第一章 トニー隊長 編
9.【トニー隊長side】転職ギルドからのクレーム
――翌日、ギルマス室に呼び出されたトニー隊長。
「おい、転職ギルドからクレームがあったぞ!!」
ギルマスがトニー隊長を怒鳴りつける。
「ど、どう言うことですか?」
トニーはそうしらばっくれる。
しかしギルマスにはクライドの話が全て伝わっていた。
「とぼけるな! 私が用意させたAランク冒険者からのクレームだ! Sランクパーティだと言われたから試験を受けにきたのに、実際はCランク以下の実力しかない奴らを紹介された、騙されたと転職ギルドにクレームがあったそうだぞ!!」
トニー隊長は内心で悪態をつく。
「も、申し訳ありません……。しかしギルマス、我々もAランクという言葉を信じていたのですが、奴はあのFランク無能野郎アトラス以下の実力しかなかったんです……」
「なに、無能以下だと!?」
「はい、その通りです。アトラスにさえできた仕事も、まともにこなせない男でした」
「……なんだと。つまりそれは、転職ギルドがポンコツをよこしたということか?」
「手配してくださったギルマスには申し訳ありませんが……転職ギルドが手数料欲しさに紹介したのかと」
「しかし、アトラス一人抜けたくらいでAランクボスの中ボスから逃げ帰ってきたというのはどういうことだ?」
「それは……なにせクライドがいきなり戦線を抜けたので、一応奴の安全を考えて追いかけたのですが……」
「……わかった。しかし、お前たちも気が抜けているのは確かだ。我が<ブラック・バインド>のSランクパーティがダンジョンから逃げ帰ったなどと言う噂がたったら、ギルドのメンツは丸つぶれだ。もし次こんなことがあったら、ただでは置かないからな」
「もちろんでございます、ギルマス。気をつけます」
「……とりあえず、別のパーティからAランクの前衛を連れてくることにする」
「ありがとうございます、ギルマス」