体脂肪を極力付けずに筋肉を着実に増やす増量方法「 リーンバルク 」で賢く効率的にバルクアップしよう。
リーンバルクの概念を日本に最初に導入した”元祖ブログ”として、リーンバルクの具体的方法を徹底的に解説します。
本ブログを開設以来、本当にたくさんの人たちにご愛読頂き、多くのメッセージを頂いております(上記がほんの一例)。
本記事で紹介するリーンバルクとオーバーロードの原則(筋肉を確実に増やすための第一原則)を実践された読者の方の実際の成果を紹介します。
約二ヶ月間にわたるリーンバルクの実施により、体組成が大きく変化していることが見て取れる(正確に言うと、のちに詳しく説明するリーンバルクの第一ステップである、減量課程における体組成改善の成果である)。
このように、“正しい方法”で増量およびトレーニングを継続すれば、二ヶ月間で体組成を大きく改善することができるのである。
それではさっそく、理想の体型に着実に近づくための、シンプルかつ単純明快なリーンバルクの方法を身につけて、筋肥大を確実に達成していこう。
《リーンバルク=最も効率的な増量方法》
これまでに発表された研究報告[1]により、食べて食べまくる増量方法(ダーティーバルク)と体脂肪を増やさない増量方法( リーンバルク )とでは筋肥大効率(筋肉の増加速度)には大きな差が無いことが明らかとなっている[3]。
むしろ、リーンバルクで増量を行うことで、
- 増量期間を長く設けられる
- 減量期間を最小限に抑えられる
- 筋肥大効率を高く維持できる
- 体脂肪の蓄積を最小限に抑えられる
- テストステロン値を高く維持できる
- 食費を安く抑えられる
というような複数のメリットを享受することができる。
一方、一昔前まではごく一般的であった(ドカ食いをして増量を行う)ダーティーバルクには、
- 筋肥大効率を低下させる
- 体脂肪が蓄積しやすい体質になる
- テストステロン値が低下する
- 筋肉を増やせる増量期間が短くなる
- 増量期間の見た目が悪くなる
といった多くのデメリットがあることが分かっている。
それだけでなく、ダーティーバルクを行った後は減量期間を設けることにより、体脂肪を落とす必要があるが、この減量期間中に筋肉量も少なからず落ちてしまうのは避けられないことである(減量期間を最小限に抑える取り組みこそが、長期的な視点で、筋肥大効率を最大限に高める方法なのである)。
つまり、筋肥大効率を最適化しながらも、年中を通してシックスパックを維持したまま効率的に増量が行えるリーンバルクを採用しない手は無いのである。
それでは早速、最も合理的な増量方法である、リーンバルク の具体的な手順を詳しく解説しよう。
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リーンバルク の手順
リーバルクは全部で5ステップある。
この5ステップを1サイクルとし、一定期間ごとにこのサイクルを繰り返しすことで体脂肪を極力付けずに着実に筋肉を増やしていく(筋肥大)ことができる。
リーンバルクの5ステップ
- 必要に応じてまず減量する
- リーンバルクに必要なカロリーを計算
- PFC(マクロ)バランスを設定
- 体重を追跡する
- 体脂肪率が上限に達したら1.の減量を再度行って体脂肪を下げる(ミニ減量)
そしてこの5ステップを確実にこなしていけば「増量期なのに筋肉が増えない!」や「増量期で体脂肪が無駄に付き過ぎる!」などといった悩みは全て解消されるだけでなく、一年を通して低体脂肪率を維持したまま確実に増量を行うことができる。
リーンバルクの5ステップ
1.必要に応じてまず減量する
リーンバルクとは、体脂肪を極力付けずに筋肥大を行う方法である。
増量すべきか減量すべきか を確実に見極める方法(ガイドライン)
よって、現在の体脂肪率が15%を超えている場合は、最初に体脂肪率を10%~13%まで下げる必要がある(減量)。
また、体脂肪率が高い状態でさらにバルクアップを行うのは筋肥大効率が非常に悪いので、そういった意味でも体脂肪率が高い場合はまず減量を行うことが推奨される。
