※2020/05/14追記:Jetson Xavier NX 開発者キットの情報を追加しました
※2020/06/11追記:Jetson TX2 開発者キット EOL(製造中止)のお知らせ
NVIDIA社からJetson TX2 開発者キットのEOLに関する発表がありましたため、マクニカにおける最終注文受付日は「2020年10月29日」とさせていただきます。
本件について、詳細な情報をお求めの方はお問い合わせください。
参考:NVIDIA社ページ
https://forums.developer.nvidia.com/t/eol-notice-for-nvidia-jetson-tx2-developer-kit/125752
Jetson の選定に迷っている方向けのページ
最初のJetsonであるTK1が2014年に発売されてから、現在までに様々なJetsonファミリーが登場しています。
これまでのJetsonファミリーには高価な開発キットしかありませんでしたが、Jetson Nanoが 2019年4月に販売を開始してから、Jetsonに触れることができなかったユーザーの方々から非常に多くの反響を頂いております。
本ページでは、現行のJetsonシリーズのうち、Jetson Nano、Jetson TX2、Jetson AGX Xavier、Jetson Xavier NXの開発者キットについて、比較表を使ってご紹介します。どの製品を選べば良いか悩まれている方は、選ぶポイントを解説する章もございますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
そもそもJetsonとは?
Jetsonは、あらゆる自律動作のための AI プラットフォームです。ロボットやIoTなど組み込み機器向けの開発・研究向いており、大企業からスタートアップ企業、研究者、さらには学生まで、誰でも先進的なエッジ AI ソリューション開発へ利用できます。
従来はAIの開発に高速な演算処理が必要なため、大型で高コスト、消費電流も非常に高い、GPUコンピューティングのための製品が必要でした。しかし、Jetsonが登場したことで、容易に開発ができるようになりました。
現行のJetsonファミリーは、Jetson TX1、Jetson TX2、Jetson AGX Xavier、Jetson Nano、Jetson Xavier NXがあり、それぞれ最終製品用途のモジュールと、テスト用の開発キットがあります。
Jetson 比較表
現在開発者キットが販売されている製品毎にモジュール単位の比較表を作ったので、下記をご覧ください。
Jetson 各開発者キットに搭載されたモジュール毎の比較表
|
Jetson Nano |
Jetson TX2 |
Jetson AGX Xavier |
Jetson Xavier NX |
GPU |
128 Core Maxwell™ 0.5 TFLOPS (FP16) |
256 Core Pascal™ 1.33 TFLOPS (FP16) |
512 Core Volta™ + NVDLA 11 TFLOPS (FP16) 22 TOPS (INT8) |
384 Core Volta 6 TFLOPS (FP16) 21 TOPS (INT8) |
CPU |
Quad-core ARM A57 (1.5 GHz) |
Dual-core Denver and Quad-core A57 2GHz (2x) 2MB L2 |
8-core Carmel ARM CPU 2.26GHz (4x) 2MB L2 + 4MB L3 |
6 core Carmel ARM CPU (3x) 2MB L2 + 4MB L3 |
DLA |
- |
- |
5 TFLOPS (FP16) 10 TOPS (INT8) |
- |
Memory |
4 GB 64-bit LPDDR4 25.6 GB/s |
8 GB 128-bit LPDDR4 59.7 GB/s |
32 GB 256-bit LPDDR4x 136.5 GB/s |
8 GB 128-bit LPDDR4x 51.2 GB/s |
Storage |
16 GB eMMC 5.1 |
32 GB eMMC 5.1 |
32 GB eMMC 5.1 |
16 GB eMMC 5.1 |
Video Encode |
1x4K @30|2x1080p @60 |4x1080p @30(HEVC) |
1x4K @60|3x4K @30|4x1080p @60 | 8x1080p @30(HEVC) |
4x4K @60|8x4K @30|16x1080p @60 | 32x1080p @30 (HEVC) |
2x4K @30 | 6x1080p @60 | 14x1080p @30 (HEVC) |
Video Decode |
1x4K @60|2x4K @30 |4x 1080p @60 |8x1080p @30 (HEVC) |
2x4K @60|4x4K @30|7x1080p @60 | 14x1080p @30(HEVC) |
2x8K @30|6x4K @60|12x4K @30 |26x1080p @60|52x1080p @30 (HEVC)| 32x1080p @30 (H.264) |
