第一章 トニー隊長 編
6.規格外の力
アトラスは<ホワイト・ナイツ>のギルマス・エドワードと共に、Aランクダンジョンへと潜る。
通常Aランクダンジョンを二人で攻略するのは並大抵のことではないが、パートナーが<ホワイト・ナイツ>のギルマスとなれば話は別であった。
むしろ、アトラスとしてはエドワードの足を引っ張らないようにという不安の方が大きかった。
二人はおしゃべりすることもなく、淡々とダンジョンを進んでいく。
そして、しばらく歩くといきなりAランクモンスターが現れた。
「ウォーウルフですね」
さすがはAランクダンジョン、現れたのはなかなかに手強い相手であった。
高い攻撃力で、並みの冒険者ならあっという間にやられてしまう。
「さて、君の力を思う存分、見せてもらおうか」
エドワードはアトラスにそう言う。
アトラスは前衛。ゆえに、自らウォーウルフへと飛び込んでいく。
「――はぁッ!」
一応、アトラスから先攻する。
しかし、その一撃はAランクモンスターの防御力の前に弾かれる。
逆に、ウォーウルフはカウンターで鋭い一撃をアトラスに食らわせた。
「――――ッ!!」
アトラスのHPは一気に削られる。
だが、次の瞬間、
「――――“倍返し”!!」
アトラスが受けた攻撃の二倍の攻撃がウォーウルフに跳ね返る。
「――グアアッ!!」
Aランクモンスターの攻撃。それが倍になって跳ね返ることで、ウォーウルフの決して少なくないHPは一気に削り切られる。
断末魔とともにウォーウルフは倒れ込んだ。
「攻撃を受けたら相手にダメージを与えられるのか!?」
アトラスの規格外のスキルに、エドワードはまたしても驚きを隠せない。
「攻撃を受けないとまともに反撃できないんですけどね……」
アトラスは少し自嘲気味に言う。
この「一度攻撃を受けないといけない」という特性ゆえにポーションでの回復が必須で、前のギルドでは「金食い虫」扱いされていたのだ。
「何を言っている。HPがSランクで、相手の攻撃を倍返しにできるということは、ほとんどの敵に負けないということじゃないか!?」
確かにアトラスと一対一で戦った場合、相手は常にアトラスに与えた倍のダメージを受けることになる。ということは、アトラスの二倍以上の体力を持っていないと自分も倒れてしまう。
そしてアトラスの体力はSランク。体力でアトラスに敵うものはほとんどいない。
なので、一対一ではほとんど負けない。
それは歴戦の強者であるエドワードからしても驚きの力だった。
「まぁ、確かにタイマンならほとんど負けないですね」
「そんな規格外の能力があるか!?」
王国一番のギルドのギルマスにそう言われると、少しは自信を持ってもいいのかなという気になるアトラスだった。
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