トランプがいまだ「敗北宣言」をしない「シンプルな理由」

大統領選の結末やいかに?
木村 朗 プロフィール

(2) 議会闘争

州議会での公聴会開催を通じて不正選挙の実態を明らかにして選挙人団を州議会で決定できることを確認する取り組みは継続中である。また連邦議会でも公聴会や各種委員会の開催などが行われている。

その中で、特に、12月8日の大統領就任式両院合同委員会の非公開会合で、米連邦議会の共和党の指導部がバイデン前副大統領を次期大統領と認める決議を退けたことや上院の国土安全保障員会(ロン・ジョンソン委員長)で正選挙に関する公聴会が開かれたことが注目される。

またその公聴会では、それまでトランプ大統領の不正選挙疑惑解明を支持していた上院院内総務であるミッチ・マコーネル氏がジョー・バイデン氏が勝者であると明確に述べて、共和党上院議員たちに来年選挙人投票を数える際に下院が選挙結果を覆そうとすることに加担しないよう個人的に促したことも要注意である。

また現在、1月6日の上下両院合同会議で今回の大統領選挙での接戦6州(アリゾナ州11人、ペンシルベニア州:20人、ネバダ州:6人、ジョージア州:16人、ウィスコンシン州:10人、ミシガン州:16人)の選挙人投票の結果に異議を唱えることをモー・ブルックス下院議員(共和党、アラバマ州)が明言している。この6州(とニューメキシコ州:5人)では、州内で2つの選挙人団による異なる投票結果が存在している。

この意義申し立てには、少なくとも上下議員各1名の署名が必要だとされている。そこで、もう一人署名することが必要な上院議員として、トミー・タベルヴィル次期上院議員(共和党、アラバマ州選出)、ロン・ジョンソン上院議員(共和党、ウィスコンシン州選出)、ランド・ポール上院議員(共和党、ケンタッキー州選出)、テッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス州選出)らの名前があがっているという(最近の情報では、1月6日の意義をとなる議員が、下院140名、上院13名にもなっているという)。

いずれにしても、1月6日の上下両院合同会議で下院議員と上院議員のそれぞれ1名が実際に異議申し立てを行えば、その後に上限両院それぞれで審議・投票を行い、その結果、上限両院ともに過半数が異議申し立てを支持すれば該当州の選挙人投票は無効となる。

その場合、トランプ氏(232票)vsバイデン氏(227票)となり、その時点でトランプ氏勝利が確定することになる(ニューメキシコ州の5票もバイデン票から排除すれば、トランプ氏232票vsバイデン氏222票となる)。

この点に関連して、テキサス州がペンシルベニア、ジョージア、ミシガン、ウィスコンシンの接戦4州の投票結果を無効にするよう最高裁に求めた訴訟(最高裁は12月12日に訴えを受理せずに却下)には、126人の共和党の下院議員が支持を表明した。またワシントンポスト紙が12月5日に発表した調査では、共和党の上院議員でバイデン氏の勝利を公に認めたのは10%程度だったという。

 

さらに、1月6日の上下両院合同会議で上院議長を務めるマイク・ペンス副大統領が不正選挙の疑いがあるとされる激戦州の選挙人団の選出・投票を受理しない場合、トランプ・バイデン両氏とも選挙人が270の過半数に届かず下院での「1州1票」制に基づく投票となり、共和党が26州の票を得てトランプ氏勝利となる道が開かれる。

また、別の観点(「ペンスカード2」)からすれば、1月6日にペンス副大統領は上院議長として誰も抗議できないほどの権限を持っており、焦点となっている二つの選挙人団が選出されている7州(アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ニューメキシコの各州)の結果は無効となり、憲法に「最多数の票を獲得した者が大統領となる」と記載があるので、トランプ232票vsバイデン222票でトランプが大統領になる。下院投票(1州1票の投票)も必要なくなるという(American Thinker「It's for Mike Pence to Judge whether a Presidential Election Was Held at All」)。

ただ、いずれにしても最大の問題は、この二つの「ペンス・カード」が本当に切られるかどうかはペンス副大統領次第であるということだ。

選挙人団からの受け取りの期日であった12月23日に具体的行動を起こさなかったペンス副大統領に対してはリン・ウッド弁護士らトランプ陣営の一部の人々からDINO(共和党員の振りをした裏切り者)ではないかとの懸念が出されており、今後のペンス氏の動向にいまや米国中、否、世界中の注目が集まっている。

このマイク・ペンス氏をめぐっては、「ペンス・カード」を切るための後押しをするためにアリゾナ州の共和党議員からペンス氏出されていた訴訟が結局は却下された。

その一方で、テッド・クルーズ上院議員が他の10人の共和党上院議員とともに連邦議会で選挙不正を調査するための緊急10日間選挙検証委員会(上院議員、下院議員、連邦最高裁判事各5名、計15名の構成)の設置を求める声明を発表、またペンス陣営からも予備審問を行うためか1月6日に上下両院の連邦議員に今回の大統領選挙への異議申し立てを積極的に行うよう呼びかけがなされるなど情勢は日々目まぐるしく動いている。