(3) 非常事態宣言(大統領令)・戒厳令の発動
12月18日は、トランプ大統領が2018年9月12日に制定した選挙干渉の外国人らに制裁を課す大統領令「外国からの選挙干渉に関する2018年の大統領令」の報告期限(大統領選挙の投票日から45日以内に提出)であった。
この大統領令は、サイバー攻撃やその他の手段で、米選挙への外国の干渉が明らかになった場合に、外国の企業や個人に制裁を課すというもので、外国の干渉を支援、隠蔽、加担した個人や企業・メディアの全資産を差し押さえる権限を米司法省に与えている。
また、国家情報長官(ジョン・ラトクリフ氏)が、大統領、国務長官、財務長官、国防長官、司法長官、国土安全保障長官に報告することになっており、「国家非常事態宣言」を出すことになる。
しかし、国家情報事務局は12月16日、多くの情報部門が最終的な評価を終えておらず、歴史に残る報告書になるので万全を期すため報告書の発表を来年1月に延期すると明確な期限(日付)を明らかにせずに発表した。
大統領令に定められた期日までにトランプ大統領へ大統領選への外国勢力の関与についての正式な報告書を提出することができなかったのは、「反トランプ官僚の抵抗」が原因との見方もあるが、中国(共産党)などの外国勢力の関与の程度などで内部の意見がまとまらなかったことが大きな理由だとみられている(Bloomberg「Trump Spy Chief Stirs Dispute Over China Election-Meddling Views」、ロイター「トランプ氏、大統領令で選挙干渉に制裁適用へ=関係筋」)。
また米連邦政府の情報機関を統括する立場にあるジョン・ラトクリフ国家情報長官は、「米国と世界の民主主義にとって中国がナチスドイツ以来最大の脅威であり、政策担当者は中国政府との長期的な対立に備える必要がある」と指摘しており、中国の脅威を十分に反映した報告書を望んでいたという(Bloomberg「U.S. Spy Chief Calls China Biggest Threat Since World War II」、岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 「大統領令を!」――期限目前に祈るトランプ支持者」)。
これに関連して重要だと思われるのが、「ナヴァロ・レポート」とシガン州アントリウム郡法医学チームの「科学捜査報告書」である(NEW YORK POST「A not-so-loony look at 2020 election results in battleground states: Devine」)。
まず前者は、ホワイトハウス通商製造政策局長であり大統領補佐官のピーター・ナバロ氏が12月17日に記者会見を開き、「徹底した欺瞞 選挙違反の6つの局面」と題する合計36ページの調査報告書を公表した。
このレポートは、今回の大統領選挙の勝敗を分けたとされるアリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニア、ウィスコンシン計6州に焦点を絞り、いずれの州でも選挙運動から投票、開票、集計に至る各プロセスでバイデン氏を有利にする組織的な不正工作があったことを詳細に論じたもので、選挙での不正行為の徹底調査を求める内容だった。
前述したラトクリフ国家情報長官の報告書と同じように、この「ナヴァロ・レポート」に基づいてトランプ大統領は、2018年9月12日の大統領令「米国の選挙における外国の干渉が発生した場合の特定の制裁措置に関する行政命令」を発動して、不正実態である国家反逆罪の犯罪者に対しては、財産凍結処分までも大統領裁断で行えるとの解釈も出されている。
そして後者は、ミシガン州アントリウム郡の7人の法医学チームの科学捜査報告書である。この科学捜査報告書は、ミシガン州のドミニオンシステムの機械22台を押収し、その再現を試み、エラー率68.5%という驚くべき実態を暴露した。この背景には、ミシガン州を担当する第13巡回区控訴裁判所のケビン・エルゼンハイマー判事裁判官がドミニオン投票システムの調査を指示しただけでなく、その調査結果である法医学報告書の公表を命じたという画期的決定がある(大紀元「トランプ弁護団、ミシガン州でドミニオン機22台を法科学捜査」、EPOCH TIMES「Attorney: Michigan Vote Flip Happened Due to Computer Program, Not Human Error」)。