猛威を振るう新型コロナウイルスの最前線で治療に当たる沖縄県立八重山病院内科医の酒井達也さん(34)。八重山病院は離島で医療資源に限りがある上、竹富町の小規模離島計4カ所で医師1人が常駐する付属診療所を持つ。日々「医療崩壊」と背中合わせの緊張を強いられながらも強い使命感で離島医療を守り抜く。
「より住民に寄り添ったイメージがある。離島医療に携わりたい」。沖縄尚学高校卒業後、学費免除の代わりに離島勤務を義務付ける自治医科大学に進学した。2018年4月に赴任した同病院は座間味村の阿嘉診療所以来2度目の離島勤務。同病院では診療所経験がある唯一の医師で4診療所とのパイプ役も担う。
「新型肺炎?」。新型コロナウイルスがまだ漠然としていた昨年1月20日、最初の勉強会を開き、院内で情報共有。しかし翌月に県内で初めて感染が確認されると一気に危機感が募った。「小規模離島を抱えている。大変だ」
急ピッチで対策を進めた。患者搬送法の訓練のほか集団感染の発生を想定して、八重山保健所と町の3者で連携した独自のマニュアルを作り上げた。「経験者だから不安な気持ちが分かる」と診療所の若手医師のケアにも努めた。
同年8月、県内小規模離島で初となる西表島で感染が確認された際は逆に3者で島に出向いて集団検査する“秘策”を打ち出し、早期収束につなげた。「しっかり抑え込むことができた」と自負する。
看護師が医師と同様に防護服をまとい汗だくになって奮闘する姿が「励みになっている」と話す。「互いに離島医療を守る使命感が強い。それぞれのベストが積み重なって今の危機を乗り越えられている」(八重山支局・粟国祥輔)
「八重山を盛り上げたい」
「八重山病院に継続して勤務して八重山の離島を盛り上げたい」。県立中部病院で勤務していた頃、実習で訪れた石垣市出身の医大生にどんな医師になりたいか聞いたところ、返ってきた言葉です。
確かに離島医療の担い手は少ない上に定着せず慢性的な医師不足に陥っているのが実情です。離島医療に携わりたいと医師を志した者としてはっとさせられるとともに、現在の励みになっています。
自分なりに解決策を模索した結果、魅力ある病院づくりが大事だとたどり着きました。「地元に帰りたい」「沖縄の離島で働きたい」-につながると思うからです。
まずは病院のことを知ってもらう必要があるので組織全体を動かして発信力を強化しています。冊子「島医者になる。」の作成のほか全国から研修生を募っています。オンライン診療の導入など住民の視点に立った検討も進め、地域に寄り添いながら離島医療を守っていきたいです。