初場所どころか、現役続行に暗雲が漂い始めた。
5日、新型コロナウイルスに感染していたことが明らかになった横綱白鵬(35)。3日に嗅覚に異変があったことから4日にPCR検査を実施し、この日になって陽性と判明した。
白鵬は協会に「家族とトレーナー、付け人にしか会っていない」と話したというが、それでも感染してしまうのが新型コロナの恐ろしさ。現在は病院に入院中で、1月場所(10日初日)の休場が確実となった。
■「引退を先延ばしにできた」の声も
白鵬は昨年11月場所後、休場の多さを横綱審議委員会に責められ、「注意」の決議を受けた。そのため1月場所は休むに休めなくなったものの、新型コロナとなれば話は別。角界周辺では「これで引退を先延ばしにすることができた」なんて声も出ているものの、むしろ逆ではないか。
新型コロナウイルスは感染力が強く、英国で発見された変異種は従来のものより感染力が最大1・7倍だといわれている。ただでさえ、基礎疾患がある人は重症化しやすく、大相撲では昨年4月に高田川部屋の三段目、勝武士が感染。治療の甲斐なく、28歳の若さで5月に逝去した。勝武士は糖尿病を患っており、死因も多臓器不全だった。
医師は「体重が150キロ超という点は心配」と
相撲は太ってナンボの競技。糖尿病をはじめとした内臓疾患を抱える力士、親方は少なくない。白鵬もかつては睡眠時無呼吸症候群を患っていた。
重症化しないことを祈るばかりだが、治癒しても後遺症の不安が残る。
日本循環器病予防学会の元会長で寺田病院(東京)名誉院長の澤井廣量氏は、「新型コロナウイルスに感染した者が、すべて元の体に戻れるわけではありません」と、こう続ける。
「コロナの治療が終わった後でも、倦怠感や息苦しさ、咳、関節痛などの症状を訴える患者がいます。味覚障害が残る者もおり、さらに集中力や記憶力の低下、脱毛など、さまざまな後遺症が報告されている。新型コロナが原因で肺炎になった場合も、いわゆる普通の患者とは違い、障害が残るケースもあるのです」
コロナの変異種については、昨年末、イングランド公衆衛生庁が「従来のものと比べて、深刻な症状をもたらす様子は見受けられない」と発表。しかし一方では、南アフリカ共和国のムキゼ保健相が昨年12月の会見で、「英国の変異種と類似性のある変異種を確認した。併存疾患のない若年層で重症化するケースが増えている」と話した。ウイルスがどのように変異していくか、まだはっきりしたことはわからない―――というのが現状だ。
「症状が従来のものと変わりなくても、心臓への影響は軽視できません。心臓の筋肉が炎症を起こす心筋炎は、風邪やインフルエンザのウイルスが原因でもなるが、感染力の強い新型コロナも例外ではない。心筋炎は不整脈や心不全の原因にもなる。ただでさえ、体の大きい人は心臓にかかる負担も大きい。白鵬関は192センチ、151キロと力士の中では均整の取れた体格。これといった病気もなさそうですが、150キロを超えている点は心配です。そもそも、新型コロナは持病のない若者でも症状が長期化するケースがある。3カ月を経過しても心筋損傷が見られる患者もいるほどです」(前出の澤井氏)
■全休なら3場所連続に
健康上の理由に加えて、あまりに休場が続くと実戦感覚や肉体にも影響が出かねない。
「休めば休んだ分だけ、実戦感覚や相撲勘といったものは衰える。休みがちといわれる白鵬だって、2場所連続全休は昨年9月、11月場所が初めて。3場所連続となると、果たしてどこまで相撲が取れるか。例えば、立ち合いで相手と当たるときの衝撃も、実戦から離れすぎると体が忘れてしまう。衝撃の強さを想定できないまま相撲を取れば、それこそケガにつながりかねない。そうした稽古は、ひとりで行うトレーニングではどうしてもカバーできない。力士の多くはケガを抱えているが、あれは『休んだら番付が落ちる』という事情に加えて、相撲勘を維持したい、という目的もある。実は力士はあまり多くは休みたがらないものなんですよ」(ある親方)
白鵬は35歳。一度鈍った体に再び活を入れようとしても、若い時分のようにはいかないだろう。土俵には、初場所で綱とりに挑む大関貴景勝をはじめ、まだまだ物足りないながらも、後進力士が力をつけてきた。
新型コロナが「横綱白鵬」の致命傷になりかねない。