中京大教授大内裕和氏による悪質な著作盗用問題で、あらたな事実が判明した。私は2013年10月に、大内氏らとの共著『日本の奨学金はこれでいいのか!』(あけび書房)を出版した。大内氏の執筆した1章のなかに、私が過去に雑誌『選択』で書いた記事と酷似した部分が見つかった。ここまではすでに報告したとおりである。
http://miyakekatuhisa.sakura.ne.jp/wp2/archives/4543
今回判明したのは、同書の発行直前の2013年10月に大内氏が行った2つの講演の中で、件の酷似部分を自身のネタとして話していたという事実だ。うちひとつ(大阪弁護士会の講演)については、大阪弁護士会が開示した講演録からすでにわかっていたが、同時期の別の講演でも同様の盗用行為をしていたことが、大内氏が開示した講演の要約によってはっきりした。
問題の講演は、2013年10月12日の大阪弁護士会主催の講演と同月14日の「反貧困世直し大集会」の講演だ。大内氏が作成したそれらの講演レジメ(要約)には次の記述がある。
2010年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところに行く。この金の行き先は銀行と債権回収専門会社
2010年度期末で民間銀行からの貸付残高はだいたい1兆円で、年間の利払いは約23億円です。サービサーは同年度、約5万5000件を日立キャピタル債権回収など2社に委託し、16億7000万円を回収していて、そのうち1億400万円が手数料として払われている→「金融事業」かつ「貧困ビジネス」としての奨学金。
以下は、私が雑誌『選択』2012年4月号に寄せた原稿である。
◆『選択』三宅記事原資の確保であれば元本の回収がなにより重要だ。ところが、日本育英会から独立行政法人に移行した04年以降、回収金はまず延滞金と利息に充当するという方針を頑なに実行している。10年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところへ消えている。この金の行き先のひとつが銀行であり、債権管理回収業者(サービサー)だ。10年度期末で民間銀行からの貸付残高はざっと1兆円。年間の利払いは23億円。また、サービサーについては、同年度で約5万5千件を日立キャピタル債権回収など二社に委託し、16億7000万円を回収、そのうち1億400万円が手数料として払われている。
(101頁3段目13行目〜4段目4行目)
いかがだろうか。大内氏の講演レジメが三宅原稿を元にしていることは歴然としているだろう。とくに「2010年度期末…」以下の記述内容は当時私が日本学生支援機構などに取材して得たデータであり、同誌がはじめの発表だった。他者が発表済みのデータをなんら引用の注釈もなく使うのは研究倫理違反である。
うっかり無断引用してしまったというのならまだよいが、大内氏の場合は違う。
私が大内氏の盗用について最初に気づいたのは、大内氏が2017年に刊行した『奨学金が日本を滅ぼす』の記述だ。そのなかに、2013年に出した『日本の奨学金はこれでいいのか!』中の私の記述を1ページ以上にわたってほぼ丸写しにした(同一ではないが酷似している)部分が見つかった。盗用ではないかと大内氏に説明を求めたところ、大内氏は、「盗用剽窃にはあたらない」として、上の2つの講演内容を根拠にこんな釈明をした。
〈表現についても、貴殿の『日本の奨学金はこれでいいのか!』2章発表以前に、拙著『奨学金が日本を滅ぼす』のご指摘のか所で使用している表現は、私が自分の講演や雑誌論文、雑誌インタビュー、記事、著書などで発表しています。〉(大内氏の「回答書」より)
・大内氏の「回答書」についてはこちら。
http://miyakekatuhisa.sakura.ne.jp/wp2/archives/4269
盗用はおろか引用ですらない。「私(大内氏)が自分の講演」で「発表し」た内容だというのだ。文章表現もデータも、まさか、偶然一致したとでもいうのだろうか。あり得ない話である。
自分の研究成果と他人のそれとの区別がつかないとすれば、学者の風上にもおけない、とんでもない「研究者」である。なぜこんなことをやる人物が大学教授の地位に居続けられるのか、疑問は深まる。