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妹ちゃん、俺リストラされちゃった・・・スキル「倍返し」が理解されなくて…え、ブラック離脱おめでとう?…って、転職したらS級!? 元上司が土下座してる!? もう遅いよ。かわいい部下に囲まれてるので。 作者:アマカワ・リーチ

第二章 ギルドマスター・クラッブ 編

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23.【ギルマスside】王女のお目当は「無能のアトラス」

# 王女のお目当は「無能のアトラス」【ギルマスside】



 <ブラック・バインド>のギルマス、クラッブはその日王宮へと呼び出された。


 なんでも王室から直接ダンジョン攻略の依頼があるらしい。


 <ブラック・バインド>は少し前に王室からの依頼を受注し、それを成功させていたので、クラッブは王室と少しだけコネクションができていた。だが、それでも王宮から呼ばれると言うのはそうそうないことだ。


「(我がギルドも、大きくなったものだ……)」


 クラッブはしみじみと感じながら王宮へ向かう。

 五年前まで<ブラック・バインド>はただの小さなギルドだった。

 それが、今では王国公認ギルドとなり、こうして直接王宮にまで呼ばれる存在になったのだ。


 このチャンスをものにして、さらにギルドを大きくしてやる。

 そう決心して、クラッブは王宮へと入った。



「クラッブ殿、よく来てくれました」


 王宮でクラッブを待っていたのは、他でもないローレンス王国の王女様ルイーズ・ローレンスだった。


「王女様……お久しぶりでございます」


 <ブラック・バインド>は、先日ルイーズの別荘に出現したSランクダンジョンを攻略する任務を見事に成功させていた。

 そのおかげで、今回王女様から直接仕事の依頼がくることとなったのだ。


「実は<ブラック・バインド>に、SSランクダンジョンの攻略を頼みたいのです」


 SSランクダンジョンは、数あるダンジョンの中でも最も難易度が高いもので、その攻略を達成することはギルドにとっても大きなステータスになる。


 <ブラック・バインド>はまだSSランクダンジョンの攻略に挑戦したことさえなかったが、しかしそろそろその時だろうとクラッブは思っていたのだ。

 まさに渡りに船である。


「ありがたきしあわせでございます、王女様。謹んで承ります」


「そうですか、それはよかったです。ただし、一つ条件があるのですが」


「条件、でございますか」


「ええ。と言っても、おそらく簡単なことです」


「なんでございましょう」


 クラッブが聞くと、王女はわずかに笑みを浮かべながら答える。


「あの、アトラスという青年を攻略に参加させることです」


 予想外の言葉に、クラッブは一瞬顔をしかめた。


「あ、アトラスでございますか?」


「ええ。前回の時、稽古として近衛騎士と模擬戦をしていただきましたが、そのお姿を拝見して以来すっかりファンになってしまって」


 そういえば、前回の時にアトラスと近衛騎士が模擬戦をして勝ったという話をトニーから聞いたな、とクラッブは思い出す。

 その時はてっきり大きなハンデをつけてもらったのだろうと、気にも留めなかったのだが……


「是非また戦うお姿を拝見したいのです。叶えていただけますか?」


 クラッブは心の中で舌打ちをした。

 あの無能男は、とうの昔にクビにしていた。


 だが、そんなことを王女様に言えば、今回の依頼はなかったことになってしまうかもしれない。

 そうなったら、ギルドとしてあまりに大きな失注だ。


「もちろんでございます、王女様。アトラスを攻略パーティに参加させましょう」


 ――ほとんど反射的に、クラッブはそう返事をしていた。


 別に嘘はついていない。

 何も「今アトラスはギルドにいますか?」と聞かれた訳ではない。

 クビにしたが、戻って来てもらえば良いだけだ。

 あの無能Fランク野郎なら、「戻って来てもいい」と言えば、泣きながら喜んで戻ってくるだろう。


「では、SSランクダンジョン攻略、必ず成功させてみせます」


「ええ、頼みました。アトラスさんとお会いできること、楽しみにしています」


 王女は恋する乙女のように頰を赤らめて言った。



「(……あの無能をご所望とは、王女様も趣味が悪い)」



 クラッブは内心で舌打ちする。


 だが、すぐに気を取りなおす。


「(まぁ、SSランクダンジョン攻略までの間だけ、アトラスに戻って来てもらえばいいことだ。何の問題もない)」


 アトラスが<ホワイト・ナイツ>でSランクの隊長に任命され、毎日楽しく過ごしているなど知りもしないクラッブは、SSランクダンジョン攻略という言葉に酔いしれるのだった。


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