ラム(名探偵コナン)

登録日:2020/12/16(水) 19:19:05
更新日:2020/12/24 Thu 18:11:28
所要時間:約 10 分で読めます





キュラソー…君には色がない…あるのはただ純黒の闇

その闇が君を苦しめているのなら他の色に染まればいい…


名探偵コナン』の登場人物。
CV:???*1
作中では「RUM(ラム)」と表記されることも多い。

●目次

【概要】

黒の組織にて「あの方」と呼ばれるボスの側近を務める参謀で、灰原哀曰く組織における事実上のNo.2。
原作単行本第85巻収録『緋色の真相』のラストにおいて、組織に潜入中の水無怜奈から送られてきたメールによって初めてその存在が明言された。
劇場版『純黒の悪夢』で原作に先駆けて初登場を果たす。また、同作では腹心の部下であるキュラソーを主軸として物語が描かれた。


【人物】

組織のNo.2とまで言われるだけあって、他のコードネーム持ちの幹部達とは一線を画す地位に君臨しており、彼らに命令を下す権限を持つ。赤井秀一によれば「ジン以上の大物」とのこと。
それ故にあのジンまでも「ラムからの命令は確実に遂行しなければならない」と宣言し、
更にあの方のお気に入りとして権勢を振るうベルモットですら、ラムの登場時には(おのの)く様子を見せたばかりか、誰に対しても不遜な態度を崩さない彼女にしては大変珍しいことに丁寧語で受け答えをしていたほど。

主にあの方の補佐や実働部隊の後方支援に従事しているようで、機械で変えた声で通信機越しに様々な指令を送ることはあっても、任務の現場に本人が直接出向くことはほぼ皆無の様子。
そのため組織の幹部級のメンバーですらラムの姿を実際に見たことのある者はほとんどおらず、
以前組織に在籍していてコードネームまで与えられていた赤井と灰原に加えて、現在所属しているウォッカ、キャンティ、キール、バーボンも異口同音に「ラムがどんな人間なのかよく分からない」と語り、朧気で断片的な特徴しか把握していない。
赤井が組織に身を置いていた頃、僅か2,3回程度しかその名を耳にした記憶が無いということからも、如何に雲をつかむような底知れない存在かということが認識出来る。

その外見に関しては「屈強な大男」「女のような男」「年老いた老人」などと様々な噂が組織内で囁かれている。中にはこれら全てが影武者なのではないかと推測する者もいるらしい。
唯一共通しているのが、何らかの事故によって左右どちらかの目を失い、義眼を嵌めているということのみ。
謁見したことのあるジンにウォッカが聞く所によれば、これらの人物像はどれもラムが護身用に流した誤情報(ブラフ)であり、片目が義眼であるという一点だけが事実の模様。そして「顔を変えてふざけた名前を名乗りながらどこかで活動している」のだという。

ウォッカはラムと対面したことが無いながらも、ジンから話を聞いた上でのイメージに基づいて「RUMの旦那」と呼ぶこともあったりするなど、彼なりに敬意を払っている様子が散見される。
逆にジンはあの方を敬う一方、ラムに対してはあまり良い感情を抱いていないのか「17年前にラムが抜かった仕事(ころし)なんざ知ったことか」と吐き捨てていた上、兄貴もあんまり人のこと言えませんぜ……。
ウォッカがラムの采配を繰り返し称賛した時には若干苛立った様子を見せていた。*2

性格は、安室透曰く一言で表せば「せっかち」。実際作中では、彼に与えた任務を再三メールで急かす様子が垣間見られる。
慎重居士で石橋を叩き過ぎて壊してしまうタイプだというあの方とは一見対照的なようにも思えるが、短気ではあれども短慮ではないらしく、
キュラソーから組織のスパイに関するメールが再度送られてきた際にもそれを鵜呑みにせず、本当に彼女が自らの手で送信した物かどうか確認が取れるまで待つようにとジン達に釘を刺している。*3
基本的には自分より格下の相手にも丁寧語を交えた冷静な口調で接するものの、時折少々荒っぽい言い回しを用いることも。


【ラムと疑わしき者達】

江戸川コナンは当初、長野県警の大和敢助がラムなのではないかと疑っていたが、ゲーム『とびだせ どうぶつの森』の中で、プレイ中の原作者・青山剛昌本人がその可能性を否定している。
まあ仮に彼がラムだとすると、自身の実体をひた隠しにしていたせいで劇場版『漆黒の追跡者』では同胞のアイリッシュに気絶させられてしまったという大変間抜けな事態に陥っていたことになってしまうので妥当な結果と言えよう。

