5日のABEMA『ABEMA Prime』では、緊急事態宣言の課題について、元厚生労働省医系技官で作家の木村盛世医師に話を聞いた。
・【映像】木村氏による解説
■「国や医師会に憤りを感じる」「“地域間搬送”と“高齢者対策”を」
「例えば北海道や大阪府では医療が逼迫しているが、そうでない地域もある。昨年春にイタリアが医療崩壊を起こした時には、ドイツが重症者を引き受けた。最近でも、スウェーデンの重症者をノルウェーが引き受けようとしているという話もある。日本においても近隣の自治体同士では行われているが、遠くになれば自衛隊のヘリを使わなければならなってくる。そこは早急に考えなければならない。また、高齢者に重症化リスクがあることは明らかなので、なるべく外に出ないようにしてもらわなければならない。我慢を強いることになる以上、国や地方自治体は宅配サービスの充実や、体力が落ちてしまわないようなトレーニングの提供など、対策を講じてほしい。そのためのアイデアは、懸賞金を出してでも募るべきだ」。
■「ウイルスから完全に逃げきることはできない」
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「“感染が広がってきたから再び緊急事態宣言を出せ”と騒ぐのは、幼稚園児でもできる。ここまで我々は強制力を伴わない形でなんとかやってきたし、この民間の力、国民の力を信じるべきだ。それでも、いわゆる“パターナリズム”、つまり、“お上が何かやってくれるから、それに従っていれば助かる”という発想が日本には常に存在している。確かにヨーロッパのようなロックダウンをかければ効果は大きいだろうが、今以上の強制力を伴う施策を受け入れてしまうのは、日本の民主主義の根幹にも関わることになる」と指摘。
「『BuzzFeed Japan』の岩永直子記者による、京都大学の西浦博教授のインタビュー記事を読むと、飲食店への対策だけでは、R(=実効再生産数、1人の感染者が平均で何人に感染させるか)の値が十分には下がらず、1程度にとどまるというシミュレーション結果になっているという。つまり、今より増えはしないが、感染そのものは続くということだ。徹底的にやろうとするなら、韓国、中国、台湾のような東アジアの国々のように、個人の移動情報を追跡するといったことも考えられる。しかし、それは民主主義国家ではない。一方、フランスやイタリアなど普遍的なリベラリズムが根付いたヨーロッパの国々では、人々が“基本的人権である個人の自由を奪うな”と主張した結果、感染爆発が起き、ロックダウンによってそれを奪われるという矛盾した状況も起きている。では、日本はいかに“第三の道”を行くのか。そこまで視野を広げて議論してほしい」。
大切なのは、ここから医療体制を立て直していくことだ。こういうことを何度も繰り返していれば、医療崩壊だけでなく“居酒屋崩壊”が起き、社会経済活動が立ち行かなくなってしまう。そうなれば失業者、自殺者も増えるだろうし、社会不安が増大する。緊急事態宣言や自粛というのは、そういうところまで考えなければならないものだ」と訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)