」

 ネメシスとの戦いは、終結していたのだ。
 空を見上げたベルゲルミルは、感嘆の声をもらす。

 「美しいな……」

 それからベルゲルミルは、損傷したその身体を修復しつつ、まだ動く随伴機を放って世界の現状の把握に務める事にした。
 調査の結果、分かってきた事がある。
 この世界は、多種多様な人間たちとメインフレームのプログラムが共存し、そして、わずかではあるが末端のネメシスも生き残っている事が判明した。

 人々は突然の状況に混乱していたが、彼らを導いてくれる者はもう存在しない。それぞれが生きる意味を見出し、歩まねばならないのだ。
 そんな人類を前にして、生き残ったプログラムたちはその根底にある使命感からか、人々を支えるべく共に歩む道を選択してゆく。

 そのプログラムの中には、破壊兵器として作られた者もおり、争いとは無縁の世界に己の存在意義を見いだせずにいたのだ。

 新世界は美しい空がどこまでも続いているが、大地は繁栄には程遠い状況で、どこまでも荒涼とした地が続いている。

 そんな中、ベルゲルミルはふと不自然な現象を目の当たりにした。
 大陸のあちこちに、天へと伸びる光の柱が並んでいたのである。

 「あれは……転送ゲート、か?」

 それを認識した瞬間、ベルゲルミルの脳裏を、光の海で出会った者の声がこだました。

 『代行者たちとは違った考えを抱く者に、私は託したいと思う』
 「……我に、ゲートを守護しろと言うのか。我にもまだ役目があるのならば、その神命、喜んで引き受けよう」

 審判の鉄槌を握る巨神は、新世界で新たな誓いを立てるのだった。
EPISODE5 争いの火種「我に与えられた新たな使命。創造主の期待に応えてみせよう」
 あらゆる世界がひとつに統一された新世界。
 そこでは人々とプログラムが混ざりあい、混沌とした様相を呈していた。
 一時は荒廃した大地に絶望する人々であったが、それでも彼らは諦めなかったのである。
 種族の壁を越え、プログラムと手を取り合い、一丸となって復興に向けて立ち上がったのだ。
 荒れ果てた大地は、急速に復興を遂げ、色を取り戻してゆく。

 そんな中、旧世界の知識と人類の地上再生という目的を受け継いだ一部のプログラムたちは、地上進出派『レコンキスタ』と呼ばれる組織を結成する。彼らは、自身の精神情報と、容れ物としての人の肉体との一体化を図ったのだ。

 彼らを突き動かしたのは、地上への強い憧れと野心。
 転送ゲートの情報をプログラムから得た彼らは、各地に点在するゲートへの調査を開始した。
 だが……彼らは地上への帰還はおろか、ゲートを開く事さえできなかったのである。
 彼らには何が原因かも分からない。各地へ散っていった面々は、一度ゲートの情報を集める事にした。
 その中で、北方にあるゲートだけ、門番のような者が居るという報告があった。
 人の十数倍はあろうかという背丈と、金色に輝く体躯と槌を持った異様な出で立ち。正に門番と呼ぶに相応しい存在である。

 彼らは、その門番こそがゲートを開く鍵に違いないとして、武器を取り一方的に攻撃を仕掛けたのだった。

 程なくして、北方ゲートでの戦いが始まる。
 レコンキスタは、メインフレームの技術や自爆兵器などを駆使し、巨神に戦いを挑む。
 だが、そのいずれも巨神の黄金の装甲を貫く事はできず、皆一様に雷槌の光を浴びて塵と化してしまう。