今回は、リーンバルクの方法についての記事なので、減量方法に関する詳しい解説については減量の完全ガイドのページをご覧ください。
2. リーンバルク に必要なカロリーの計算
ステップ1で体脂肪率を10%前半まで落とすことに成功したら、さっそくリーンバルクに必要なカロリー数を計算してみよう。
リーンバルクに必要なカロリー数の計算方法
まずは以下の式(ハリスベネディクト方程式)に自分の体重、身長、年齢の情報を入力して自分の基礎代謝量を求める。
計算が面倒な方はこちらのサイトで基礎代謝量を自動計算してくれるのでぜひ利用して下さい。
自分で計算したい物好きな人は以下の式に従って基礎代謝量を計算してもらいたい。
例)体重70 kg、身長175cm、年齢26歳の場合
基礎代謝量=13.4×70(kg)+4.8×175(cm)-5.68×27+88.4=1719(kcal)となる。
そして自分の基礎代謝量を求めたら、次はその基礎代謝量に運動強度依存定数Aをかけて1日に自分が消費する総カロリー数(メンテナンスカロリー)を求めよう。
運動強度依存定数Aの値は以下の通り。
運動強度依存定数A
オフィスワークを主とし普段運動をほぼ行わない者
1.2
軽強度の筋トレもしくはスポーツを週に1~3回程度する者
1.375
中強度の筋トレもしくはスポーツを週に3~5回程度する者
1.550
高強度の筋トレもしくはスポーツを週に6~7回程度する者
1.725
高強度の筋トレもしくはスポーツを毎日行いかつ肉体労働に従事しているまたは、1日2回の筋トレを行う者
1.9
つまり、メンテナンスカロリーは以下のように表すことができる。
メンテナンスカロリー数
= 基礎代謝量 × 運動強度依存定数A
例えば、基礎代謝量が1719 kcalで、高強度の筋トレもしくはスポーツを週に6~7回程度する人の場合、1日当たりの総消費カロリー(メンテナンスカロリー)数は1719×1.725=2965 kcal となる。
そして、いよいよリーンバルクに必要となる摂取カロリー数が求まる。
メンテナンスカロリーとは筋肉が減りも増えもしない、いわば体重をキープするために必要なカロリー数であり、リーンバルクで筋肉量を着実に増やしていくためにはこのメンテナンスカロリーにさらに250 kcalを上乗せした値をリーンバルクに必要な摂取カロリー数として設定する。
このように、メンテナンスカロリーに少しの余剰カロリー(250 kcal)を追加して摂取することにより、体脂肪を極力増やさずに筋肉量だけを効率的に増やす増量が可能となるのである。
例えば、メンテナンスカロリーが2965 kcalの場合、リーンバルクに必要となる摂取カロリー数は、
2965+250 =3215 kcalとなる。
ちなみに私の場合、トレーニングの継続期間が8年を超え、筋肉量の増加速度が極めて緩やかであることを考慮し、体脂肪の蓄積を極限まで抑えるために、リーンバルク時の摂取カロリーはメンテナンスカロリー+150 kcalに設定している(先述のとおり、大抵の場合はメンテナンスカロリー+250 kcalでOK!)。
これまでのプロセスを簡潔にまとめると以下のようになる。
リーンバルクに必要なカロリー数
= 基礎代謝量 × 運動強度依存定数A + 250 kcal
これで、リーンバルクに必要なカロリー数を求めることができた。
次に、このカロリーをどの栄養素からどんなバランスで摂取するのが理想的なのかを見ていこう。
3.PFC(マクロ)バランスを設定/ リーンバルク に必要なカロリーの計算
リーンバルクに必要なカロリーを求めたら、次はPFC(マクロ)バランスを決定しよう。
リーンバルクに理想的なP(タンパク質)、F(脂質)、C(炭水化物)のバランスは以下のようになる。
理想的なPFCバランス
P(タンパク質)
体重(kg)×2~3g
F(脂質)
摂取タンパク質(g)の半分(g)
C(炭水化物)
残りのカロリーを炭水化物から摂取
(例)体重84 kgの管理人の場合、リーンバルクに必要な摂取カロリーは約3450 kcalである。
この時、P(タンパク質)、F(脂質)、C(炭水化物)からそれぞれ何 kcal摂取すればいいのかを実際に計算してみよう!