2x4K @60 | 4x4K @30 | 12x1080p @60 | 32x1080p @30(HEVC) | 16x1080p @30 (H.264) |
Camera |
12 lanes (3x4|4x2) MIPI CSI-2 D-PHY 1.1 lanes (1.5 Gbps) |
12 lanes (3x4|6x2) MIPI CSI-2 D-PHY 1.2 lanes (2.5Gbps) |
16 lanes (4x4|6x2|6x1) MIPI CSI-2 | 8 lanes SLVS-EC D-PHY 1.2 (2.5Gbps total up to 40 Gbps) C-PHY 1.1 (2.5Gsym/s total up to 109 Gbps) |
12 lanes (3x4 or 6x2) MIPI CSI-2 | D-PHY 1.2 (2.5 Gb/s per pair, total up to 30 Gbps) |
Power |
5W | 10W |
7.5W | 15W |
10W | 15W | 30W |
10W | 15W |
Mechanical |
69.6mm x 45mm 260 pin edge connector |
87mm x 50mm 400 pin connector |
100mm x 87mm 699 pin connector |
69.6mm x 45mm 260 pin edge connector |
Software |
Jetpack SDK – Unified software release across all Jetson products |
|||
Ethernet |
10/100/1000 BASE-T Ethernet |
10/100/1000 RGMII |
10/100/1000 BASE-T Ethernet |
|
Wi-Fi/BT |
Requires external chip |
TX2 on board |
Requires external chip |
|
Max Camera Support |
4 |
6 |
36 with external aggregator* |
6 (up to 36 virtual channel) |
Display |
Two multi-mode DP 1.2a/eDP 1.4/HDMI 2.0 a/b 1x2 DSI (1.5Gbps/lane) |
Two multi-mode DP 1.2a/eDP 1.4/HDMI 2.0 a/b two 1x4 DSI (1.5Gbps/lane) |
Three multi-mode DP 1.2a/eDP 1.4/HDMI 2.0 a/b No DSI support |
Two multi-mode (eDP/DP/HDMI) Serial Output Resources (SOR) eDP 1.4a | DP 1.4 | HDMI 2.0a/b |
# of Simutaneous Displays |
2 |
3 |
3 |
2 |
UPHY (PCIe, USB) |
1x1/2/4 PCIe (Gen2) |1xUSB3.0|3xUSB 2.0 |
1+1x4 or 1+1+1x1/x2 PCIe (Gen2) |3xUSB3 .0|3xUSB2.0 |
1 x8 or 1 x4 or 1 x2 or 2 x1 PCIe (Gen4) |3xUSB3 .1|4 xUSB2.0 |
1x USB 3.1, 3xUSB 2.0 | PCIe 1x1 (GEN3) + 1x4 (GEN4) |
SATA and SDIO |
No SATA|1xSD/SDIO |
1xSATA|1xSD/SDIO |
Requires external chip |
No SATA | 1 x SD/SDIO |
USB OTG |
Not Supported |
|||
Other I/Os |
3xUART|2xSPI|2xI2S| 4xI2C|GPIOs |
5xUART|3xSPI|4xI2S| 8xI2C|2xCAN|GPIOs |
5xUART|3xSPI|4xI2S| 5xI2C|2xCAN|DMIC|GPIOs |
1xSDIO | 2xSPI | 3xUART | 2xI2S | 4xI2C | 1xCAN | GPIOs |
DL Accelerator |
- |
- |
2x NVDLA Engines |
|
Vision Accelerator |
- |
- |
7-Way VLIW Vision Processor |
|
Boot Sources |
eMMC, USB (recovery mode) |
|||
Temp Range |
-25 to 97℃ |
-25 to 80℃ |
-25 to 90℃ |
その他のモジュールについては、こちらをご覧ください。
NVIDIA Jetson 詳細ページ
Jetson 開発者キットには3つの大きな違いがある
比較表を見ると、さまざまな違いがありますが、ここでは大きな違いとして3つ紹介します。
- アーキテクチャーがそれぞれ異なる
- 0.5~11TFLOPS(FP16)まで処理能力のラインナップがある
- 5W~30Wまで用途に合わせて選択が可能な電力
1. アーキテクチャーがそれぞれ異なる
