▼行間 ▼メニューバー
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
妹ちゃん、俺リストラされちゃった・・・スキル「倍返し」が理解されなくて…え、ブラック離脱おめでとう?…って、転職したらS級!? 元上司が土下座してる!? もう遅いよ。かわいい部下に囲まれてるので。 作者:アマカワ・リーチ

第二章 ギルドマスター・クラッブ 編

36/45

35.人質

 

 <奈落の底>と呼ばれる大穴があるダンジョン。

 既にダンジョンボスは倒されており、魔物もほとんどいない。


 アトラスは全速力でそのダンジョンを駆け抜ける。


 アニスをさらったのが誰かはわからないが、アトラスを罠に嵌めるためにしたのは間違いない。

 それでも、アトラスは自分に迫る危険などどうでもよかった。

 とにかく、アニスを救わなければ。

 その思いだけに突き動かされて走る。


 ――そして30分ほど全速力で暗がりの洞窟を走っていくと、目的の場所にたどり着いた。


 少し坂を降っていった先に、わずかに松明で照らされた場所が見えてくる。


 そこが大穴と呼ばれる場所だった。

 家の敷地が5個は入るほどの穴がぽっかり空いていて、その先は真っ暗で一体どこまで続いているのかわからない。


 そして、その手前に一人の男がいた。


 ――その顔は、アトラスにも見覚えがあるものだった。


「ぎ、ギルマス!?」


 そこにいたのは、<ブラック・バインド>のギルドマスター、クラッブその人だった。


「良くきたな、アトラス」


 笑みを浮かべて呼びかけるクラッブ。

 その足元には手足を縛られたアニスの姿があった。どうやら意識を失っているらしかった。


「どうしてあなたが――」


 アトラスもさすがに彼のことを善人だとは思ってはいなかったが、まさか元部下を誘拐するほど腐っているとは思いもしなかった。


 その蛮行に至った理由をクラッブは吐き捨てるように言う。


「なぜ? 簡単だよ。目障りなお前を殺してやるためさ」


 アトラスは、その動機が全く理解できなかった。

 確かに<ブラック・バインド>では、散々無能と罵られていたが、しかし殺されるほどの恨みを買った覚えは全くなかった。


「お前のせいで、SSランクダンジョン攻略の受注を取り消された。王女様と謀って、俺に恥までかかせたんだ」


「そんな、謀ってなんて……」


「嘘をつけ! じゃなければ、お前が俺に勝てるわけがないだろう!」


 クラッブの中で、アトラスがズルをして決闘に勝ったという話は、もはや事実になっていた。どんなに無理のある陰謀論であっても、自分に都合がよければ信じてしまうのが弱い人間の常だからだ。


「とにかく、お前さえいなくなれば全て解決なんだよ。だから死んでもらおう」


 と、そう言ってクラッブは足元に転がっていたアニスを持ち上げる。


「さぁ、大穴に飛び込め、アトラス。さもなければ、代わりにこの女を穴に落とすぞ」


 アトラスは頭をフル回転させ、アニスを助ける方法を考えるがいい方法が全く思いつかない。

 アトラスの低いステータスでは、どうあがいてもアニスを奪い返すのは不可能だ。

 アトラスの<倍返し>は、敵から攻撃を受けなければ無力なのだ。


「なんだ? 自分からは飛び込めないか? なら仕方がないな――」


 ――そう言い、クラッブは勢いをつけてアニスの体を大穴の方へと投げ入れた。


 次の瞬間、アトラスは一も二なく地面を蹴っていた。


「――――ッ!!」


 放物線を描いていくアニスの小さな体を追いかけ、その下に入るようにして大穴に飛び込む。

 ――すんでのところで、アニスの体をキャッチする。


 だが、その先に当然地面はない。


 重力によって、大穴に吸い込まれていくアトラス。


「ははッ! バカなやつだな!!」


 クラッブの笑い声が大穴にこだました――


 †


  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。