 「無粋な者共よ。我は、対話を欲しているだけだ」
 「クソ……この化物め……!」
 「俺たちは地上へ出たいだけだ、邪魔をするなッ!」

 彼らは、巨神の言葉を聞こうともしなかった。

 「愚かな……貴様らは、統合されたこの世界で、何を見てきたのか。……度し難い」

 巨神の一振りは、抗う者たちを光の塵へと変える。
 虚ろ気に大地を見つめる巨神の嘆き。
 その声を聞き入れる者は、誰もいない。
EPISODE6 黄金の粛清者「何故人類は争いを欲するのか。過ちを犯さずにはいられないというのか」
 レコンキスタのゲートへの侵攻は絶え間なく続いた。
 「あの巨神を倒せば、人類再生の足掛かりとなる!北方ゲートを解き放つぞ!」
 「奴は旧き文明の忘れ形見にすぎない。旧き者の首を我々の手で討ち取るのだ!!」

 彼らは、ベルゲルミルを撃破する事が地上へ辿り着くために必要な条件なのだと信じ込んでいる。
 いつしかゲートの守護者は、人類再生を阻む、世界の敵と認識され、憎しみを一身に受ける存在となってしまった。
 それは民衆を焚きつける口実にも使われ、彼らの数は減る事なく、際限のない争いを生み出してしまう。

 アプスの谷の最奥、光の塔の周辺領域は、緑に溢れた美しい景観が広がる場所であった。
 しかし、今はかつての面影は欠片も残されていない。
 谷はレコンキスタたちが用いた兵器の傷痕が散乱し、緑は焼け落ち、激しい戦いの結果大地は汚染され荒野と成り果てていた。
 そんなうら寂しい空間の中、ひとり、ベルゲルミルは思う。

 「戦いに果てなど無い。人類は創造主が望んだ進化を未だ果たせずにいる……」

 塵になる間際に聞こえた怨嗟の声。
 数多もの憎しみが、恨みが、ベルゲルミルの胸中を何度も何度も駆け巡る。
 幾度滅せども、彼らは決して『対話』という道を選ばなかった。

 「……ヒトは変わる事など、できはしないのだ」

 故に、ベルゲルミルは決意した。

 「神々が果たせなかった、真なるヒトの選定……。我が代行者となり、能わぬ者は全て排除しよう」

 かつて世界の管理者が掲げた理想のもと、ベルゲルミルは行動を開始する。

 「手始めに、我に幾度も刃を向けた愚か者たちを殲滅しよう。そして、それを促す文明諸共、我が雷槌で消し去ってくれる」

 間違った繁栄によって築かれた文明を導くために。黄金の粛清者は、手始めにアプスの谷を目指すレコンキスタたちを粛清することとした。
EPISODE7 調和を探す者「この新世界で起きた異変。私はそれを確かめに行かなければならない……」
 光の塔――メインフレームの基幹システムであり、高次の次元と超大陸エマーグをつなぐ唯一の接点。
 それは、地上への再生を司る帰還プログラムへとつながる転送ゲートでもあった。
 管理者が不在となった世界で、ゲートはあるがままの姿を晒す。高次の空間より流れ来る膨大なエネルギーの奔流は、その一部が可視化される事で、結果的に塔のような形で顕現していた。

 だが、当初は世界の至る所で観測できたソレは、戦火の拡がりと反比例するかのように、徐々にその数を減らしていたのである。

 「今この大陸で何かが起きている……ゲートを使ってみんな帰還しようとしているのね。でも、それだけでは地上へ辿り着く事はできないわ」

 塔を一望できる丘で、空を見上げる女性がいた。
 女は蒼き剣を担いで丘を下り、小さな村へと向かう。
 若葉が風にそよぐ大地、ブルーノヴァ。
 そこでは天使の翼を持つ人々が地を耕していた。
 その天使たちは、世界を修復する事を使命として、かつての楽園の管理者であるシエルとセラフィータから生み出された小さな存在である。
 女がブルーノヴァに戻ると、天使たちは作業を中断し、笑顔で出迎えてくれた。