タンパク質の摂取量について
まずはP(タンパク質)について。
P(タンパク質)
- 質量換算(体重×3 gのタンパク質を摂取すると仮定)
=84×3=252 g(のタンパク質摂取が必要)
- カロリー換算
252×4=1008 kcal
上の表からも分かる通り、体重84 kgの管理人が1日に必要とするタンパク質は252 g(=84×3)である。
タンパク質252 gをカロリーに換算するにはタンパク質1 gあたりのカロリーが4 kcalであるということを考慮して、252 gに4をかけた値、つまり(252×4=)1008 kcalがタンパク質から摂取すべきカロリー数ということになる。
脂質の摂取量について
次はF(脂質)について。
F(脂質)
- 質量換算(摂取タンパク質の半分量の脂肪を摂取)
252 ×1/2=126 g(の脂肪摂取が必要)
- カロリー換算
126×9=1134 kcal
ここでも同じ手順を踏む。
管理人が1日に必要とする脂質が126 gであることが分かったところで、次はこの脂質126 gをカロリー数に換算する。
脂質126 gをカロリーに換算するには脂質1 gあたりのカロリーが9 kcalであるということを考慮して126 gに9をかけた値、つまり(126×9=)1134 kcalが脂質から摂取すべきカロリー数ということになる。
炭水化物の摂取量について
そして、最後に求めるのがC(炭水化物)。
C(炭水化物)
- カロリー換算
={総摂取カロリー-(タンパク質のカロリー数+脂質のカロリー数)}
= 3450-(1008+1134)=1308 kcal
- 質量換算
1308÷4=327 g
タンパク質と脂質のそれぞれから摂取すべきカロリー数を求めたところで最後は炭水化物から摂取すべきカロリー数を求めよう。
炭水化物から摂取すべきカロリー数は総摂取カロリー数からタンパク質と脂質のカロリー数を差し引いた残りのカロリー数となる。
つまり以下の式となる(上の式と同じ)。
炭水化物のカロリー数
=3450-(1008+1134)=1308 kcal
そしてこの式から炭水化物から摂取すべきカロリー数が1308 kcalと分かったところで、次はこのカロリー数を炭水化物の量(g)に換算する。
ここで炭水化物1 gあたりのカロリーが4 kcalであるということを考慮して1308 kcalを4で割った値、つまり(1308÷4=)327 gが1日に必要となる炭水化物の量となる。
これでリーンバルクに必要なPFCバランスを全て求めることができた。以下の表にまとめてみる。
管理人のリーンバルクに必要なPFCバランス
- タンパク質:252 g(=1008 kcal)
- 脂質:126 g(=1134 kcal)
- 炭水化物:327 g(=1308 kcal)
そして、このPFCバランスを目安にしながら食事管理を行うことがリーンバルクを成功させるカギとなる。
4.体重を追跡する
<関連記事>
すなわち、体重80 kgの上級トレーニーの場合、1ヶ月間に増やすことのできる筋肉量はせいぜい約200~400 gとなる(週あたりに換算すると50~100 g増量ペース)。
したがって、ステップ2で導き出したリーンバルクに必要はカロリー数を日々の食事から摂取し、週単位で体重の増減を追跡しながら体重が増加していることをまずは確認し、月当たりの体重増加のペースが500~(上限)1 kgであれば、リーンバルクは順調に進んでいると言って良い。
体重増加が上記のペースを遥かに超えるペースで進んでいる場合は、摂取カロリー数から100~200 kcal差し引いたカロリーを摂取し、翌週に様子を見る。
週単位で体重に増加が見られない、または減少している場合は、現在の摂取カロリーに100~200 kcal上乗せしたカロリー数を摂取し、翌週に様子を見る。
ところが実際のところ、日々の体重の変動を追跡し続けるのはかなり面倒だし続かない。
そこでおすすめなのが、体重計にほんの数秒乗るだけで体重・体脂肪率のデータを自動的に記録し Bluetooth/Wi-Fi経由でスマホに自動同期してくれるWithingsのスマート体重計である。
以下に示すグラフは、私が2017年にこのスマート体重計を購入して以来蓄積し続けた自身の体重増減の推移である。
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上のグラフからも分かるように、体重を日々記録することにより、体重を思いのままにコントロールできるようになる。
参考までに、過去に私が行ったリーンバルク(2年弱)の成果を紹介しよう。