NVIDIAのGPUアーキテクチャーはKepler→Maxwell→Pascal→Voltaと世代を重ねています。これらのアーキテクチャーは世代を重ねるたびに、アプリケーション性能の向上、電力効率の向上、主要なコンピューティング新機能の追加、GPU プログラミングの簡素化を実現してきています。
Jetson Nanoは2014 年に発表したMaxwellアーキテクチャーを採用し、大型の専用共有メモリ、共有メモリアトミック、SM ごとのよりアクティブなスレッドブロックを特徴として、以前のアーキテクチャーをはるかに上回るアプリケーションパフォーマンスを実現します。
また、Jetson TX2はPascalアーキテクチャーを採用し、こちらをベースにしたシステムでディープラーニングを実行した場合、以前のGPU アーキテクチャーと比較して、ニューラルネットワークトレーニングのパフォーマンスが 12 倍に向上します。
最後にJetson AGX Xavier/Jetson Xavier NXはVoltaアーキテクチャーを採用し、1 秒あたり 100 テラフロップス (TFLOPS) のディープラーニングのパフォーマンスを実現します。これは、前世代のアーキテクチャーの5 倍以上の速度です。
2. 0.5~11TFLOPS(FP16)まで処理能力のラインナップがある
コンピュータの処理性能を表す単位の一つで、浮動小数点演算を1秒間に1兆回行うことを表す単位であるTFLOPSにおいて、各Jetson製品のパフォーマンスは0.5 TFLOPs (Jetson Nano)、1.3 TFLOPS (Jetson TX2)、5.5/11TFLOPS(Jetson AGX Xavier)、6 TFLOPS(Jetson Xavier NX)となっています。その為、アプリケーションに最適な Jetson を選択することが可能です。
3. 5W~30Wまで用途に合わせて選択が可能な電力
Jetson Nano は、エッジ デバイスにおけるイノベーションを高い自由度で可能にします。パワフルで効率の高い AI や画像処理、様々なアプリケーションにおける高性能な演算処理がわずか5 ~ 10Wで行えます。
Jetson TX2 は大規模なディープ ニューラル ネットワークを実行し、エッジデバイスで高い精度が得られます。わずか7.5 Wという消費電力は、最新のデスクトップ CPU に比べ、25 倍の電力効率を実現します。これは帯域幅と遅延が問題となるアプリケーションにおけるリアルタイム処理に最適です。具体的には、工場のロボット、市販用ドローン、企業のコラボレーション デバイス、スマート シティー向けのインテリジェント カメラなどのアプリケーションで使用できます。
Jetson AGX Xavierはユーザーがアプリケーションの用途に合わせて 10W、15W、30W といった駆動モードを選択し、新しいレベルの計算処理能力密度、エネルギー効率性、AI 推論機能をエッジデバイスで利用可能になります。
Jetson Xavier NX には、高性能 AI や複雑な DNN を必要とする次世代の自律システムや、インテリジェントエッジデバイスを低消費電力かつ、小さな面積で展開する新たな機会を広げます。そうした用途としては、モバイル ロボット、ドローン、スマート カメラ、ポータブル医療機器、組み込みIoT システムなどが考えられます。また、10W と 15W の消費電力モードがデフォルトで用意されており、モードに応じて 14 ~ 21 TOPS のピーク パフォーマンスを実現します。
Jetson 開発者キットを選ぶポイント
どのJetson 開発者キットを購入するか迷われている方は、価格、無線の有無、性能のうち、どれを最も重視するかで選ぶと良いでしょう。
「価格」重視なら、圧倒的コスパのJetson Nano
Jetson 開発キットの中でも、最も低価格の製品です。「これまでの価格では手が出せなかった。」という方におすすめです。
Jetson Nano 開発者キットをおすすめしたい方
・低価格の製品をお探しの方
・開発者キットの置き場所を心配されている方
・消費電力を抑えたアプリケーションを検討されている方
「無線の有無」重視なら、同梱品が豊富なJetson TX2
実は、Jetson 開発キットの中で、Jetson TX2 開発者キットは、無線のアンテナが入っています。もちろん、Jetson NanoとJetson Xavier でもWi-Fiを利用することができますが、Jetson TX2 のようにWi-Fi や Bluetooth のアダプターがついてないため、Wi-Fi を利用するには別途 Wi-Fi カードを購入いただく必要があります。
Jetson TX2 開発者キットをおすすめしたい方
・届いてからすぐに無線を使って動かしたい方
・動作温度範囲の拡張を検討されている方
「性能」重視なら、Volta アーキテクチャーのJetson AGX Xavier
とにかく性能を重視したい方なら、Jetson AGX Xavier 開発者キットがおすすめです。手のひらに乗るサイズでも、比類ない 32 TeraOPS (TOPS) のピーク時の計算処理能力と 750 Gbps の高速 I/O という、 GPU ワークステーションレベルのパフォーマンスが手に入ります。
Jetson AGX Xavier 開発者キットをおすすめしたい方
・今後ハイパフォーマンスでの開発も予定している方