 「あ、セーレ様だ! セーレ様、お帰りなさい!」
 「みんな、ご苦労様」

 柔らかな髪を優しく撫でつけ、セーレは天使たちに笑顔で応えた。

 「セーレ様、塔の様子はどうでしたか?」
 「徐々にではあるけど……光が弱まっているわ。何か異変が起きているのは間違いないわね」

 その言葉を聞き、天使たちは不安の色を濃くする。

 「では……この村を出て行かれるのですか?」
 「ごめんね、皆……私にはまだ、やらなくちゃいけない事があるみたい」

 その言葉を聞いた、まだ幼い天使は、悲しげな顔を浮かべ、セーレにしがみ付いていた。

 「セーレ様、行かないで……」
 「もう……泣かないの。二度と会えなくなる訳じゃないわ。私だって、この緑溢れる地をいつまでも眺めていたい」
 「じゃあ……!」
 「でもね、私たちにはこの世界を修復するという使命があるの。だから、私はこの大地に残された……異変は見過ごせないの」

 そう言ってセーレは、天使たちを優しく抱きしめた。

 「調査が終わったら戻ってくる。皆、元気でね」

 この世界を、かつてのような悲劇のない世界にする。
 決意を秘めた彼女は、確かな足取りでブルーノヴァを後にするのだった。
EPISODE8 残されし者の使命「あなたも、私と同じなのね……なら。私は正さなくちゃいけない。あなたという存在を」
 フォノ・ゼニスでディアンとの死闘を制した後、私――セーレ・ヘイズは、青き大地ブルーノヴァで目覚めた。
 あの光の中で出会った人と、私がこの世界に残された意味。それを確かめるため、私はこの世界を旅した。
 その旅路の中で、この世界にはメインフレームが管理していたと思われる遺構が、点在している事を知った。
 そして……この世界において、明らかに異質な存在を放つ光の塔。
 あれの正体を、グランタクトが教えてくれた。

 あれは、この世界と地上をつなぐ再生プログラム。
 そこにある転送ゲートを通過すれば、人類は本当の世界――地上へと帰還する事ができる。
 そこで気になったのが、それを起動する条件だった。
 メインフレームが定義するのは『より優れた人類種、争いを捨てた理想の賢人』であるという事。
 それが今この時を生きる人々に適応されるかは、分からない――

 そんなある時。
 とある情報が私の耳に入った。
 『レコンキスタ』と呼ばれる、人とプログラムの融合体によって結成された勢力。彼らがゲートをくぐるために争いを起こし、人々に傷みを強いていると。

 ……折角、この世界が再生へと向かって歩み始めたというのに。
 そんな奴らを、このまま放っておく訳にはいかない。

 ――正直なところ、私は、人から争いを奪う事はできないと思っている。
 けど……ほんの少し、ほんの少しだけ優しさを持てるようになれるなら、ヒトは変われると信じてる。
 だから、私にできるのは、彼らと対話する事だけなんだ。

 私は、彼らが北の塔で争いを始めた事を聞きつけ、塔へと急いでいた。
 北の地では、彼らが呼び覚ましたプログラムが、もう起動しているという。それはメインフレームが遺した遺産である可能性が高い。

 北の地――アプスの谷へ辿り着くと、レコンキスタは既にゲートの守護者と戦闘を繰り広げている所だった。
 彼らはメインフレームの兵器を使って果敢に攻撃を試みているが、黄金の身体には全くといっていい程、傷が見られない。
 その一方で、守護者が振るう黄金の槌は、彼らを一撃で灰燼に帰していた。
 それでもレコンキスタたちは、攻撃の手を緩めようとしない。
 ……これは、もはや一方的な虐殺だ。

 「……見てられない」

 私は守護者とレコンキスタの戦いに介入した。

 「其方は……そうか、其方も我に歯向かうのだな」

 守護者は、山のような黄金の身体を震わせ、巨大な槌を大地に叩きつける。そして、大地を揺らして名乗りをあげた。

 「我はゲートを護りし者、ベルゲルミル。変わる事すらできぬ愚かな人類を殲滅する者なり」
 「それがあなたの名前ね。私はセーレ・ヘイズ。あなたと同じ、楽園からの迷い子」

