たぬき「なんだこんな山奥に…」ガサガサッ

枝を掻き分け雑木林を抜けると、一軒の家が建つ崖に出た。家の向こうには青空や緑の山々が見える。

たぬき「はぁ…ここか…やっと着いた…」

1週間前に届いたのは一通の手紙だった。封にしてあるのは今や一流のデザイナーとなったひんすけのブランド紙。送り主はスペック。内容としてはキャンプ創立10周年を祝っての晩餐会の招待状であった。
今やキャンプは5000人の会員を超え、入りきれなくなったメンバーはプレハブのようにキャンプ2号、3号と部屋を増やして過ごしている。各々の部屋主は1型、ボートん、もくちゃん、スペック、じゅんちゃん、ひんすけ等の古参メンバーで構成されていた。たぬきもその一員である。
今回の晩餐会は部屋主を含む古参メンバーが招待されている手筈だ。

たぬき「皆もう来てるのかな…」キョロキョロ
「だいぶ道に迷っちまったからな、もう16時か、皆中に入ってるだろうな」

あまり交通の弁が良いとは言えない立地だ。自家用車などは見当たらない。
玄関前には格子状の門があった。家全体の雰囲気としては壮大であり、どこかしら禍々しさを感じる。

たぬき「すげぇ家だな…こんな所に住んでるのかよ…」

インターホンを押すと、歓迎の機械音声とともに門が開いた。
どこか威厳すら漂う玄関を開けると、異様な光景が飛び込んできた。

たぬき「うわっ!?」

眼前に現れたのは鮮血で赤く飾られた大広間の光景だった。7、8人分だろうか、ところどころ原型の無い遺体らしきものが転がっている。

たぬき「なんだよ…これ…オエッ」

足元を見ると、見慣れたものがあった。

たぬき「この虹色の靴…!?見たことがあるぞ…!?こっちの赤いチョッキもだ…!!まさか…!?」

カツン…カツン…カツン…
前を見上げると、ガタイの良い男が立っていた。

???「君がTTか。顔を合わせるのははじめましてだな。たしかに顔のパーツは星野源みたいだな。かなり出来損ないだが。」
たぬき「誰だ!?お前…!?」

よく見ると目の前の男の手が赤く染まっているのがわかった

たぬき(こいつがやったのか…?)

???「驚かないで聞け。初めは話を聞かせようとしたんだが、こいつらも冷静じゃなかった。激しい言い争いになり、どちらにも言葉はもう通じなかった。結局俺は気が動転して…」
「まるであの水族館の日みたいだ…あの日とは違って、今日は素手だがな…」

聞き覚えのある単語…水族館…メンヘラ…



たぬき「お前…トムホ…か…?」
最終更新:2021年01月05日 16:57