・GPUサーバーやワークステーション並みのパフォーマンスを小型装置で実現したい方
「性能」も「サイズ」も重視したいなら、2つの領域の良いとこ取りができるJetson Xavier NX
70 mm x 45 mm の Jetson Xavier NX は、NVIDIA Xavier SoC のパワーを Jetson Nano サイズのモジュールに詰め込んでいます。この小さなモジュールは、高速の CSI や PCIe から低速の I2C や GPIO まで多彩な IO を持ちながら、優れたパフォーマンスと電力効率の組み合わせを実現しています。
また、無線のアンテナが入っていますので、Wi-Fiを利用することができます。
小さなフォームファクター、さまざまなセンサーに対応したインターフェース、優れたパフォーマンスを活かし、あらゆる組込み AI/エッジ システムに新しい機能をもたらします。
Jetson Xavier NX 開発者キットをおすすめしたい方
・小型かつ、ハイパフォーマンスな AI システムの開発をされる方
例:ドローン、携帯用医療機器、小型商用ロボット、スマート カメラ、高解像度センサー、自動光学検査、その他の IoT 組込みシステムなど
比較検討中のお客様からよくいただく質問
Jetson TX2 開発者キットのACアダプターは、他のJetson 開発者キットの製品にも利用できますか。
電圧の定格が異なるので、Jetson TX2のACアダプターを他の開発者キットでお使いいただくことはできません。
Jetson Nano 開発者キットでAC電源をご利用されたい場合は、スペックに合ったACアダプターをご購入いただく必要があります。
Jetson AGX Xavier 開発者キットには、AC電源が付属されております。
各Jetsonシリーズの保証期間が知りたいです。
製品によって保証期間が異なります。なお、開発者キットについては、1年間の保証となります。詳細は以下の表をご確認ください。
Product |
Warranty |
Jetson Developer Kits |
1 Year Warranty |
Jetson Xavier NX |
1 Year Warranty
|
Jetson AGX Xavier |
|
Jetson AGX Xavier 8GB |
|
Jetson TX2 |
|
Jetson TX2 4GB |
|
Jetson TX1 |
|
Jetson Nano |
|
Tegra K1 |
|
Jetson TX2i |
3 Year Warranty |
Tegra K1 Industrial |
本情報は、NVIDIA社の以下WEBにて、公開されている情報です。
出典:https://developer.nvidia.com/embedded/faq
各Jetsonシリーズの動作寿命は、目安としてどの程度ですか。
製品によって動作寿命が異なります。モジュール単位の動作寿命ですが、詳細は以下の表をご確認ください。
Product |
Operating Lifetime |
Jetson Xavier NX |
5 Years
|
Jetson AGX Xavier |
|
Jetson AGX Xavier 8GB |
|
Jetson TX2 |
|
Jetson TX2 4GB |
|
Jetson TX1 |
|
Jetson Nano |
|
Jetson TX2i |
10 Years |
Tegra K1 Industrial |
本情報は、NVIDIA社の以下WEBにて、公開されている情報です。
出典:https://developer.nvidia.com/embedded/faq
Jetsonシリーズについてアカデミック(教育機関)向け価格はありますか。
Jetson Xavier NX 開発者キット、Jetson Nano 開発者キット、Jetson AGX Xavier 開発者キットについては、特別価格販売はございません。
通常価格販売のみ行っております。
まとめ
これまでのJetsonは、種類が少なかったために選択肢が少なく、価格もなかなか手が届きづらい価格でした。
しかし、次第に製品ラインナップの拡充や、NVIDIA社の価格改定発表があったことで、「実現したいこと」をベースに、選択できるようになりました。また、Jetson Nano 開発者キットが販売されてからは、以前より個人の方にもJetsonを触れていただく機会が増加したのではないでしょうか。
本記事がJetson 開発者キットは気になるけど、選定に迷われているという方のお役に立てればと思います。
Jetson 開発者キットの購入はこちら
※各開発者キットの販売ページは、スイッチサイエンス社のWEBサイトへ移動します。
※現在WEB販売しているJetson Nano 開発者キットのバージョンは、B01です。旧バージョンから、カメラ用のMIPI-CSIコネクタが2つに増えました。
それに伴い、従来のアクセサリー類(ケースなど)が利用できない場合があります。ご注意ください。
Jetson TX2 開発者キットの購入をご希望のお客様は、誠にお手数をおかけいたしますが、下記のお見積もりボタンよりお問い合わせください。
また、Jetsonを活用した製品の量産や、活用のお悩みがございましたら、ぜひお問い合わせボタンよりお問い合わせください。