 私は腰に収めた剣を抜き放ち、宣言した。
 この剣を『使う』のは、久しぶりだ。
 できる事なら使いたくはない。でも。
 目の前に佇む存在は止めなくちゃいけないんだ。

 「いいだろう、小さき者よ。その身で我に抗うというのなら、挑むがよい」

 ――父さん、グランタクト。
 あなたたちの力、借りるわ!
EPISODE9 暴走する正義「『其方には力があるだろうに。何故動かぬ!』『それは私の役目じゃない。私のすべき事はッ!』」
 ベルゲルミルの咆哮が大気を震わせる。
 天を駆ける黄金の雷槌が、大地へと叩きつけられた。
 巻き上がる土煙は空を埋め尽くす程に舞い、アプスの谷はその形を変えてゆく。

 「我に歯向かう者は皆、すべからく悪である。人類が過ちに気付くまで、我が何度でも消し去ってくれよう」

 巨神は、幾度とない戦いの果てに、己の考えに執着するようになっていた。
 その考えが間違いであると、気付けなくなる程に。

 「あなたがその力を振るい続ける限り、争いの火種が尽きる事はない。あの決戦を生き残ったのに、どうしてそれが分からないの!?」

 セーレは黄金の一振りを躱し続け、問いかける。

 「決戦を生き抜いたからこそだ」

 雷槌の一撃をくぐり抜け、足元へと移動し、斬撃を浴びせる。
 だが、強靭な身体に傷は付けられても、その巨躯を跪かせる程のダメージには至らなかった。

 「……硬いッ!」

 そこへ、ベルゲルミルが操る随伴機が飛来した。セーレと同サイズのソレは、素早く回転しながら雷を無差別にばら撒いてゆく。

 「くッ!!」

 無数の雷に阻まれ、セーレは思うように攻撃を与える事ができないでいた。

 「それぐらいで! ハアァァァッ!!」

 輝きを強めたグランタクトを水平に構え、掛声と共に放った一閃が飛び交う随伴機を薙ぎ払い、破壊する。
 グランタクトと、セーレの強さは健在であった。

 「……その力をもって、人々を導く事も可能だろう。其方なら真に優れた人類を地上へと戻せる筈。だが、何故其方はその道を選ばぬのだ!」

 ベルゲルミルは初めて感情を露わにし、怒りのままに周囲へ雷撃をまき散らした。
 地形を造り変えてしまう程の雷撃が、周囲に無数の火柱を生み出してゆく。
 炎獄の景色がセーレを包み込む。
 だが、立ち上る陽炎よりも、火柱よりも、蒼き輝きは一層強く光り輝く。

 「それをするのは、私じゃないわ」

 剣の一振りで、セーレは火柱をうち払ってみせた。

 「ならば、誰が導くというのだ!」

 蒼い光を打ち消さんと、黄金の雷槌が迫る!
 怒号と共に、大地に激震が走った。
 その一撃は地割れを起こし、大地を縦に割り裂く。

 「これで終わりだな、小さき者よ。我は人類の粛清を……」

 その言葉が続く事はなかった。
 セーレの神速の一閃が、雷槌を根本から両断していたからだ。

 「まだ潰えぬか! ならば、その身をもって味わえ、神の雷を!」

 巨神の身体から放たれた雷が迸る。
 その雷霆(らいてい)の中、セーレは翔け抜けた。
 巨神が握り潰そうと伸ばした掌に着地すると、セーレは電光石火のごとく回転し、その腕を斬り刻みながら駆け登ってゆく。
 そして、肩へと登りつめたセーレは、グランタクトを突き立て告げた。

 「まだ答えてなかったわね。あなたの問いかけに。私は誰も導かない。誰かに与えられたものなんかじゃ、本当の意味で変わる事はできないから」
 「……ッ!」
 「それは自らの手で、掴み取るものよ!!」