この2年弱にわたるリーンバルク間に減量(1~2ヶ月程度のミニ減量)は2度しか行っていない。リーンバルクの最大のメリットは何と言っても「脂肪を極力付けずに着実にバルクアップできる点」に尽きる。
5.体脂肪率が上限に達したらステップ1(ミニ減量)を再度行う
リーンバルクを行ったとしても、筋肉量だけでなく体脂肪量も少しずつ増えていくので、ある一定期間が経過したら体脂肪を初期値(10%台)に戻すためのミニ減量(プチ減量)(おすすめ記事)を行う必要が出てくる。
通常は3~6ヶ月単位あるいは、体脂肪が15~20%に達した時点でミニ減量を検討すると良い。
リーンバルクで体脂肪を極力付けずに増量を行っているので、減量期間は数週間から1~2ヶ月程度の短期間で済むはずである。
上図(体重増減の推移)からも分かるように、リーンバルク期間(赤色の期間)とミニ減量期間(黄色の期間)を交互に設けることによって、年中を通して体脂肪率を低く維持したまま効率的に筋肥大を達成することができるのである。
また、このように日々のデータを蓄積しておけば、増量や減量に対するモチベーションを高く維持できるだけでなく、リーンバルクとミニ減量を繰り返し行うことで、増量や減量をより効率的に行えるようになってくる(ノウハウを学び、自由自在に体重をコントロールできるようになる)。
また、現在ではタニタ食堂でお馴染みのタニタから、 筋肉量を筋肉部位別に正確に測定することのできる体組成計が発売されている。
このボディスキャン(体組成計)を使用すれば、日々のトレーニングの成果や減量の進み具合を数値で確認するすることができるのでトレーニングに対するモチベーションを高く維持することができるようになる。
興味のある人は是非試してみて下さい。
私は、実際のところ、このタニタの体組成計とほぼ同等の分析結果を得られる業務用体組成計、インボディ(Inbody)を定期的に使用し、筋肉増加の推移を10年間にわたり継続的に追跡している(下の図は私の実際の筋肉増加の推移)。
通常、インボディ測定は有料であることが多く、私が住むオーストラリアでは、一回の体組成測定に25ドルほどの費用が掛かってしまうので、家にタニタの体組成計があれば、費用を気にすることなく毎日測定することができるので長い目で見れば、このタニタの体組成計は、非常に合理的な投資であると考えられる。
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少し話が逸れましたが最後に、私がつい最近行ったミニ減量の例を紹介します(下写真)。
2ヶ月間のミニ減量で体重は、約88 kgから83 kgに減った(5 kg減)。
<参考>【 ミニ減量 】リーンバルクでつき過ぎた脂肪を効率的に落とすミニ減量の具体的方法
<参考>筋肉量を減らさずに体脂肪だけを減らす減量方法|5つのポイント
それでは最後に、リーンバルクのサイクルをもう一度おさらいしておこう!
リーンバルク の具体的手順のまとめ
それでは最後に、リーンバルクの具体的手順をもう一度おさらいしておこう。
リーンバルクのサイクル
- 必要に応じてまず減量する
- リーンバルクに必要なカロリーを計算
- PFC(マクロ)バランスを設定
- 体重を追跡する
- 体脂肪率が上限に達したら1.の減量を再度行って体脂肪を下げる(ミニ減量)
このリーンバルクのサイクルを一定期間ごとに繰り返すことにより、余分な体脂肪を極力つけることなく、年中を通して低体脂肪率を維持しながら筋肥大を最大限に加速させることができる。
さあ、リーンバルクで体脂肪を付けずに筋肉を着実に肥大させていこう。
減量期のカロリー設定とPFCマクロバランスの設定方法については以下の関連記事を参考にして下さい。
《参考文献》
[1] Garthe.I, et al (2013) Effect of nutritional intervention on body composition and performance in elite athletes
[2] Rohrmann S, et al (2011) Body fatness and sex steroid hormone concentrations in US men: results from NHANES III
[3] Garthe I, et al (2013) Effect of nutritional intervention on body composition and performance in elite athletes.