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妹ちゃん、俺リストラされちゃった・・・スキル「倍返し」が理解されなくて…え、ブラック離脱おめでとう?…って、転職したらS級!? 元上司が土下座してる!? もう遅いよ。かわいい部下に囲まれてるので。 作者:アマカワ・リーチ

第一章 トニー隊長 編

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2.【トニー隊長side】リストラで我がパーティは最強だ(自称)



 ――その頃、ギルド<ブラック・バインド>のギルドマスター室。


「トニー隊長、リストラの方は着々と進んでいるか」


 ギルドマスターのクラッブが、Sランク隊の隊長トニーにそう語りかけた。

 トニー隊長は、自らも部隊を率いると同時に、ギルドの運営も担っていた。


「はい、ギルマス。我が部隊でもFランクの無能冒険者を追い出したところです」


 トニー隊長が言うと、クラッブは顎のヒゲを撫でながらアトラスの顔を思い出した。


「ああ、あの無能君か」


「はい。ギルドに入って()()()、一度も昇格することなく、ずっとFランクのままでした。本当に愚鈍なやつで、いつもダメージを受けてばかりでした」


「今までご苦労だった。先代の時は、ギルド隊員を大切にするという大義名分のもと、無能な冒険者でもクビにできなかったからな。君のようなSランクパーティでも無能の面倒を見てもらうしかなかったのだ」


「はい、苦労しました。しかし、さすがはギルマスです。リストラを断行したことで、我がギルドに無能はいなくなりました!」


「ははは。これからは実力主義の組織にしていかないと、いくら大手ギルドと言えど生き残れない。我々<ブラック・バインド>が、これからますます発展していくには必要なことよ」


「その通りでございます、ギルマス」


「トニー隊長も、うかうかしないように。お前はこの()()()多くの功績をあげてきた。その実績は消えてはなくならないが、いつまでも過去の栄光にとらわれてはならないぞ」


「もちろんです、ギルマス。これからますます成果をあげますよ!」


「頼んだぞ」


 ワハハと笑うギルマスと隊長。


「ところで、一応あの無能がいなくなった穴を埋める必要があるだろう。確かFランク君は前衛だったな?」


「はい、ギルマス」


「転職ギルドを当たって、Aランクの前衛に声をかけておいた。明日の午後、面接に来てくれるはずだ」


「ご配慮、ありがとうございます! 我がパーティは既に最強レベルですが、無能が抜けて代わりにAランク隊員が入れば、もう怖いものなしですな!」


「その通りだ。期待しているぞ」


 †



 翌日、トニー隊長は意気揚々とダンジョンへと向かった。

 現在攻略中のAランクダンジョンの入り口で、部下たちが待っていた。


「あの、隊長。アトラスさんが来ていません」


 トニーが着くなり、部下の一人であるアニスがそう言ってきた。

 アニスは三年目の冒険者ながら、すでにBランクの実力を持つ若手の有望株だった。


「アニス君。いいところに気がついた。あの無能Fランク君は昨日でクビにした!」


 トニー隊長はワハハと笑いながら言った。


「く、クビ!? アトラス先輩を!?」


 だが、アニスは隊長の言葉に自分の耳を疑った。


「ああ。Fランクの無能はリストラせよとのギルマスの命令だ。我がSランクパーティの面汚しが消えてせいせいしたな」


 笑う隊長。

 それとは対照的に顔面蒼白になるアニス。


「アトラスさんがいないと困りますよ!?」


「アニス君、冗談はよしたまえ。あの無能がいなくなってなんの問題があるんだ?」


 隊長がそう言うと、別のメンバー――コナンも「そうだぞ」と同調した。


「あの無能と言ったら、ダメージを受けてはポーションを使う金食い虫のゴミだったじゃないか。ボクたちのパーティのお荷物だったよ」


 コナンは典型的なイエスマンで、隊長の腰巾着的な存在だった。

 なので、当然アトラスのことは無能だと思い込んでいた。


「で、でも……」


 確かにパーティの人たちはアトラスを邪険に扱っていたが、それも嫉妬込みのことだとアニスは思っていた。

 しかし、彼らはアトラスのことを心の底から無能だと思っているようだった。

 そのことにアニスは戸惑う。

 アニスだけが、アトラスこそこのパーティの要であると理解していたのだ。


 だが、三年目の若者が、上司に逆らえるはずもなかった。


「さぁ、心機一転、ダンジョン攻略に出かけるとしよう!」


 隊長がそう宣言する。


 ……アニスは憤りと困惑を感じながら、隊長たちについていくのだった。


 †


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