 そう叫び、セーレは高く跳んだ。
 放たれた渾身の一撃は、巨神の胸に輝くコアユニットに深い傷をつけるのであった。
EPISODE10 再生への道「『其方の求める答えとはなんだ』『それは、手を伸ばせば誰にでもできる事なの』」
 ベルゲルミルの巨体が、火花を散らしながら大地へと沈む。横たわり、黄金に輝くその身体は今、光に包まれようとしていた。

 「何故だ……其方の求める人類など、ヒトには到底辿り着けるものでは……」

 ベルゲルミルは、コアユニットに立つセーレへ向かって語り続ける。

 「其方とて、我が主よりその力を与えられてこそ……其方こそが、地上への道を……何故……」

 セーレは巨神を一瞥すると、開かれていたゲートへと進んだ。
 そして、ゲートに剣を突き入れると、グランタクトを介して基幹システムに干渉を始めるのだった。

 「何を……する気だ……」
 「ゲートの起動条件を書き換えるの」

 セーレの瞳が蒼く輝く。
 そして、グランタクトを伝って、光はゲートへと浸透していった。

 「私たち人間は、あなたたちが求めるような理想の存在になる事はできない。そして、地上には私だけが戻った所で、意味をなさないわ」

 ゲートの上空にそびえる光の渦を見上げ、セーレは巨神に語り掛ける。

 「メインフレームが求める、ヒトの完全なる調和と融和。それは理想にすぎない。だけど……」
 「…………」
 「もう少しだけ、ヒトは優しくなれるはずよ。痛みや苦しみを完全に理解する事はできないけど、寄り添える事はできる……」

 振り返ったセーレは、巨神へ近づくと柔らかな笑顔を見せるのだった。

 「寄り添う、か……」

 戦闘時の鬼気迫る表情とは打って変わった少女に、ベルゲルミルはかつて自身が思い描いたヒトの在り方を想起する。

 「そう、か……我は一度は辿り着いた答えを、自らの手で摘み取ってしまったの……か……」

 暴走した巨神は、ようやく自身の過ちに気付く。
 レコンキスタとの戦いにも、道はあったのではないかと。
 辺りは既に陽が暮れようとしている。
 後悔に沈む声は、どこまでも物悲しく。
 夕陽に照らされた黄金の身体は、寂しげに鈍い光を放っていた。
EPISODE11 つなぐ物語「……我は待とう。其方の意思を受け継ぎし者が現れる、その時を」
 己が雷槌で破砕した大地と、焼き尽くし、灰塵へと帰してしまった人々。
 失ってしまったモノの大きさに、巨神は気付く事ができなかった。
 巨神の胸元に腰かけたセーレは、穏やかな声音で語りかける。

 「ベルゲルミル。傷つけてしまって、ごめんなさい」
 「……構わぬ。其方が阻止しなければ、我はこの世界を滅ぼしていたやもしれぬ」

 巨神がすべき事は、争いを生み出す事ではなかった。
 真に必要だったのは、ヒトの心を理解する事……。
 ベルゲルミルは、どこか自嘲気味に言葉を紡ぐ。

 「旧き人類の創造物から生まれた我もまた、ヒトの業からは逃れられぬという事か……」
 「どこまでもヒトは争い合うものよ。それはきっと、真なる人類であったとしても、ね」

 セーレの瞳は、深い悲しみの色に満ちているようにベルゲルミルには思えた。

 「だからこそ、其方の言う『互いに歩み寄る心』が必要なのだな……今の我なら、其方の考えも理解できよう」
 「理解してくれて嬉しい。……さぁ、ゲートの書き換えが終わったみたい」

 セーレが再びゲートの前に立つと、ゲートの光はグランタクトの光と共鳴するように煌めき、やがて消え去ってしまった。
 セーレは登りゆく光に想いを馳せる。

 「人はいつか……必ず地上へ帰るわ……必ず……」
 一途に希望を願うセーレの姿。
 ベルゲルミルには、その光景が眩しく思えていた。

 「私は、ううん、『私たち』は必ず地上へと帰る。その時……私はもうこの世にはいないかもしれない。けど、必ずあなたの願いを満たす者が現れるわ。だから、その時を楽しみにしてて」

