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妹ちゃん、俺リストラされちゃった・・・スキル「倍返し」が理解されなくて…え、ブラック離脱おめでとう?…って、転職したらS級!? 元上司が土下座してる!? もう遅いよ。かわいい部下に囲まれてるので。 作者:アマカワ・リーチ

第一章 トニー隊長 編

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22.【トニー隊長side】元隊長の悲哀

ここまで読んでいただきありがとうございます!

ここから短編からの追加執筆分になります!




 ギルドを追い出されたトニー隊長は、そのまま魂が抜けたように自宅へと戻った。


「今日は早いのね」


 自宅の玄関で妻が愛想なく言った。


「……実はギルドをクビになった」


 トニー隊長は正直にそう打ち明けた。


「……そう。とうとうクビになったの」


 だが、妻は特に驚いた風もなかった。


 実のところ、彼女はいつか必ずそうなると予想していたのだ。

 旦那が、たいした実力もないのに自分を大きく見せて、他人を貶して生きている姿を、この十数年ずっと傍で見てきた。

 だから、クビになったと聞いても全く驚きはなかった。

 むしろ遅かったくらいだ。


 そして、彼女には、この日が来たらやろうと思っていたことがあった。


「もう、この家にいることはできない。悪いけど離婚して」


 ――突然告げられた三行半みくだりはん

 急展開にトニー隊長は驚いて言葉を失う。


 確かに彼女との関係は冷え切っていたが、しかしまさかこのタイミングでと困惑した。


 だが、妻は冷静に説明する。


「あなた、仕事で少しでも嫌なことがあると散々私に当たってきたわよね。リストラされた今、この後、あなたが私たちにどう言う態度をとるか、よくわかっているの」


「そ、そんな……ま、待ってくれ」


 トニーはそう言ってすがりつこうとする。

 だが、妻の決心が揺らぐことはなかった。


「……お母さん、家出て行くの?」


 と、部屋から娘が出てくる。母親が家を出て行くと聞いて一気に不安な気持ちになったのだ。


「もちろん、あなたも一緒に行くのよ」


 と妻は娘を抱き上げてそう言った。


「ま、待ってくれ! 二人で出て行くのか!?」


 妻だけでなく、まさか娘まで一緒に出て行くなんて、トニーには到底受け入れられなかった。


 トニーは娘にすがりついて引き止める。


「まさかお父さんを置いてかないよな?」


 だが、娘はハッキリと告げる。 


「お父さん、お母さんをいじめるからキライ」


 そう言って娘は母親の方へと歩いて行く。


「そ、そんな……」


 トニーは妻と娘にも捨てられ、いよいよ何もかも失ってしまったのだった。


 †


 ――後日、アトラスはアニスに呼ばれて、一緒に夕飯を食べることになった。


「トニー隊長はクビになりました」


 アニスはアトラスにパーティの事情を告げる。


「まぁ仕方がないね」


 アトラスは一瞬だけ、彼のことをかわいそうに思った。

 しかし部下を見捨てるような男が隊長のままでは、部下たちの身に危険が及ぶ。だからこれも仕方がないことなのだろうと考え直す。


「これで少しはパーティの居心地がよくなるといいんだけどね」


 アトラスがアニスに言うと、アニスは首を横に振る。


「実はアトラスさん、私、ギルドをやめることにしました」


「え!? そうなの!?」


「はい。やっぱりアトラスさんがいないギルドにいても仕方がないなと思って」


 前からアニスはアトラスに尊敬の念を抱いており、それを本人にも伝えていた。

 しかし、<ブラック・バインド>では、アトラスはFランクで、アニスの方が出世していたので、アニスの言葉はあくまでお世辞だと思っていた。


「はは、またまた」


 アトラスは今日もアニスが自分に気を使ってくれているのだと思った。


 そのアトラスの「勘違い」をずっとみてきたアニスは、彼の言葉を否定も肯定もしなかった。

 代わりに自分は本気なのだと根気よく伝えていこうと決めていたのだ。


「もっと技術を磨いて、また一緒にアトラスさんと同じパーティになれるように頑張ります」


「……そうだね。アニスとまた一緒に働けるといいな」


 アトラスにとって<ブラック・バインド>での5年間は辛いことの方が多かったが、アニスとの思い出だけは別だった。

 素直にまた一緒に冒険したいと思った。


「これからも時々でいいので会ってくれると嬉しいです」


 アニスの言葉にアトラスは心から頷く。


「もちろん。こちらこそこれからもよろしく」


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