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パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき 作者:影茸

一章 欠陥治癒師

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プロローグ 追放

新作です。よろしくお願いします。

「お前は追放だ!もうお前とはパーティーを組んでられない!」


「………え?」


……そう僕ラウストが、僕の所属しているパーティー稲妻の剣リーダーである戦士マルグルスに告げられたのは突然のことだった。

何せ、追放などという言葉を僕は今初めて聞いたのだから。

だからこそ、僕は戸惑いを隠すことが出来なくて……


「待ってくれ!もしかして僕に何か非が……」


「はぁ、ふざけているのかラウスト?まだわからないのか?」


……けれども、その僕の戸惑いを見たマルグルスの反応は怒りだった。

僕に対する苛立ちを隠そうともせず、マルグルスは口を開ける。


「今回お前のせいでクエストを達成することが出来なかったんだろうが!この欠陥治癒師が!」


「そうよ!全部あんたのせいでしょうが!」


そのマルグルスの怒声に続き、マルグルスの女の一人である盗賊のサーベリアがさらに怒声を僕に浴びせる。


「ーーーっ!」


そして、その二人の言葉に何故僕が突然追放されることになったのか、その理由を僕は悟ることになった。


………そう、これは何時もの八つ当たりの延長でしかないのだと。


たしかに今回のヒュドラの討伐というクエストを僕達は失敗することになった。

高難易度とはいえ、一流のパーティーである稲妻の剣ならばヒュドラを倒すことは出来ると言われていたのにもかかわらずにだ。

だが、それは決して僕が治癒師としてミスを犯したからの失敗ではなかった。

もちろん大活躍をしたというわけではないが、今回のクエストに関して僕は治癒師としての役目は果たしていたと思う。


……正直、今回のクエストの失敗の原因は昨夜お楽しみだったせいで寝不足気味だったマルグルスとサーベリアの動きが悪かったせいな気がする。


明日がクエストであるにもかかわらず、二人は夜遅くまで、ベッドの中で楽しんでいた。

そしてその結果、翌日の二人の動きはあまりにも悪かった。

普段戦闘ではマルグルスは重い大剣による高火力で、サーベリアは速い動きで敵を翻弄する遊撃手として活躍している。

……しかし今回、すぐに体力が切れたマルグルスの大剣は全くヒュドラに通用せず、サーベリアは動きに精彩を欠いてヒュドラの毒を浴び、それが決定打となって撤退することになった。


「本当に貴方がもう少しマシであればこのクエストだって簡単にクリア出来たでしょうに」


しかし、そのことを後衛にいて分かっている女魔術師のアーミアさえ、非難の目を向けるのは僕の方だった。

アーミアまだ肉体関係にはなっていないが、マルグルスに気があるらしく、彼を責める気は全く無いようだ。

……そしてその結果、ヒュドラ討伐の責任は全て僕の責任だという空気が、パーティーの中には流れていた。

それは明らかに八つ当たりであるにもかかわらず。


「……す、すまない」


けれども、そのパーティーメンバーの態度に対して僕は何も文句を言うことはなかった。

たしかに正直文句がないわけでは無い。

何せ、今回だけではなく僕は何かあるたびに八つ当たりをされて来たのだから。

僕が貰う報酬は他のパーティーメンバーの4分の1程度だし、治癒師で直ぐに治療できるからという理由で暴力を振るわれたことさえある。

でも、僕はそれが仕方がないことだと理解していた。


………何故なら僕は、初級治癒魔法ヒールしか使えない欠陥治癒師なのだから。


確かにマルグルス達の態度は普通の治癒師相手にすれば明らかに問題のある行為だろう。

けれども、僕という欠陥治癒師の場合であれば他よりも遥かにマシだった。


何せ、他のパーティーは絶対に僕をチームに入れようとはしなかったのだから。


確かにの僕は必死にさまざまな人間に師事をして技術を高めた。

今なら《ヒール》を連続で発動してある程度回復力は上がった上、決して万全ではないが前衛の真似事や、スキルを持つ盗賊ほどではないが罠を発見することもできる。


けれども、僕は治癒師として明らかに能力不足だった。

サーベリアがヒュドラの毒を浴びた時、僕は長時間時間をかけないと浄化することが出来なかった。

もちろん、ヒュドラの毒は通常の治癒師では浄化なんてできないだろうし、それを考えれば僕は通常の治癒師程度の能力は持っている。

でも、それはあくまで平均レベルで決して一流ではない。

つまり、一流パーティーである稲妻の剣の中で僕は明らかに弱いのだ。


しかし、それでもマルグルス達は僕をパーティーに入れてくれた。

だから僕はどんな目にあおうが、マルグルス達には感謝していて。


「……わかったよ。僕はこのパーティーを抜ける」


僕はパーティー、稲妻の剣を抜けることを決意した。


「ようやく理解したか!自分がどれほど足手まといだったか!」


「本当に清々する!そうだ、あんたの装備も置いて行きなさいよね。所持金取るのはやめてあげるから」


「今までの迷惑料ですわ」


僕の装備、それは少ない報酬の中必死にためたお金で買ったものだったが、今までの感謝を込めて僕は無言でその装備を地面に置く。

そして僕はパーティーで共同生活をしていた一軒家を去り、パーティー稲妻の剣を抜けることとなった………

9時ごろにもう1話投稿予定です!

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