第一章 トニー隊長 編
3.【トニー隊長side】秒でつまずいたSランクパーティ
ダンジョンを進んでいくトニーのパーティ。
すでに攻略済みの第一階層にはほとんどモンスターが現れないので、スムーズに進んでいけた。
そして攻略中の第二階層にたどり着くと、いきなりAランクの魔物が現れる。
「ウォーウルフです!」
前衛のアニスが剣を引き抜き、仲間に忠告する。
ウォーウルフは3体いた。
「いつも通りサクッと倒すぞ!」
トニー隊長が部下たちに檄を飛ばす。
後衛が支援スキルを維持しつつ、前衛が武器でウォーウルフに立ち向かう。
――だが、
「くっ! 早く、回復魔法をお願いします!」
「なんかいつもより力が出ないぞ! もっと
前衛から後衛にそんなクレームが飛ぶ。
いつもならAランクの魔物相手でもそれほど苦戦することはないのだが、今日は違った。
なかなか敵にダメージを与えることができない。
どうにも攻撃が効いていないのだ。
「おい、どうしたんだ! 我がパーティはSランクだぞ!」
トニーは部下たちに発破をかける。
だが、それで状況が良くなることはなかった。
相変わらず前衛たちはすぐダメージを食らうし、
逆に敵にはダメージはほとんど与えられない。
――――それもそのはず。
今のパーティには“倍返し”のスキルを持つアトラスがいないのだ。
アトラスの“倍返し”は、敵から受けた攻撃を倍にして返す。
だから相手が強ければ強いほどすぐに倒せる。
そして仲間からの
だから仲間たちは2倍の強化を受けられて、力が底上げされていたのだ。
それがなくなった今、Aランクの魔物相手に苦戦するのは当たり前だった。
――結局、パーティがウォーウルフたちを倒せたのは、30分も経ってからだった。
「……全く、お前たちたるんでいるぞ!」
トニーは部下たちを叱責する。
「し、しかし隊長……なんか力が出ないんですよ!」
普段イエスマンのコナンだが、今日ばかりはそんな風に愚痴をこぼした。
「言い訳をするな! お前たち、気合いを入れなおせ!」
トニーの激励がダンジョンにこだまする。
だが、彼の言葉では部下たちの違和感は拭えなかった。
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