 満面の笑みを浮かべるセーレに、ベルゲルミルはさも愉快そうに笑っている。

 「フ……随分と自信に満ちた笑みだ。だが、其方が言うのなら、間違いはないのだろうな。ならば……」

 そう言って、ベルゲルミルは淡い光に包まれながら、穏やかな眠りについた。
 雷槌の審判を受ける者の姿を、夢想し。
 少女の言う、その『時』が訪れるまで。

 「さよなら、ベルゲルミル……」

 セーレは光の中へと消えてゆく巨神を見届けると、ひとり、アプスの地を後にする。

 「綺麗……とても……」

 見上げた空には、満天の星空が光り輝いていた。

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コメント(21)
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コメント

  • チュウニズムな名無し No.105272256 ID:EA60DB1CD4 2020/12/14 (月) 00:35 通報
    スキル説明の薄字のところ草でしょ
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    1
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  • チュウニズムな名無し No.105272017 ID:74CC6D3AE5 2020/12/13 (日) 20:26 通報
    +3
    返信数 (1)
    1
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    • チュウニズムな名無し No.105270036 ID:1DFAA81C6E 2020/12/12 (土) 02:08 通報
      14.1のキャラ特有のギャグ感を持ちスキル側に押し付けられたから破壊の旋律は異様に産廃なのかな(謎理論)
      返信数 (1)
      0
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      • チュウニズムな名無し No.105269160 ID:4D99C30CE5 2020/12/11 (金) 17:10 通報
        >もう少しだけ、ヒトは優しくなれるはずよ。痛みや苦しみを完全に理解する事はできないけど、寄り添える事はできる
        正直ストゥムやディアン、ネルガルのストーリーでの印象が強すぎて「よりにもよってお前が言うの?」感が凄まじい
        このコメントに返信
        30
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      • チュウニズムな名無し No.105269051 ID:C9D9E527E8 2020/12/11 (金) 15:22 通報
        このストーリーから見るに 時系列は
        ネルガルとかセーレのシナリオ(CRYSTAL Ep.3)
        →ベルゲルミルのシナリオ
        →セラフィナのシナリオ(CRYSTAL Ep.4)
        →CRYSTAL Ep.7のシナリオ群
        →(遠い時代の流れ)→ソルナのシナリオ
        →SeelichTactのシナリオ群
        って流れになるのだろうか
        返信数 (3)
        3
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        • チュウニズムな名無し No.105268969 ID:F53C223DAA 2020/12/11 (金) 13:35 通報
          いつの時代でも
          正義というものはときに暴走する。
          そうならないためには、
          対話が大切なのだと学ばされる素晴らしいストーリー
          このコメントに返信
          23
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        • チュウニズムな名無し No.105268965 ID:4F14FE13AF 2020/12/11 (金) 13:32 通報
          みんなボスのボスボスしさに気を取られて見落としがちだけどブルーノヴァの天使たちがセラフィータとシエルによって生み出された、つまりソルナちゃんはセラフィータとシエルの子である可能性が
          つまりここに地上への転送ゲートを建てよう
          このコメントに返信
          18
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        • チュウニズムな名無し No.105268808 ID:D820BF3D33 2020/12/11 (金) 10:18 通報
          シズマが日本姓を名乗ってるのはゼーレタクトの時代では地上の再生が達成されているっていうことかな⋯
          このコメントに返信
          4
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        • チュウニズムな名無し No.105268777 ID:751AE40BE4 2020/12/11 (金) 09:28 通報
          むしとり少年って呼ぶのやめろ
          このコメントに返信
          3
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        • チュウニズムな名無し No.105268728 ID:B00672D809 2020/12/11 (金) 08:15 通報
          なるほど〜
          返信数 (1)
          13
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