ところで、一時期には群馬県警の山村ミサオがラムという説も少なからずファンの間で提唱されていたのだが、
彼に組織との繋がりは一切無いと青山先生が断言したことにより、無事味方であることが確定した。ついでにあのヘッポコぶりは演技ではなく本物だということも確定した。(この説について詳細を知りたい方は【山村 万年筆】での検索を推奨。)

先生がそれを語ったのは、黒の組織について振り返る公式解説書『名探偵コナンBLACK PLUS SDB』という書籍であり、同書によるとラムは次の三名の中の誰からしい。

現警視庁刑事部捜査一課管理官。階級は警視。
顔の右側に火傷を負っており、右目に義眼を入れている。

帝丹小学校の教諭。コナン達のクラスの副担任。
コナンと灰原は、彼女の日常での振る舞いから実は右目が見えていないのを隠しているものと解釈している。

板前。毛利探偵事務所の隣に位置する米花いろは寿司という店で働く。
酷いできものが左目に出来ているという理由で左目に眼帯を付けている。


【過去】

いつ頃から黒の組織に属していたのかは定かではないが、17年前には組織の構成員として暗殺任務を請け負っていたことが判明している。
FBIやCIAにコネクションを持つアメリカ人の資産家アマンダ・ヒューズ、そして将棋棋士の羽田浩司の二名をアメリカのホテルの客室にて初期型のAPTX4869で毒殺。*4
(補足しておくと、羽田浩司は赤井の実弟である羽田秀吉の義兄に当たる。)

この任務でラムは何らかの重大なミスを犯してしまったとのことで、本来であれば組織の掟で粛清されていてもおかしくない。
けれども『名探偵コナンBLACK PLUS SDB』に掲載されている青山先生への質問コーナーでは、「ラムがそれでも始末されないのは何故?」というファンからの疑問に対して「No.2だから」だと先生は答えていた。
この回答によりラムが17年前の時点で既に組織の二番手の座に就いていたことが伺える。よって組織に仕えた年数もおそらく相当な物なのだろう。

ラムの失敗がどのような物だったのか詳細は未だ不明。
この17年前の事件で当時アマンダのボディーガードを務めていた「浅香」という人物が容疑者として挙がっていたが、それ以来今に至るまで行方不明になっているらしい。
しかもアマンダ以外の人間とは一切接触しておらず、年齢や性別を初めとする素性を知る者は現在まで一人もいないのだそうだ。唯一残されていた写真も顔自体はほぼ写っていなかった。
この浅香なる人物がラムのミスと何らかの関係があるのかもしれない。

更にもう一人の被害者である羽田の部屋にはアルファベットを用いたダイイングメッセージが残されていた。
コナンと赤井は一時それを「ASACA RUM」と解読し、浅香とラムの関係に着目する。
なおこのメッセージについては後に別のとんでもない人物を示唆している可能性が浮上した。


【劇中での活躍】

前述の通り、初登場は『純黒の悪夢』。
直属の部下のキュラソーを使役して、NOC(スパイ)リストを入手。次いで紆余曲折を経てキュラソーが裏切ったと報告された時には彼女を葬り去る許可をジンに与える。

終盤のキュラソーの回想では彼女を配下に引き入れた経緯が判明。組織にとって重要な機密情報*5を彼女が目にしてしまったことで、ベルモットに危うく処分されそうになっていた所をラムがモニター越しに語りかけたのが始まりだった。
モニターに顔は映し出されず、代わりに「Code name RUM No.002」と表示され、組織のアジトの一室と思われる部屋全体がサイバーチックな様相を呈しているなど、ラムの異質さが際立っていた。
この時ラムの声を聞いてマツコ・デラックス氏を思い浮かべた人もいるとかいないとか。


一方原作では、かつて組織の手で抹殺したはずの工藤新一が生存して京都を訪れていたというSNS上のゴシップを訝しみ、真偽を調査するようバーボンにメールで指令を出すと共に、
組織にとって脅威になり得る実力者と判断した父親の工藤優作をベルモットに探らせるなどといった暗躍を進めた。


