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妹ちゃん、俺リストラされちゃった・・・スキル「倍返し」が理解されなくて…え、ブラック離脱おめでとう?…って、転職したらS級!? 元上司が土下座してる!? もう遅いよ。かわいい部下に囲まれてるので。 作者:アマカワ・リーチ

第一章 トニー隊長 編

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7.本気出してもいいですか?


 その後も、アトラスとエドワードは破竹の勢いでダンジョンを進んでいく。


 最初はなるべくアトラスの力を見るために後方で大人しくしていたエドワードだったが、後半はチームプレーを確認するために自らも戦闘に加わっていた。


 ……能力が高いだけではないのか……!!


 エドワードはアトラスのチームプレーの素晴らしさにも舌を巻く。

 アトラスは後方に対しても的確なフォローをしてくれるのだ。


 自ら戦ってよし、他人と一緒に戦ってよし。全く隙がない。


 ……これはとんでもない逸材を見つけてしまったな。

 エドワードが心の中でそう呟いたのは、もう何度目かわからなかった。


 ――そして、あっという間に二人はボス部屋へとたどり着く。


 ダンジョンのボスは、ミノタウロスだ。


 圧倒的な防御力を持ちながらも、重たい一撃を放つ強敵だった。

 並みの攻撃では歯が立たず、逆にその斧の攻撃をまともに受ければひとたまりもない。


 ――エドワードはミノタウロスの防御力を突破するために、詠唱に時間がかかる<大魔法>を準備する。


「アトラス、悪いが3分頼む!」


 ――エドワードは、長い詠唱が終わるまで3分だけ時間を稼いでくれと言う意図でそう言った。


 すると、アトラスは「あ、あのポーションを使ってもいいですか?」とエドワードに聞く。


「もちろんだ」


 エドワードがそう返事をすると、アトラスは「……ッ!! ありがとうございます!」と勢いよく返事をして、そして駆け出した。


「はぁ――ッ!!」


 例によってアトラスは、ミノタウロスに先制攻撃を仕掛ける。

 しかし、やはり素のアトラスの攻撃力では大したダメージは与えられない。


 だが、エドワードとしてはそれでも十分だった。

 アトラスが時間を稼いでくれれば、3分後には特大の魔法攻撃でミノタウロスの防御を破ることができる。


 ――そう思っていたのだが。


「ガァァア!!」


 ミノタウロスが咆哮と共にその強烈な一撃をアトラスに叩き込む。


 それをアトラス正面から受ける。


「くッ!」


 平凡な冒険者なら一撃で倒せるほど強力なミノタウロスの攻撃。

 まして平均以下の防御力しかないアトラスには尚強烈な一撃で、アトラスのHPは一気に削り取られる。


 ――だが、アトラスのHPはSランク。そのゲージはまだまだ残っていた。


 そして、一気に削られたHPの倍のダメージがミノタウロスに跳ね返る。


「ギァァァア!!!」


 ミノタウロスの悲鳴が響く。次の瞬間、悲鳴から生まれた力みで次なる一撃を飛ばしてくるミノタウロスだったが、それをまたしても真っ向から受けるアトラス。


 当然のようにそれも二倍になって跳ね返る。


 Aランクの攻撃力を持つミノタウロスの攻撃が、再び二倍になって跳ね返り――次の瞬間、ミノタウロスの体は地面に崩れ落ちた。


「ま、まさか……!!」


 3分間時間を稼いでくれと言われて、なんとたった30秒で敵を倒してしまったのだ。

 エドワードは、アトラスの神業に言葉を失う。


 一方、アトラスは久しぶりに本気を出せたことに満足感を覚えていた。


 ――戦い始める前にアトラスが「ポーションを使ってもいいですか?」と聞いたのには訳があった。

 <ブラック・バインド>では、なるべくポーションを使ってはいけないと言われていたのだ。

 「お前みたいな無能に使うポーションはない」と。

 それゆえに、アトラスはなるべくダメージを受けないように立ち回らざるを得なかった。


 しかし、ポーションを使って回復して良いのであれば今のようにわざとダメージを受けて、それを倍返しにすることでボスをも圧倒できる。


 アトラスは「なるべく体力を削られてはいけない」と言う縛りから解放され、本気で戦うことができたのだ。


 自らの力を100パーセント解放できたことにアトラスは満足していた。


 そしてその様子を見ていたエドワードは、ただただ驚いて開いた口が塞がらないのであった。


 †


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