その後は、第100巻収録予定のエピソードにてFBI捜査官の連続殺害計画を主導するべく作戦に参加する。

待て…私の話を聞きなさい…

ここでラムは司令塔としての本領を遺憾無く発揮。
  • FBIの連絡用の暗号に使われていたローマ字表記が、今までのヘボン式(FU())から訓令式(HU())に切り替わっているのを根拠に、別人(ジョディ・スターリング)が暗殺者を誘い出すため偽の暗号文を書いたと見抜いて逆に罠を張る*6
  • 逃走中のFBI(アンドレ・キャメル)が車ごと海に転落したと聞くや否や、時期と時間帯も考慮して東京湾の海流が「海猿島」という無人島の方へ向かっていると推算。彼がそこまで泳いで逃げたと特定する*7。前以て追跡用のクルーザーも手配していた
こうしたラムの手腕に作中随一の推理力を持つ優作すらも警戒を強めざるを得なかった。

()くして前線で指揮を執るジンの機転も相まって、罠にかけた捜査官達を次々と血祭りに上げていった挙句、死に物狂いで逃げ惑うキャメルも着々と追い詰めていく。

海猿島キャンプ場のカフェでコーヒー豆が大量にぶちまけられているのに袋だけが消えていることに目を付けたジンは、キャメルが麻袋の上に土砂や葉っぱなどを振りかけて袋の中に隠れる(土遁の術の要領)ことで島のどこかに息を潜めていると推測する。
ただ、そうはいっても島中の地面を探し出すのにはかなりの時間を要する上に夜が明けて島の関係者が来るまで猶予はもうあまりない。
そこでラムは森に放火してキャメルを炙り出す強硬策を提案した。これには探索時の指紋や銃弾などの様々な痕跡を隠蔽しようとする意図もあったものと思われる。

優作も「自分がもし組織側の人間ならばその手段を取るだろう」と逸早くこれを読み、コナンと赤井がキャメルに警告。火の手が回り切って焼け死ぬ前に彼を森から避難させることに成功する。
だが、キャメルは桟橋付近で待ち構えていたキャンティに見つかってしまい、銃撃を喰らって万事休す。
…かと思いきやコナンと赤井の策のおかげで、何とか組織の側には自分が死んだと誤認させつつ九死に一生を得るのであった。

火災を探知した消防艇が来たことで組織の面々も島から離れる。
一段落した所で、コルンは今しがた目撃したキャメルの顔を2年程前にラムから送付された写真で見ていたことを思い出したと語り出す。


果たしてラムはその頃に何故キャメルの写真を彼に送っていたのであろうか?
ラムとキャメル─────両者の間に存在する過去の接点とは……?



追記・修正を要求する
Time is money!
急げよ バーボン

─RUM─





















以下、正体に関わる単行本未収録の重大なネタバレ

単行本派&テレビアニメ派の方はご注意ください


















【その正体】



今回の件はあの方からお叱りを受けました…

少々目立ち過ぎだと…


明け方に都内を走る一台のロールス・ロイス・ファントム。
その後部座席でラムはジン達と通話していた。前には運転手およびボディーガードと思しき二人組の従者*8を乗せている。
そして目的地に到着すると、かつら、付け(ひげ)、付け歯、眼帯を装着して毛利探偵事務所を睨み上げながら目の前の寿司屋に足を踏み入れる。



ヘイ大将!仕込み手伝いやすぜ!!



その人物は板前、脇田兼則だった…。

彼が2年前、コルンにキャメルの写真を見せた経緯も回想の中で明らかにされてゆく。

当時、組織にスパイとして潜り込んでいた赤井はジンとの任務に漕ぎ付け、それを利用してFBIはジンを捕縛しようとしていた。
しかし、赤井とジンの待ち合わせ予定の場所に杖を持った老人が座り込んでおり、危ないからすぐ立ち去るようにとキャメルは善意で呼びかけたのだが、皮肉にもその老人が組織の一員だったため計画が敵にバレてしまった。その後ジンが来ることは無く、FBIの作戦は失敗に終わる。
以降、赤井は組織から追われる身となり、灰原の姉にして赤井の恋人だった宮野明美は彼を組織に引き入れた危険分子として粛清されるという悲劇的な結末を辿ることとなった。
…と、ここまではかつて第58巻収録『赤と黒のクラッシュ』中盤で既に語られていた内容である。

─────ところが、この話には続きが隠されていた。

実はその密告者の老人こそがラムだったのだ。
ラムはその場で赤井とキャメルの写真を撮影*9して、この二人をもし見たら射殺するよう見張り役のコルンに指示していたのだった。
何故組織の重鎮たる彼が自ら民間人に扮して鎌をかける役目を買って出たのかは判然としないが、おそらく予てより赤井(ライ)を怪しんでいて、その腹の内を己の目で見極めようとする意向があったのではないかと推察される。

結論として、意外にもラムは作中のかなり早い段階で一瞬だけその姿を見せていたということになる。
どうやら青山先生はこの伏線を何年も前から上述の『とびだせ どうぶつの森』の中で仄めかしていたようで、2014年の9月1日には「じつはもうラムはでてたりしてw」とゲーム中にコメントを出していた模様。

更に言えば一体何の因果か、「屈強な大男」「女のような男」「年老いた老人」というラムが流した3つの誤情報は、
例の待ち合わせ場所に居合わせた「キャメル」「当時長髪だった赤井」「腰を曲げて杖をつく演技をしていたラム」に全て合致しているようだ。
これもまたラムへと繋がる伏線の一つだったと考えられよう。


現在、新一の生死に疑念を抱いているラムがどのような動向を見せるのか……今後の展開が待たれる。


【余談】

  • ラムとは元来サトウキビの廃糖蜜または絞り汁を原料として作られる蒸留酒である。
    作中でもコナンが軽く触れていた通り、17世紀頃から壊血病の特効薬と信じられていたが故にカリブ海近辺の海賊が愛飲していたという。(※壊血病はビタミンCの長期的な欠乏が原因なので実際はあまり効果がありません。)
    海賊=眼帯をした海の男というイメージに則るならば、眼帯を付けつつ寿司屋として海の物を扱う彼に結び付くのも道理と言えなくもない。

  • ラムの安室へのメールで文章中に挿入されていた「Time is money」という一文は、日本語では「時は金なり」を意味する。
    「時は金なり」をローマ字にすると「tokiwakanenari」。更にこれを並べ替えれば「wakitakanenori」→「脇田兼則」となる。
    また、他の並べ方をすると「tekiwakonanrai」→「敵はコナン、ライ」ともなる。

  • 青山先生はラムがコナン作中に登場する遥か以前に「漫画『うる星やつら』のラムがヒロインとしてお気に入りなので、ラムのコードネームをあまりコナンで使いたくないが、いずれ使ってしまうだろうからその時は笑ってほしい」という述懐を同作の新装版第21巻に寄稿している他、
    同じ巻で『うる星やつら』のラムがジンやウォッカと共に組織のメンバーとして描かれた挿絵も載せている。現在は『名探偵コナンカラーイラスト全集 1994-2015』でもその絵を見ることが出来る。
    ちなみに作中で灰原がコナンにラムの話を初めて振られた際には「だっちゃ?」「いや漫画のキャラじゃなくて」とある意味ギリギリな会話を繰り広げていた。しかも背景にもちゃっかりそっちの方のラムが…。

  • コナン世界でロールス・ロイスに乗る人間は彼が初めてではなく、以前にもこの事件の被害者が自家用車としていたりする。
    とりあえず静電気にはご注意を。



追記・修正は寿司屋に潜入するため板前の修業を頑張った方にお願いします。
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最終更新:2020年12月24日 18:11

*1 テレビアニメのエンディングではラムの声優の欄がスタッフクレジットでこのように記載されており、劇場版の場合は役名の右側が空欄になっている。

*2 ただし先述のように『純黒の悪夢』でラムから任務を仰せつかった際には「ラムからの命令だ。確実に遂行しねえとな」と意気込んでいたので、何だかんだ上に立つ人間としては認めているようにも見えなくもない。あるいはたまたま彼の気分に合う命令だったのだろうか?

*3 事実このメールは、阿笠博士がキュラソーのスマホを解析するため預かっていた間に彼女を装って送った物だった。

*4 厳密に言うとアマンダを殺した方法は明らかになっていないが、当時死因を特定することが出来なかったという記述を見る限り、彼女にもこの薬が使われた可能性が高い。

*5 キュラソーが何を見てしまったのかは全くの謎だが、灰原の正体がシェリーだと即座に見破っていたのを鑑みると、APTX4869に関連する内容だったのかもしれない。

*6 彼女の名誉のために擁護しておくと、赤井は事前にチェックしたのに気付けなかった自分にも非がある旨を口にしており、おそらく謙遜込みではあろうが優作さえも事前に自分が見たとしても敵のように瞬時に見抜けていたか分からないと語っている。

*7 島に流れ着いているという確信を得られたのは、海猿島でキャメルが起こした火が消える瞬間をジンが目撃していたおかげだったようだが。

*8 組織の部下なのか私的な使用人なのかは不明。

*9 写真は二人の正面から間近で撮られた物であり、衣服、杖、左目のいずれかにカメラを仕込んで隠し撮りしていた可能性が考えられる。